ヒーローのいた町

Nit4H0sH1

プロローグー日曜日の朝ー

 とある日曜日の朝、電車に揺られている。

幸い日曜日であるからか、車内は優雅なものであった。

ドアの上部に設置されたディスプレイで目的地までの時間を確認する。

まだ4~50分は残っていそうだ。こんなことなら何か暇をつぶせるものでも持ってくればよかったと心底後悔しながら、窓の外に目をやる。目が潰されそうなほどに明るい空色とビルの反射によって度々こちらに攻撃を仕掛けてくる太陽。それと少しばかりの雲、いたって平凡な1日の始まりである。

 

 あの日も、こんな良く晴れた空の日だった。

 

 目が潰されそうなほどに明るい空色とビルの反射によって度々こちらに攻撃を仕掛けてくる太陽。それと少しばかりの雲に加え怒号や悲鳴、パトカーのサイレン、爆発音。あの日、あの時、私はまだ子供だった。それこそ野菜全般を毛嫌いし、授業中にいびきをかくような、ね。だから、あれらを聞いた後には怖くて動けなくなっていて、逃げようにも逃げられなかったんだ。殺されると思った、人じゃないない何か、それこそテレビの特撮ドラマなんかでしか見たことないような怪人がこっちに気づいて、目が合った時にはね。奴らは私を見つけるとすぐ走って寄ってきた。怖くて動けなくって、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに汚しながら死を悟って目をつむったその時だった。彼が来てくれた。彼は私の安否を確認するとすぐに奴らに向き直って腰を落としたんだ。すごく格好良かった、何より今自分のためにヒーローが来てくれたことが本当にうれしかったんだと思う。彼は断固とした意志でもって奴らと相対していた。私は情けないことに気づいた時には警察に保護されていて、彼にお礼も言えずにその場をあとにしていた。

 その後も、彼は活躍を続けて敵の幹部を打ち倒し、遂に黒幕と対面したときの事だった。そのころには、国も彼を援助することを決めていて、テレビクルーなんかをよこしてまで彼の活躍を世界に広めていた。でもそれが結果として彼を苦しめることになった。黒幕は驚愕の事実を話し始めた。

「我々の正体を教えてやろう!我々は貴様らの未来から来た人間なのよ!」

「我々は貴様らの環境汚染や社会の不安を解消するために作り出されたゴミ箱!そして貴様らのせいで未来の地球は滅びかけている!だから根本的な問題を消そうとこの時空にやってきたのだ!」

そうして一同が呆気に取られている隙に黒幕がテレビクルーへ攻撃を仕掛けた。彼は一歩遅れて庇いに行って致命傷を負った。だれもが絶望した。あまりにも状況が絶望的過ぎた。だが彼は諦めなかった。自分たちの未来を知っても尚。

未来は、自分たちの手で切り開くべきだと、そう彼は信じて疑わなかったから。

彼は、決死の覚悟で黒幕に挑みあの場から消失した。まばゆい光にさえぎられて誰も彼の最後を見届けることは叶わなかったが。だれもが一様に不安と彼の信じた可能性を感じていた。

 その後、破壊された街の復興が始まり、数々の戦いの後も最終決戦の地を残して補修されていった。そして今日私はこの町に帰ってきた、あの日の記憶に導かれるままこの町に帰ってきたのだ。

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