第33話 レアドロップ

>やべぇぇぇ!

>すっげぇギリギリじゃなかった!?

>観てて手震えたわ・・・

>こんな序盤ボスで手に汗握らされるとはな

>ナイスファイト!


ボンジリの右の視界に映るコメントには、

続々とフォグトレント討伐の感想が寄せられてきていた。


「はは、ホンマに勝ってもーた……」


普段は配信者としての自覚を持つボンジリも、

さすがに高揚してコメントに対して返事ができない。

配信人生の中でも屈指の激戦、そして撮れ高。


「カイ君、ホンマにありがとうっ! おかげで最高の画が──」


「解体っ! 解体っ! 解体っ!」


「カイくぅーーーんッ!?」


カイは感動もなにもそっちのけ、

さっそくフォグトレントの【解体】に乗り出していた。


「ちょいちょいカイ君っ! もうちょっと風情をやなぁ、」


<獲得:フォグトレントの上枝>


<獲得:フォグトレントの上皮>


<獲得:黄金リンゴ>


「「おおっ!?!?!?」」


獲得されるモンスター素材の中、金色に輝くリンゴがカイの手中に収まった。


「黄金リンゴ……!?」


「なんやそれ……!?」


さっそくカイがアイテム詳細を開く。


黄金リンゴ

└希少度が高く美味しいリンゴ。

└売って良し、食べて良し、

└料理に使っても良し。

└満腹度ゲージを無視して

└食べることが可能。

└HP・MPを完全回復する。


「つまり、これはアレやな……レアアイテムってことか……!」


>運良いな

>確率10%を引いていくぅ!

>売れば2万マネーはいくぞ


コメントから察するに、誰も見たことの無いレアアイテムというわけじゃないらしい。

まあ当然か。

フォグトレント自体はもう多くのプレイヤーたちが討伐しているだろうし。


「さて、ほんならどうするカイ君?」


「えっ、どうするって?」


「え、カレー作るんと違うんか?」


なんならすでに鍋を用意しててもおかしくないと思っていたのだが……

以外にも、カイは戸惑うように、


「いや、でもいいのかな……」


「何がや?」


「だって黄金リンゴ1個しかないし、分けられないなー、と」


「えぇっ!? ジブンそんなこと気にする性質タチなんっ!?」


「失敬な、俺にだって気遣いの概念くらいあるわっ!」


「てっきりカレーのことしか頭に無いんかなと……」


「まあそれはそう」


認めるところは認めるカイにボンジリは苦笑いする。

まあ確かにカイはマイペースではあるが、自分勝手な人間ではないことは分かっている。


……そうやなかったら、いっしょに配信しようだなんて誘ってもおらんかったしな。


「別に俺の取り分はええって。1番体張ってくれたんはカイ君やろ? ドロップアイテムは全部持ってってや」


「いや、さすがにそれは悪いって」


「ええねん。こっちはエグいくらい配信の同接数稼げてるし……ホンマにヤバいで、同接数2500超えや。報酬全部カイ君に渡してもおつりが来るくらいやで」


ボンジリの本心だった。

チャンネル登録者数もどんどんと上がっている。

アーカイブの再生数も期待できるだろう。


「んー、そう言ってもらえるなら」


カイは黄金リンゴを見つめて、


「黄金リンゴはありがたく貰っておくよ。そんで今すぐカレーにする!」


「よしきた!」


……今日始めたばかりでこう言うのもなんやけど、やっぱりカイ君との配信はこうでなくちゃ締まらんわ!


さっそく調理に取り掛かるカイを、ボンジリは手伝った。

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