詩  「こわれていくためのいいわけ」

@aono-haiji

第1話 詩  「こわれていくためのいいわけ」


わたしの 細い髪の ひとはし

永劫えいごうの時を すいて

闇の その彼方かなたへ かれ きえていった


とり残された

わたしのまわりでは

どの眼も どの言葉も

もごもごと しろいうそを 考えている


ひとは

ほんとうに行きたい場所が 彼方かなたにないと

こころが 呼吸できないのかも


ひとりでしかいられないくせに

連れていってもらいたいアンテナを

ほそおく伸ばして待っている


こんな時だな

そらからふってくる 雨のやさしさに

眼をそむけてしまうのは


わたしはこわれていくために

生まれてきた


はは との はじめの約束は

きっとそうだった    


つたないいいわけや

胸にたまっていく 濃すぎるくすりの味が

思い出させてくれる


                かあさん



わたしは ただ 知らぬ間に落ちてきた

そんないのちだったの?


信じられるものを探してたのは 15のときまで


あとはもう あなたといっしょだった


でも あなたの道は歩まないよ


あとからいいわけのように

わたしを守ろうとした あなた


もう じゅうぶんだよ


あなたは もう こわれてる


だからわかってる 知ってるよ

わたしも同じなんだ


抱きしめるわたしは

この手で こわすためにあること


でもね あなたのように

ボロボロになったりしない


わたしは自分をこわしてから

なりたいものがある


わたしは わたしを

ぜんぶ ぜんぶ こわして


そして


ふりそそぐ


愛になりたい


この暖かい 春の雨のように


あやまちもにくしみも


すべて包み ながして


暗く 沈む 水の上に


いちまいの 花びらを 浮かべたい


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 詩  「こわれていくためのいいわけ」 @aono-haiji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る