第63話 親しき仲にもちょー秘密!

起きて、すぐに部屋から出る。すると騎士が声を掛けてきた。


「クート様」


「はい、なんでしょう騎士様?」


「王女様が明日は時間があるか、とのことです」


「わかりました。明日は時間を空けましょう。(元々予定無いけど)」


「わかりました。そう、伝えておきます」


「はい、ありがとうございます」


さ、外に向かうか…。見えてる。凄い話しかけようとしている。


「どうしたんだ燐之助?」


「九雲人!天聖からの伝言なんだけど、『生徒会メンバーと九雲人が会えないように妨害されている可能性が高い。何か伝えたいことがある場合は燐之助にメモを渡してくれ』ってさ。なにかあったら俺にメモを渡してくれたら天聖に送るからよ」


「……そういうことか。オッケー。ならこのメモ帳を持って行ってくれ。伝えようと思って書いたメモだ」


「お、おい。メモ帳丸ごと渡して大丈夫なのか?」


「あぁ、予備がある。(いざとなれば『木生成』で生み出した木から紙を作ればいいだけだ)」


「そうか!しっかり渡しておくぜ!」


「おう!」


外に向かう。門番も寡黙で真面目な人だったのですぐに通れた。冒険者ギルドに付く。


リ「おう!遅かったなクート!」


既にリック達は集まっていた。


「みんな早いな」


ラ「お前の話を聞くために集まったんだ」


「そうか。ありがとう。でもここは人が多すぎるから外、森の中で話そう」


リ「おう!」


みんなで森に入る。


ラ「それで?お前のことを話してくれるんだろ?」


「ああ。まず俺はこの世界の人間じゃない。召喚者だ。この国に召喚された俺たちは魔王国ホーゼンプと戦うために城で訓練をしている。俺は特別なスキルのお陰で外での1人行動を許されたから、冒険者をしてるってことだ」


「「「………」」」


「どうした?」


リ「いや、どうしたってお前…」


ラ「少し情報量が多いから、纏める時間をくれ」


ルンドは理解することを諦めて干し肉をかじっている。俺は『感知』を使用し周りを警戒する。10分ほどして。


リ「つまり、クートはこの国の、いや、この世界の人間じゃないから常識が無かったりしたんだな?」


「ああ、そうだな」


ラ「毎日城に帰るから一緒に冒険者のパーティをすることは難しいってことか?」


「いや、俺は転移魔法みたいなスキルを使える。だからたぶん行けるかな?でも俺は王女様から依頼が入ることがあるから、ずっと一緒に冒険ってのが出来ないんだ。明日も王女様に呼ばれてるしな」


……また静かになった。また警戒だ。今度は5分ほどで復活した。


ラ「そうか、クートは王女様と簡単に話せるような立場ってことか?」


「いやいや、そこまでの立場じゃないよ。俺のスキルが有用だったから、依頼を頼まれる、その報酬として、俺は外出を許されたのさ」


リ「それがクートの秘密か…」


「いや、それよりも大きい秘密があるけど、まだ言ってないだけだ」


リ「ま、まだあんのかよ…」


ラ「今はそれはいい。それよりも、固定パーティになるのは無理なのか?」


「俺は外出を許されただけでほとんど毎日城に戻らなきゃならないからな。リック達と冒険出来る時間が限られるんだよ。それが俺が固定パーティに入ってもいいのか迷ってる理由だ」


リ「……別にいいんじゃないのか?なぁラーガ」


ラ「俺も別にいいと思うぞ。それにさっきサラッと転移が出来るって言っていたしな。それがあれば一緒に遠くまで冒険出来るんじゃないのか?」


「それをするにはもう一つの秘密を喋る必要があるからな…」


リ「なら誓約魔法使いに誓約してもらうか?」


「…誓約?」


ラ「お前はバカかリック。誓約魔法を使ってもらうのにいくら掛かると思ってるんだ。最低でも金板5枚だぞバカ」


リ「そ、そこまで言う事無いだろ?誓約、いい考えだと思ったんだけどな…」


「いや、それで行こう」


ラ「…話を聞いてたか?金板5枚だぞ?そんな金があるのか?」


「いや、そんなに必要ない。まだ教えられないが時間があれば大丈夫だ」


ラ「………そうか。信じよう。それまではまだ賠償パーティだ」


「ああ、よろしく頼むよ」


リ「これで小難しい話は終わりだな!オーク食べようぜ」


ル「肉!」


「おお、復活した」


ラ「そうだな。オーク肉を食べよう。クート、出して貰えるか?」


「ああ」


ドスン。と大きな肉を出す。


リ「食べるの久々だな~」


「リック達は金稼いでるんじゃないのか?」


リ「金を稼いでるからと言ってもオーク肉はそう食えるもんじゃないぞ?いつもなら冒険で狩るオークは1体で、肉は冒険者ギルドに売るからな。2体狩っても持って帰れないからルンドは泣く泣く置いて帰るのさ。


最初の頃はオークを2体狩って、そのうち1体を森の中で食べようとしてたけど、オーク肉を焼く臭いが大量の魔物を呼び寄せちまって結局、逃げるために邪魔なオークを置いて帰ることになって、それからは1体ずつしか狩らないことに決めてんだよ」


「へー。……て、今森の中で食べようとしてるけど大丈夫なのか!?」


ラ「ん?ああ、大丈夫だ。ここは森の入口。来るとしてもゴブリンからホブゴブリンぐらいだ。それに俺がずっと警戒してるし、武装した俺たち4人が居るからな。そこらの雑魚には負けないだろ」


「……それもそうか。なら今はオーク肉を楽しもう!」


ラ「ああ、それがいい」


ル「何話してるの?もうすぐ焼けるよ?全部食べちゃっていいの?」


リ「ダメに決まってんだろ!ラーガとクートも早く来い!ルンドに全部食われちまう!」


ラ「……クート、早く行こう」


「…そうだな」


俺たちは話すのを止めてオーク肉を食べまくった。日本のスーパーで売ってる豚肉の数倍の旨みを感じ、どんどん腹の中に収まっていった。


それから数回ゴブリンがやって来たがルンドが蹴散らした。食事の邪魔はされたくないらしい。だがそれでもオーク1体分の肉を全ては食いきれなかった。


四分の一ほど残り、その更に半分を俺が『異界』に、もう半分をルンドが保存が効く燻製くんせいにしてくれるらしい。


リ「それじゃあ誓約のこと頼むぜクート!」


「ああ、任せてくれ」


ラ「明日は休みで良いんだよな?」


「そうだな。王女様に呼ばれてるからな」


ル「オーク肉は任せてよ!しっかり美味しい燻製にするからね!」


「任せるよ。それじゃあ解散で」


ラ「ああ。次は明後日だ」


俺たちは解散した。既に街の中だ。そして俺は城に帰……らずにスキル屋に向かった。

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