今朝電車にて
筆ペン
第1話てか一波しかない。
非道い人間だ。
でも審判じゃない。
家のローン残る此の身は迂闊な行動ができない。でも腑に落ちない。
けれど失笑すらあるこの出来事を伝えたい。
困ったことになればフィクションとやり過ごして欲しい。
都心から離れ、郊外の地に家を買い、
朝はほとんど座れる高みの見物。
この時点でやな奴だと自分でも思う。
郊外だが、新興住宅が増え、人気の駅では
もう少ない座席がビーチフラッグの毎日。
私の隣の席は空いている。
ドアが空いた。戦いの始まりだ。
昨日入社したばかりに見える爽やかな青年。スーツもパリッとしてうなじも綺麗で髪を切ったばかりにみえる。フレッシュとしか言いようがない。体格は細身で小さく見える。
白髪だがしっかりと歩き、背中も曲がっていない強めの高齢(に見える。)の女性。
別々のドアから始まり、同じ席めがけてお互い小走りだ。
手すりを女性が掴んだ。「ごめんなさいね。」
なんて鼻につく言い方なんだろう。
思わず顔を上げてしまいそうになったが、
ここはローンのある身。正面を見る感じにして無表情に、目線はあえて向かい側の窓を見る感じにして視界に入るかどうかのギリギリの所で観客となります。
キット勝った。そういう気分で発した言葉に違いない。そうとしか思えない。
女性が席から視線をはずし、体をくるっと中腰になろうかどうかのその刹那。
既に身体はどかし合い、ぶつかって押し合っております。
証拠がないがお兄さんのコーヒーの飛沫が私の右ほっぺ、目の下あたりにはねた感じがしました。しぶきを手で拭おうか迷ったけども
ごめんなさいねの女性の飛沫じゃないのか?と考えを巡らせ、怒りよりもそのあとの光景に私は夢中だった。
目線はあげないが。
更に低空姿勢。若しくは座る動作をしながらのピポット。若者が滑り込んで席に座った。
まだ彼は諦めていなかったのだ。
その時私は見た。
オーラを。
霊や気配を普段感じず、空気も読めない
ぼけっとしているとの報告をよく受ける私が私の首筋と腕の寒イボが、逆立った。
どこかで見た廟の仁王像。
昔の人はよく相手をこんな怒らせていたのか。それを像にして彫ったのか。
白髪も相まみえ朝の爽やかな日差しが後光となり、感銘を受けた。怖い。
若者はすぐスマホを取り出しうつむき、シカトを決め込んでいる。只者じゃない。
十秒。いやもっと長く感じたその緊張感に私は目が離せない。離しているが。
殺される。殺気で殺される。
右の雫が頬を伝う。
無表情だ。無表情が最善だそして無関心が
このローンの残る私のなす術だ。
女性がリズミカルにドラミング、
咳でドラミング。
30秒ほどのわざとらしいドラミング。
一気に緊張の糸がほぐれ
笑いを堪えるのに命懸けとなった。
今、表情を変えたらヤラレル。
だれかに助けを読んでるのか?
若者の心変わりを促すのか?
誰がどう聞いてもわざとらしい無理やり出してるその咳が、電車の線路の音とリズムを奏でる。
私はそっとスマホに目を戻した。
今朝電車にて 筆ペン @satoshi5476
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