ネッ友は魔王様!? ~オフ会相手がメンタル弱めの地雷系魔王様だったんですが~
朧ユ鬼。
第1話 俺と魔王とオフ会と
「よし、バッチリです!」
私は自身の姿を写した大きな鏡を見ながらそう言った。今日着ている服は水色と白を基調とした地雷系、と呼ばれるものらしい。
地雷系という名前は不名誉だが、それでも私はこの服のことが気に入っていた。なぜなら魔王という存在の恐怖感を隠してくれるかわいらしさがあるからだ。
「さて、後は荷物を確認して出発ですね」
今日はネットで知り合った友人――ネッ友と、オフ会、というものをすることが決まっているのだ。私から提案したのだが、オフ会をすることが決まったその日から、楽しみで楽しみで仕方がなかった。
持っていく荷物を確認した私は、スマホを取り出して、スクショしていた今日会う予定のネッ友――ステラさんとのメッセージログを見返す。
「……よし、これで今日も一日頑張れます」
なぜメッセージログなんてものを見返しているのかと思われるかもしれないが、いつも私に優しくしてくれるステラさんのメッセージが私の励みになっているからだ。そんなことで? と思うかもしれないが、幼い頃から厳しく育てられ、いつも恐怖の目で見られている私からすれば新鮮なことなのだ。
そんな私からしてみれば、いつも優しく寄り添ってくれるステラさんが好きになってしまうのも必然――仕方のないことだった。
「ふふ、ステラさん。あなたは必ず私のものにしてみせます……魔王の名にかけて!」
そう言って私、魔王メアリア・シャルティールはネッ友とのオフ会へと向かうのだった。
「ふう、今日はいよいよオフ会か。準備もしたし、後は待ち合わせ場所に行くだけだな」
俺は星月真裕(ほしづきまひろ)。今日はいつも一緒にゲームをして遊ぶネット友達――ネッ友と初めてのオフ会がある日なのだ。万が一にも遅れないために俺は早めに家を出ることにした。
楽しみにしていたオフ会なのだ。いくら仲の良いネッ友といえども、相手が遅れるのはいいが、俺が遅れてしまっては失礼になるかもしれない。そんなことで楽しみにしていたオフ会を嫌な雰囲気にはしたくない。
「行ってきまーす!」
俺は家を出て、よく待ち合わせ場所に利用される大きな広場へと向かった。道中、まるで今日という日を祝福してくれているかのような満開の桜を見た辺りで、スマホの電源を入れて今の時刻を確認する。
「よし、このまま行けば予定通り、少し早めに着きそうだな」
そう言って赤になってしまった信号を待っていると、重そうな荷物を持って辺りをキョロキョロと見回す、明らかに道に迷っていそうな老婆がいた。
助けてあげたいところだが、俺には待ち合わせの約束があるのだ。今優先すべきはそちらの方だろう。見知らぬ老婆と仲の良いネッ友どちらを優先すべきか、迷うまでもない。
俺がそう思っていると、そんな老婆に対して一人の少女が声をかけた。
「あ、あの、何かお困りです、か?」
その少女はいわゆる美少女というやつで非常に整った顔立ちをしていたのだが、服装が青と白を基調にした地雷系と呼ばれる格好で、あまり関わらない方が良さそうな雰囲気をかもし出していた。
しかしその地雷系少女は普通の人間とは違い、長い銀髪に青い瞳。そして頭には二本のツノが生えていた。その特徴を見るに、彼女は魔族と呼ばれる、人間とは別の種族だろう。
「おお、お嬢さんや。すまないが少し道を教えてはくれないかねぇ……」
「え、えっと。どこに行きたいんですか……?」
そんな魔族が当たり前の存在となったのはつい最近のことだ。というのも、数年前、日本は突如異世界との扉が開き、そこから魔族と呼ばれる種族がこちらの世界に来てしまったのだ。魔族の力は強大で、数年のうちに日本は魔族の王である魔王によって統治されるようになってしまった。
といっても、魔王による統治は悪いものではなく、むしろ生活が豊かになったと言ってもいい。最近までは魔族に対する恐怖心もあったが、それも次第に消えつつある。もちろん俺も魔族に悪い印象は持っていない。
それにしても魔族にも地雷系の人っているんだな……。地雷系、見た目は好きなんだけどな……見た目は。
「ここらにある大きな建物の店に行きたいんじゃが、道を忘れてしまってな……」
「大きな建物の店……? えっと、私もこの辺りはあまり来たことがなくて……どこのことなんでしょう?」
そんなやり取りを見て俺は思わず、こう声をかけてしまう。
「あの、もしかしてショッピングモールのこと言ってます?」
待ち合わせを優先すべきなのは分かっているが、さすがに見ていられなかった。まあ、時間には間に合うだろうし別に問題ないはずだ。
俺がそう話しかけると、老婆は大きな声でこう言ってきた。
「おお、それじゃ、それじゃ! その店はどこにあるのかのう?」
「あ、ショッピングモールのことを言っていたんですね! それなら分かります。もしよければそこまで案内しましょうか?」
そう言って提案する地雷系少女に老婆は嬉しそうにこう言った。
「本当かい? すまないねぇ、時間を取らせて」
「いえいえ、その荷物も持ちますよ?」
そう言って地雷系少女が老婆から重そうな荷物を持ったのを見て俺はこう言った。
「後は任せても大丈夫ですか? この後、待ち合わせの約束があるので……」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございました」
そう言って地雷系少女は老婆とともにショッピングモールの方へ歩いていった。
「地雷系な見た目だったけど、なかなかいい人だったな。やっぱり人を見た目で判断するのは良くないな。さて、俺は広場に向かうとしよう」
そうして俺は待ち合わせ時間に間に合うように、少し早足で待ち合わせ場所の広場に向かった。
「ふう、なんとか待ち合わせ時間に間に合ったな。ひとまず、この辺りにいるとするか」
そう言って俺は広場の中央付近で待つことにした。
「あ~緊張してきた……ネットの友達とオフ会なんて初めてだからな……」
そもそも今回オフ会をしようと言ったのは仲の良いネット友達の一人であるメアさんという人だった。最近住んでいる場所が近いことが分かり、とんとん拍子でオフ会が決まったのだ。もう一人、仲の良いネッ友がいるのだが、今日は用事で来られないらしいので今日はメアさんと二人きりというわけだ。
「……メアさん、どんな人なんだろう」
何かの間違いでメアさんが超絶美少女だったりしないかなと思いつつ、待っていると、メアさんからメッセージが届いた。
『ステラさんすみません。少し遅れそうです。本当にすみません……』
そう言って送られてきたメッセージに俺は即座に返信を送る。ちなみにステラというのは俺のネットでの名前だ。
『大丈夫ですよ、広場の真ん中辺りで待ってますね。白い服に黒いカーディガン羽織って、カバンにはゲームキャラのキーホルダーつけてるのでそれを目印にしてください』
そう言ってスマホを眺めながら待っていると、一つのネットニュースが目に入ってきた。それは魔王様に関する特集だった。
「魔王様、ね。ま、俺には一生関係ない存在だろうな」
魔王様といえば雲の上の存在と言った感じだ。見た目も公表されていないし、あまりイメージがつかない。怖そうではあるが……たしか名前は公表されていたような、なんだったっけな……。
そんなことを思っていると後ろからどこかで聞いた気がするかわいらしい声でこう声をかけられた。
「あ、あのステラさんですか?」
その声の方向へ視線をやると、そこには先程の地雷系少女がいた。
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