第10話 カレー料理の効果<バフ>

「あの、料理長……バフっていうのは?」


「ああ。なんだ、カイはまだ味見していないのか?」


「いや、味見はしましたけど……攻撃力増加に体力増加とかって言ってましたよね? 俺、料理に対してそんな特殊なことやってないんですが……」


「ははっ、何を言ってるんだカイ。特殊なことなんて必要ないだろう? ただ料理のデキが素晴らしかっただけじゃないか」


「???」


「なんだその反応は……って、まさかお前、そんな基本的なことも知らずに料理を生産クラフトしていたのかっ!?」


え?

クラフトとバフの関係性って常識か何かなの?


「まったく、不思議なヤツだ。ならオレが教えてやる。ステータスボードを確認してみろ。そして自分の基本パラメーターを表示するんだ」


「うっす」


体力 :52↑

力  :24↑

速さ :14

耐久 :12

~(中略)~

その他:なし


「そのパラメーターの中で右端に矢印の上マークが付いているものが見えるな?」


「はい。体力と力に」


「それが今カイのパラメーターの中で一時的に強化されている項目になる。パラメーターは魔術やスキルで強化が可能な他、薬品や料理での強化も可能だ」


「じゃあ、今の俺はさっき作った卵とトマトのカレー炒めを味見した影響でパラメーターが強化されている……ってことですか?」


「そうなるな」


なるほど……

まさか料理を食べることに満足感以外のメリットがあるとはな。

ん?

そういえば俺の持ってる称号の【カレーマニア】の説明にあった、『付属効果を1.25倍にする』って、もしかしてこのバフのことなのか?


「……よし。カイ、お前に渡す報酬だがな、俺に考えがある」


料理長はそう言うと厨房へと戻り、何かを手にして戻ってきた。


「料理長、それは?」


「オレが愛用していた包丁……【一ツ星クッキングナイフ】だ。これを使って手動生産した料理の効果を少し高めるほか、料理を手動生産するたびに少しの経験値を取得できる」


「おおっ!」


これ、つまりは称号の効果に加えてさらに料理バフと取得経験値を増やすことができるってことだよな?

今の俺にかなり合っている気がする。


「ありがとうございますっ! ……それで料理長、あの……」


「ん? どうした?」


「催促するようでアレなんですが、このイベント報酬のマネーの方は……?」


「報酬はクッキングナイフだけだが?」


「……え? マジっすか?」


「マジだ。報酬は1つだけの決まりだからな。なんだ、マネーの方が良かったか? だったらそのナイフの代わりにマネーを渡すが」


「ん、ん、ん~~~……」


俺、マネーを目的にイベントに応募したんだよな、元々。

調理器具や食材、スパイスなんかを買うためにさ。

でも、この【一ツ星クッキングナイフ】は明らかにレアアイテム臭するしなぁ……


「……こちらのナイフを、ありがたく頂戴いたします……!」


苦悩した末、俺はナイフを選んだ。

マネーは最悪、討伐クエストでも稼げるからな。


「討伐クエストかぁ……」


おつかいクエストより時間が取られて、カレー作りの時間が減るんだよなぁ……。


「なんだ、討伐クエストが嫌なのか?」


料理長は意外そうに言った。


「モンスターの肉は調理にも使えるし、カイなら喜んで行っているものだと思っていたのだがな」


「えっ? モ、モンスター素材って料理に使えるんですかっ!?」


「そりゃ、まあ。解体して"肉"が入手できるモンスターならな」


マジかよ。

喰えるのか、モンスター。


「俺、討伐クエスト行きたくなってきました……!」


こうなると、カレー料理の幅がものすごく広くなってくるな……!?

早く試してぇっ!!!


「単純なヤツ……」


料理長はため息交じりに笑っていた。




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本日19時に次話を更新いたします!

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