第6話 春の吐息

真っ暗で

何も見えない

そっと

そろそろと足を下ろす

頭上の

わずかな隙間から、日の光がさしこむ

見上げると遠くに空が見える

そっと目の辺りまで顔を出す

目の前に広がる大地

今だ、と

身体を伸ばして頭を持ち上げ

深呼吸をひとつ

懐かしいような、

土のにおいがする



あ、

あったあった

ほら、こっちにも沢山


どこかで声がする


春だねえ

うん、春になったね

楽しそうに話をしながら近付いてくる

これ、

ちょっと苦いけどね、甘辛く煮ると美味しいのよ。

手に握られているのは…


摘んだばかりの

つくしんぼ


オーマイガー!


気付かれぬようにと

目をそらす

少し頭を低く、できないか。


つくしんぼ

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