うちのとうさんは

森林木 桜樹

1「紹介」

「いってきます。」


腰まである長い髪を後ろで赤色の髪ゴムを使い、一つにまとめて結び、薄いピンクのカッターシャツに、赤いリボン、黒いジャケットとプリーツスカートの制服を着た少女が、家の玄関にある靴箱の上に設置してある四箱の上に設置してある指輪から、自分用のを右人差し指と親指を使い、丁寧に取り、左親指に通してから、玄関を出た。

指輪は、少女の祖父が勤めているセキュルティー会社が開発した、GPSが組み込まれている指輪である。


「行ってらっしゃい。」


その少女に声を掛けるのは、髪がストレートで肩まである男性である。

その男性が見送る人数は三人。


一人が、少女。


二人目は、身長が百七十五センチ位、髪は、乾かすにもドライヤーが必要ない位短くしているが、ボーズではない男性。


三人目は、身長が百八十センチ位の男で、黒服を着た、髪はオールバックで、細長い形の眼鏡をかけた男性。


三人が揃って、玄関を出て扉を閉める。

三人の中の一人、身長が百七十五センチの男性が、少女に声を掛けた。


「今日は、何時に帰る予定?」

「部活が無いから午後四時には、家に帰る予定だよ、父さん。」

「なら、一緒に食事、用意出来るかな?」

「やったー。」


少女と会話をした男性は、少女の父親だ。


父親の職業は、料理人だ。

駅前のホテルに勤務している。

ホテルの目玉である料理を担当している位、とても有名で重宝される人物だ。

もちろん、家での仕事も料理であり、午前五時に起きて、家族全員分の朝食と昼食のお弁当を用意している。

帰って来たら、夕食を早速作り始める。


「学校まで乗っけて行こうか?」

「体育祭が近いから、体力トレーニングもかねて、歩いていくよ。お爺ちゃん。」

「今年、中学卒業だね。」

「そうだよ。十五歳になるよ。高校一年生になれば、十六歳。」

「十六歳…。そうか、十六歳か。」


身長百八十センチの男性は、少女の祖父である。

先程のGPSが組み込まれている指輪を開発したセキュルティー会社に勤めていて、この一帯の防犯カメラの設置と監視の仕事をしている。

会社の中では、そんなに上の位ではないが、仕事が出来る為、とても重要な立場に置かれていて、先輩からも後輩からも好かれているし、契約者側からも印象は良い。


そんな二人の指にも、同じ様にGPSが組み込まれている指輪をしている。


指の場所は、祖父が右中指で、父が右薬指である。

父に関しては、左薬指にもシンプルな指輪をしている。

玄関で見送ってくれた人も、出かける時には指輪をし、父と同じ所にしている。


この指輪を出かける時にはするのが、この家での約束事だ。

学校には、説明をし、許可を得てある。


祖父が、駐車場から家を見上げる。

同じく父も見上げると、少女も同じに見上げる。


「この家も狭くなったな。」


祖父が、一言発すると、父が答える。


「そうですね。何時までも未練があると、お義母さんに怒られそうですし。」

「確かに。それに、丁度、良い時期だ。」




家は、一戸建て。

二階建ての屋上付きだ。


一階は、駐車場で、車一台と、自転車が一台ある。

それと、スペアのタイヤや工具が収納してあるボックスが一箱ある。

駐車場の横に階段があり、二階へ上がれる。

階段の下には、外に居ても使えるトイレがある。


二階へ上がると、玄関で、屋上には、柵と物干し台があり、衣類や布団が干せる。

家の周りには、正面以外は家を隠す木が植わっていて、その周りには家庭菜園があり、とても優しく野菜達が育っている。


少女は、二人の会話を訊いて、少し目を輝かせながら言った。


「え?引っ越しするの?やったー。私、自分の部屋が欲しいです。」

「そうだよな。今まで、お爺ちゃんの部屋で一緒だったからな。考えているだけであって、決定ではないし、今直ぐじゃないから、他の人には内緒だよ。桜。」

「はい。分かっています。お父さんとも話をしないとだね。父さん。」

「そうだね。春樹は良いって言うと思うけど、話をしないとな。」


桜は、父と話をしながら、足を屈伸させて、アキレス腱を伸ばした後。


「では、お互いに気を付けて、いってらっしゃいといってきます。」


桜は、父と祖父に声を掛けて、学校へと走って行った。

桜を見送ると、少女の祖父と父は、お互いの仕事場へと向かった。



桜は、走っている足が、とても軽やかになっているのが分かった。

