原石を見つけた日
鳩羽天理
The day I found the gemstone
太陽の光すら届かない路地裏。
無機質で冷たい空間が永遠と広がっている、とも言い表せるだろう。
その日、私はどうも見て捨てならない物を見てしまったのだ。
「………」
目の前に立ってみても反応が無い、死に間際の少年だった。
煉瓦の壁には大きな亀裂と、大量に飛び散った鮮血が目立つ。
「君、まだ生きているよね」
「……………」
暗く霞んだ青の瞳が私を睨みつける。
どうやら私の問いに答えるつもりはないらしい。それともそんな体力すら残っていないのか。その場を見る限り、酷く血を失っている様だった。私は直ぐにポケットから取り出した革手袋を利き手に着け、少年の額に触れた。
指先が触れた瞬間、金属音の様な音が響き渡ると同時、雷にも似た光が手を伝って全身に伝わる。
「…驚いた、死に際にそんな魔力が残っているなんてね」
「…殺してくれ」
彼の口から出たのは予想通りの言葉だった。
「死にたいのかな?それ程の魔力を持ってね……勿体無い。私に分けて欲しいくらいだ」
私の言葉に、彼はもう答えなかった。
「君は死にたいかもしれないけど、そうするわけにいかないんだ。生憎、昔は私も君のような死にたがりだったんだけどね。同じ死にたがりを救うのは少し心苦しいけど、そうしなければ怒られてしまうから。」
そう言って笑うと同時、私はある魔法を発動させた。黄色の光が少年の体を包むように広がっていく。
「君が今日命拾いした事を、今後どう受け止めるのか。それは君次第だ。」
この結果が彼の希望となるか、あるいは更なる生への絶望と傾くか。
彼が後者へ傾いてしまわないように、私は彼にこう言った。
「一緒においで、魔法とは何なのか教えてあげよう」
原石を見つけた日 鳩羽天理 @10ri_hatopoppo
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