「役立たず」として敵の基地に特攻させられましたが、全員『無力化』して平和に戦争を終わらせることにします。
メルコ
大将なのに、部下にヘリから投げ捨てられたんですけど。
「んじゃ、キドゥン大将。これから激戦区のど真ん中にお前を捨て…投下する。ったく、これでようやく戦犯とおさらばできるぜ。」
わたしを乗せて飛ぶヘリの操縦士は、いともあっさりとそう言い放った。
「何言ってんのよオマエ!?わたし大将ぞ!?」
思わずわたしは叫んだ。
え?わたし大将だよ?
歴史の教科書にも載るくらい、めちゃくちゃ功績をあげた人だよ?
あ、載せるんなら『20歳のピチピチ美女大将!』っていうフレーズ付けてほしいな。っていや、そんな事はどうでもよくって。
投下って、なに?大将どころか歩兵レベルの扱いじゃん。
わたしは納得できず、操縦士の男を問い詰める。
「いやいやいや、この名大将のわたしを投下するとかあり得ないでしょ!?わたしを失えば、我が『ポーチラス国』の大きな損失になるぞ!」
落とされまいと、必死になって自分の価値をアピールする。
しかし操縦士の奴は、それを嘲るような冷たい口調で言った。
「ククク…キドゥン大将、アンタここ最近負けてばっかだろ?」
「え…」
「この前の『テイラー国』との戦争だって、あんたは敵と戦おうとしなかった。何やら、予定にはない和平交渉を突然持ちかけたそうじゃないか。」
「そっ…それはっ…」
数週間前の戦争を思い出して、わたしの背筋がギクリと凍った。
そうだ。あの時の戦争で、わたしは銃を捨てて敵兵に歩み寄ったんだ。結果は…
「交渉を裏切った敵に撃たれて、負傷したって聞いたぞ。おかげで指揮する人間がいなくなって部隊は大混乱したそうだ!バカなのかお前は!」
ギャハハハ、と下品な嗤い声がヘリの中にこだまする。
わたしは奥歯を強く噛みしめた。悔しかった。でも、あいつが言った言葉に間違いがないのも事実だった。
わたしは昔から人を殺すのが苦手だった。軍人ならできて当然な事が、わたしにはできなかった。
『虐殺が正しいなんてのはどう考えてもおかしい。』
そう考えているのはわたしだけで、他のみんなは違うようだった。
「初めての女大将だからって話題になってたが…やっぱ女ってのはダメだな。敵を殺そうとしない大将が、何の役に立つ?大将になれたのもどうせ色目でも使ったんだろ?」
「…わたしは無意味な虐殺は嫌いなんだ。あと、大将になったのは実力だ。あんたと違ってね。」
大将になれたのは、本当に力を認めてもらえたからだった。嘘じゃない。今じゃ誰も信じないけど。
「ハハ、話にならねぇ…死んだお前の部下どもも、お前みたいな弱い女には着いていきたくなかったろうな。」
「ッ!貴様ぁ!」
頭の辺りで、プチッと何かが切れる音が聞こえた。
わたしは感情のままに、奴に殴りかかろうと飛び出す。
しかし───あと数秒、遅かったらしい。
「おっと…投下スポットまで到達した。じゃあな、戦犯さん。空の旅を楽しめ!おいディルハム、こいつをヘリから投げ落とせ!」
「了解です。全力で投げ落とします。」
「え、ちょ、ま───」
制止しようとしたところで…操縦士の隣に立っていた、筋骨隆々スキンヘッドな男が立ち上がる。
彼はわたしをヒョイとつまみあげたかと思うと。
「大将、投げ落とし失礼しますッ!!」
ブンッ─────────
まるでゴミを捨てるような軽々しさで、ヘリの外へと投げ捨てた。
────マジかこいつら。
ホントで落としやがった!20歳の美少女を、ヘリから直接!
なに?慈悲の心とか無いわけ?お前らどんな教育受けて───
次の瞬間、猛烈な勢いで、身体の下から上に向かって、風が吹き抜けていった。
「わあああああああああああ!!!!助けて助けて落ちる落ちる落ちるぅぅぅぅっ!!!!!」
空中でもみくちゃにされながら、わたしは絶叫する。
内臓が真下に引っ張られてるかのような、ゾッとする落下の感覚。
どこまでも落下していく恐怖の前に、わたしの軍人としての気高き精神はあっさりと崩れ去ったのだった。
「いやだっ!まだアイツらにバカにされたままなのにっ…部下に、何にも報いれてないのにっ…死んでたまるかぁぁぁーーーーッッッ!!!」
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