rubinの愛

神徳颯人

1.夢のまた先の話(1)

1.

 プル、ル、ルル。

 朝の6時にセットした携帯のアラームが鳴り響く。

 「んー、、」

 まだ眠く、再び閉じそうな目を擦りアラームを止めベットからでる。

 カーテンの間から溢れる朝の日差しがイーゼルに置きっぱなしの作りかけの作品(絵)を照らす。

 「昨日よりも表情がいいな。」

 「ふー、動くか。」

 そう言い身支度をし、軽い朝食を食べ家を出る。

 普通の家なら家族と軽く団欒をしたり、行ってきますの挨拶をするかはずだが今の私にはそう言ったことはない。

 兄弟はおらず、母は幼い頃に亡くなっており父は他県に単身赴任中の為今は一人暮らしだからだ。

 

 自宅から最寄りのバス停まで5分、着くと同じ高校に通う幼馴染の水島蓮が先にバスを待っていた。

 「お、ゆづき。おはよ、」

 「おはよ。寒いね。」

 九月の下旬、カーディガンは必須になるくらい寒くなってきた。

 「ねえさ、朝のrubinの投稿みた?」

 「上がってるの?今から見るよ、」

 rubinとは、今高校生の間で時の人となっているSNSを中心に活動している現代アーティストだ。

 「これ?」

 「そうそうそれ、凄くね?」

 rubinの新作品、タイトルは『残像』。

 それは廃れなビルの一室にただ赤く染まったキャンパスが置かれているだけ。言ってみれば作ろうと思えば誰でも作れる物だった。ただどこか不気味さがあり私には到底作れるような物ではなかった。

 「素人目からしたらこんな物に意味あるの?と思ってしまうけど、なんか引き寄せられるんだよね。ゆづきはどう?」

 「私も似たようなこと思ったよ。すごいよねrubin、」

 私も一応美術部でそれなりのコンクールには何度か入賞したりもしてるが所詮そこそこできる高校生レベル。『rubin』の作品と比べてしまえば天地の差がある。

 「だよなー、美術に全く興味なかった俺も今では大ファンだもんな。」

 「だね、最初見せた時『なんだよそれ。おもんないじゃん』ってずっと言ってたもんね。」

 「言うな言うな、『rubin』様に失礼だろう。」

 「そうだね。」

 軽い雑談をしているうちにバスが来た。

 バスに乗り席に着くと。

 「ついたら起こして。」

 そう言い、蓮は寝てしまった。まあいつものことだ。

 私はさっきの『rubin』の作品をもう一度見直す、さっきはあまりじっくり見ることができなかったからだ。

 タイトルは『残像』、ただ赤く塗られたキャンパスが廃ビルの一角の置かれているだけ。

 「不思議、」

 これをみた瞬間、それしか出てこなかった。ただどこか歪でおかしかった。まるでそこにだれかがいたような感じがした。

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rubinの愛 神徳颯人 @ara_haru

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