人種差別を受けた主人、相手を拳でフルボッコにする③

 これはラグビー部の人間に聞いた話だが、Mの顔はボクサー選手のように赤く腫れ上がり、瞼が少し切れて数針縫ったらしい。それでも、大熊猫パンダには一切お咎めはなかった。


 学校から両家に連絡がいったようで、大熊猫パンダは早退する事となった。先生達から事情を聞いた母親は「よし、今日は大熊猫パンダの好きな物食べよか!」と明るく振る舞っていたが、自分のせいでこうなってしまったと思ったのか、一人でいる時の表情が少し悲しそうだった。


 その日の夜、18時くらいにMの両親が泣きじゃくるMを連れて家にまで謝りに来た。何を話しているのか分からないが、Mの両親が今回の件について謝っているような声が聞こえてきた。


大熊猫パンダ、友達が謝りに来てくれたで」


 母親が大熊猫パンダの部屋の扉をノックする。

だが、大熊猫パンダは昼間の事を根に持っている為か、「帰れっ! Mからの謝罪は受けへん!」と母親に伝え、部屋に閉じこもってしまった。


「本当にすいませんでしたっ!!」


 暫く時間が経った後、Mの大きな謝罪の声が家中に響く。これは母親から聞いた話だが、人種差別的な発言をしてしまった事に対して、先生達からも両親達からもこっぴどく叱ら、もう二度とそんな事はしないと誓ってくれたそうだ。


「M君な、私にまで謝ってきたんよ。めちゃくちゃ腹立ったと思うけど、気持ちの整理がついたら許してあげや」


 母親の言葉に大熊猫パンダは返事をせず、悶々とした気分のまま、寝落ちしてしまった。


◇◇◇


 次の日、Mから「昨日は本当にごめん」と正式に謝罪を受けた大熊猫パンダは「おう。もう、ええよ」と許してあげたのだった。


 大人になった今、Mとの交流はない。ただ、人の尊厳を傷付けるような発言には気をつけようと心に誓った出来事となった。

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