一人部屋が出来ると、とても嬉しかった。

そんな桜に声を掛ける人物が居る。


「桜、おはよう。」


桜に声を掛けたのは、同じクラスの女性だ。

女性は、身長百五十センチで、桜と同じ位腰まである髪を、白の髪ゴムで二つに分けて括っていた。


「おはよう、姫。」


桜は、走るのをやめた。


「桜、あの話ししてくれた?」

「あの話?ああ、仕事が忙しそうで、話が出来てないんだ。落ち着くまで待って。」

「仕事が忙しいって、凄いね。ファンの私としては、感激だよ。」


姫の名前は、国田姫くにたひめ

桜と姫は、幼稚園が一緒で、それからの付き合いである。

姫はリボンが好きで、幼稚園の時も毎日ってほど、リボンをしていた。




小学生になり、姫は、小学生の授業参観で桜がしてきたリボンを見て訊いた。


「そのリボン、キツメブランドじゃない?」


見た目だけで、それが何処のブランドかを当てた。


リボンは、赤色をして、子供っぽくピーズがちりばめられていた。

今日は、授業参観で、いつもよりきちんとした服装と髪型をしてきた。

初めての授業参観で、緊張をしていた桜を見て、桜のお父さんが作ってくれたのである。


「キツメブランド?このリボンは、私のお父さんが作ってくれたの。」

「キツメブランド作っているのって、桜ちゃんのお父さんなの?名前、春樹じゃない?」

「そうだよ。春樹お父さん。今日の授業参観、来てくれるの。」

「え?」


そんな話をしていると、その父が来た。

その瞬間、姫は、春樹に向かって手を合わせて、拝んだ。

それから、姫は桜と一緒に居る時間が多くなった。

最初は、キツメブランド春樹の娘で、引っ付いていたが、次第に桜に惹かれた。


桜が、困っていると相談に乗り、体調が優れないと分かるといち早く反応をして保健室に一緒に付き添い、登下校も一緒で、それこそ喜怒哀楽を共にしている内に、桜とは親友になっていった。





「桜の家は、相変わらず?」

「そ、狭いから、友達が来て貰えないの。」

「そうだよね。はー、春樹様にお会いできるのは、学校のイベントだけか。」

「……そうだよね。」


今度、引っ越しをするとなると、姫、喜びそうと思った。

姫があこがれている春樹は、玄関で見送ってくれた男性である。


家で、手芸の仕事をしている。

ホームページを持っていて、そこで手芸全判の仕事を受け持っている。

最初は、ぬいぐるみの修復をしていたのだが、次第にぬいぐるみの服を作り、今では、人の服の裾上げから、制作、冬が近いとセーターやマフラーなどの毛糸を使った物まで作っている。

あみぐるみも制作していて、幅広く受け持っている。


それを、中学二年生の時からやっていて、今では、手芸界では知らない人が居ないほどで、有名だ。



「家のお父さんって、本当にすごい人なんだね。」

「そうよ。それに、春樹様だけではなく、桜の家族は、すごい人だらけじゃない。それに、とても心強いし、小学生の時、初めて桜の家族構成聞いた時には、驚いたよ。」

「まあ、私も本当に特殊だとは思っているけどね。」

「そんな家族だからこそ、桜は、健康に素直に強く育ったと思うよ。それはそうと、桜、訊いたよ。又、告白、振ったんだって?」


姫は、桜の顔に自分の顔を近づけて訊いた。

桜は少し顔を後ろに動かす。


「だって、私が了解したら、きっと、お父さんと父さんとお爺ちゃんが、ボスになるよ。あの三人に勝てる人じゃないと、付き合っても大変だと思うの。それに、…なんか違うって、心が言っているの。」


桜は、自分の胸辺りに手のひらを当てて、問いかける。

姫は、そんな桜を見て、愛おしく思った。


「まあ、この地域は、同性婚が認められているから、二十歳になっても居なかったら、私が桜と一緒になってあげる。」

「姫は、私のお父さんが目当てでしょ?」

「それもある。身内になったら、もしかしたら、キツメブランドの制作を無条件で手伝えるでしょ。でも、それを抜きにしても、桜は私にとっては、とても大切で特別だから、まあ、その時になったら考えてみてよ。私も、それまでは、恋人作らないからさ。」

「……私、ラスボスは、姫になりそうって思ったよ。」

「いいかもね。魔王にとって、ラスボスは勇者ではなく、その姫って。面白そう。」

「そういうゲームないかな。」


二つ、三つ話をしながら、登校した。

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