キラーキラーキラー

イタチ

第1話

キラキラキらー






それは、良く晴れた、金曜日のことだ


やけに、春だと言うのに、寒い空気が流れ


もはや、秋口に、舞い戻ってしまったのではなかろうかと、錯覚を、及ぼしかねない


そんな天気の中、私は一人、プールサイドに立っていた


聞いたこともないような、陽気な音楽は、悲しいことに、私の耳の中に、張り付いて


どうにも、取れないほどに、こびりついている


そんな、おかしな状況下で、私は、下着を、脱ぎ捨てると


その青く反射している


プールの中へと、飛び込んだ


辺りは、森に囲まれており、この豪勢な一軒家は、コンクリートの城壁を、その森の中にたたずむ異物として、そこに、ぽつりと、立っていた


私は、水の流れの中


もう、足が、しびれ始めていることに気が付き始めた


めんどくさい


こんな事なら、別のことを、すればよかったか


うのみにするように、話を、聞いた、私が馬鹿だったのだろうか


暗い周辺の中、阿保みたいに、ライトアップされたプールと


室内が、ここからは見える


鳥の声さえ、聞こえない中


何かが、私の鼓膜を揺らす


何だろうか


私の意識が、ぐらりと、集中した






馬鹿な人間が、この世の中には、居たものだ


厚い皮底の鉄板の入ったブーツで、草を、かき分けながら


大柄な厚手にジャケットを、羽織った巨体が、森の中を、歩いていく


まるで、蛾のように、その明かりは、昼間を誤作動させたように


人間たちを、集めていく


実に、馬鹿なことだ


足元の小枝を、蹴っ飛ばしながら


その巨体は、目的を持ったように、歩いていく


周りには、何の物音もしない


ただ、プールの水が、跳ねる音と


破廉恥な女が、水の中を、泳いでいる


実に、馬鹿な事だ


男の手には、巨大なスコップが、握られていた


男の横を春先の風が、駆け抜ける


一人、その巨体を、揺らしながら


男は、足を、進めた


実に馬鹿な生物だ


男の目には、こんな、寒空の下


何も着ないで泳ぐ


馬鹿な姿が、映りこんでいた




この建物は、昔、チャールズ・ウエスト


と言う建築家が、建てたのだが


その材料に、当時は、まだ、禁止されていなかった、建築材料が、含まれていた


彼は、それを、自分の大発明として、家を建てるのに、使用したが


それ以降、この森で、生物の声を聴く事は、稀になってしまった


それでも、ごくまれに、そんなことも知らない


若者が、ただで、リゾートのような、高級住宅に、泊まれると


どこぞの、無知なのか、わざとなのかは、分からないが


有害という事には、全く触れずに、書き込んだ、それを、鵜呑みにして、やってくるのだ


別に、一日や、二日居たくらいで、人体には影響はないが


しかし、二年三年もすれば、明らかな有害となる


このような、場所が、いまだに、酷い廃墟となっていないのは


くしくも、この建築家が、強固な、つくりと、前衛的な作品ゆえに、ぼろさを感じえない事なのであろう


ただ、どちらにしても、私が、行う事は一つ、我が家の駆除


それが、目的だ


人間は、色々なものを、汚す


何もなくても、汚れるが


居たらいたで、汚れるのだ


プールという場所は、掃除するのには、半分ほどうってつけだ


汚れは、水とともに流せばいい


しかも、近くの川から水を引き入れて居るのだ


一日もすれば、元の青い水となるだろう


しかし、逆を言えば、全て水を抜かなければいけない


私は、鉄のスコップを、握りしめた


暗い中、明かりは、点灯している


ソーラーパネルと、近くの川で回している水車の発電のお陰だ


汗は、皮手袋が、吸い取り


私の力は、取ってから、鉄の体へと、伝わる


もう、何人目だろうか


こんな、場所に忍び込む人間は、後ろめたさもあるのだろう


余り、周りにこの場所へという事を、話さない


話したとしても、自分という存在を、確認することは、難しいだろう


私は、ここには、住んでいないし


出来るだけ、用心はしている


どの程度のせいかを、あげられているかは、分からないが


手に持った、スコップを、握りしめる


相手は、女だ


しかも、何も持ってはいない


水の中というものは、動きにくくて困る


しかし、やるのは、一瞬


まるで、槍のように、投げれば、奴の部位を、破損できる


私は、一人、スコップを、握りしめた


先週の鹿の時は上手くいった


人間は、其れよりは、遅い


昨日取った魚は、上手くいった


人間の速さに比べれば、魚は、難しい


