マジッ〇ミラー号の幽霊
のべたん。
冒頭インタビュー
この地に流れ着いてから、いったい、どれくらいの年月が過ぎたのだろう。
雨風に晒され続けた車体の塗装は剥げ、割れた窓ガラスが砕けて細かくなってしまっても、超強化ガラスを使用しているマジックミラーだけは、いまだに健在で、風にそよぐ草原の景色を映し出している。
はじめのころ、野山にすむ獣たちは、遠巻きに『わたし』を眺め、明らかに警戒した態度をとっていました。けれども、わたしがただの無機物で、岩や池と大して変わらないものであることを知ったのか、確かにそこにあるのに、意識されない存在、見慣れた風景の一部分として認識されるのに、それほど時間は掛かりませんでした。
……では、この『わたし』とは一体何なのか。
それは、かつてこのマジッ〇ミラー号のなかで死んだ『豊川えみ』という名の素人女……。
といっても、わたしの意識はいまではほとんどこのマジッ〇ミラー号と同化してしまっているので、『かつて豊川えみという肉体から離れた意識とマジッ〇ミラー号の記憶と存在が溶けて一体化した思念体』といったほうが、正しいのですが、長ったらしいので『マジッ〇ミラー号の幽霊』と呼んでいただいても、差し支えありません。
そんな、わたしの名称よりも、あなたは一体どうして『豊川えみ』が死んだのか、それが気になって仕方がないようですね。
それは当然そうでしょう。
いまからあなたに語り聞かせるのは、豊川えみという女の死、そして、わたしという存在の誕生、終わりのない円環の、はじまりに至る物語。
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