代わりに、人間は、コンクリートに、埋められたように


動きが、遅い


そして、動作の予測も、難しくはない私は、鉄の取っ手を、握った


フェンスは、低い


音もなく、入ることは、簡単だ


幸いにして、奴は、背を向けて、プールサイドに、佇んでいる


寒さの限界だろうか


耳障りな、音楽が、この毒に侵された


静寂の地に、異音を、巻き散らしている


静かな夜まで、もう少しだ


眠ったような、この場所の安らぎを、永遠を、継続するために


私は、存在しなければならない


煩わしい、スコップを使った清掃活動も


その音も、数日も、しないうちに、止むことだろう


それに比べれば、一瞬の脈動など、無いに、等しい


私は、プールサイドへと、一歩また一歩と、足を進める


地面には、布が、二枚、置かれている


清掃もなっていない


握りしめた鉄が


キュッと鳴ったような気がした


振りかぶり


まるで鶏でも、絞めるかのような


その行為だけを、くり抜いたような


抜粋した成功を、私は、切に願った


苦しめることなく、暴れさせることなく、その先にあるのは、無機物になるためだけの


死だ


それ以外でも、それ以下でもない


出来るだけ、スムーズに


私は、奴の背後に立った時、その金色の塗装されたスコップを、振り上げた


その時、なぜか、彼女の髪が、ゆっくりと、揺れた


やけに、長い髪だ


私は、犬の品種を、思い浮かべながら、手を、振り下ろしていた


出来るだけ、安らかにと




鉄が、横を通り過ぎた


私は、手に持っていた


長いナイフを、下から上へへと、突き出す


足に、添わせるように、握っていたその、幅の広いククリナイフは


奴の厚いコートを、切り裂き、首筋に、貫かれる


手に持っていたスコップは、水の中を、釣りの疑似餌のスプーンのように、ヒラヒラと木の葉のように、舞い落ちていく


私は、横に、よけると、軽く、血を、プールにつけて、洗うと、水を、切った


血が、水鉄砲のように、チューブから、噴出するように


闇夜に、出ている


私は、目が、動いていない


その大男を、見ながら


首を、ひねる


「もう死んでいるのだろうか」


私の刃は、奴の首を、もう一度、撫でた




「それで、しっかり、ゴールドエレファントは、殺したんでしょうね」


相手は、眼鏡をかけているであろう


猫という人物だ


ここら辺の地理にも詳しく


おおよその犯罪者の名簿を、作っている


要は、事務仕事のようなものだ


顎で、物事を、操っているようで、癪に障るが、ただで、情報を、ここまでくれるのだから、何も言えない


「ええ、今、刃物を、研いでいるところだけど


横で、寝転がっているわ」


相手は、何かを打ち込んでいるのだろう


キーボードを、連打するような音が聞こえる


「他に、そこらへんだと、キラーオブザバタフライが、いるけど、他の人が、様子を見ているみたい


でも、不思議よね、犯罪者予備軍と、なる、人間が、ある一定の確率で、生まれてくる


それを、私は、農園と、呼んでいるけど


今日のスコップといい、ある一定の確率で、彼らも、餌に、食いつく


今日、あなた、アゲータから、また、つまらない作戦を、言われて、実行したみたいに


でも、それでも、一定の確率の上で、成功する


これも、言ってしまえば、誘いみたいなもので、あなたが、犯罪を、起こしているみたいね」


私は、軽く、指に、刃を当てながら、とぎ具合を、確認すると、袋にしまう


「まあ、いいわ、情報は、後で、確認するとして、あなた、来週は、どうするの、この近くだと」


私は、話を、聞き流しながら服を着ると


表に出た


止めてあるバイクに、それを、しまうと、暗い中


ライトが、道を照らす


この場所は、あの男以外使用者は、私のような、例外以外居ないのであろう


この場所が出来て以降、砂利も、引かれていないせいか、道はひどく悪い


「しかし、難儀よね、其れっぽい物を、探しても、犯行に、及んだあとじゃないと確保も出来ないなんて、私は、もっとデーターが欲しいけど


知ってる、農具で、人を殺す犯罪者が


このミソネタ州だけで・・・」


ラジオ代わりに、話を、聞いているが、気がめいってくる


陽気なCDは、あまり好きではない


仕事の話も、程ほどが良い


私は、どちらかと言えば、あの山男の管理人の息子のように


自然の音のほうが、幾分、聞いていたい質なのだ。








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