ある日の思い出


「“みーちゃん”、あそびにきたよ!」

「“はなちゃん”!! きょうはなにしてあそぶ?」

「かくれんぼしよ!」

「いいよ、じゃあはなが、おにやるね?」

「わかった~」


「みーちゃん」と呼ばれた黒髪のおかっぱの少女と「はなちゃん」とよばれた茶髪のツインテールの少女が楽しそうに遊ぶ。

真っ赤な夕日に照らされるまで遊んだ二人の少女。


「たのしかったね!!」

「うん! たのしかったね!!」

「……」

「……? はなちゃん?」

「はな、もっとみーちゃんとあそんでいたい!!」

「わたしも!! はなちゃんといっしょにいたい!!」

「はな、みーちゃんだけが、ともだち」

「わたしも、はなちゃんだけがともだちだよ!」


「はなちゃん」は「みーちゃん」に抱き着く。

そんな「はなちゃん」を「みーちゃん」が愛おしそうに撫でる。

たいして年も変わらなそうな二人だが「みーちゃん」がとても大人っぽく見える。


「ねえ、はなちゃん。 ゆびきりしよう!!」

「ゆびきり?」

「うん! あしたもあそぶためのおまじない!!」

「うん! する!!」


夕日に照らされながら二人の少女は指切りをした。

素敵な光景。 でも永遠には続かない。




「ただいま!!」

「あら、はなちゃんお帰り。 楽しかった?」

「うん! “みーちゃん”とたくさん遊んだ!!」

「そっかぁ。 いいわねぇ」

「あしたも、あそぶんだ!!」


すると両親は顔を見合わせて苦笑いした。

そして父親が言いにくそうに言った。


「華ちゃん、ごめんね。 明日の朝、もう帰っちゃうんだ」

「え」

「ごめんね。 だから明日はみーちゃんに会えない」

「うそ……ゆびきりしたのに……」

「またここに来た時に謝ればいいよ。 きっと許してくれるよ」


寂しげな表情を浮かべる「はなちゃん」だが、なぜか唇は吊り上がっていた。



♢♦♢♦♢♢



「おじいちゃん、おばあちゃん! またくるね!!」


「はなちゃん」は思い切り手を振って車に乗り込む。

結局「みーちゃん」に会えないまま帰ることになってしまった。






いつも「みーちゃん」と「はなちゃん」が会っている場所に、ひとり「みーちゃん」だけがいた。

どこにも座らないで日が落ちるまでずっと「はなちゃん」を待っていた。


「はなちゃん……こない……」


寂しそうにつぶやいた。

可愛らしい瞳を大きく見開き、血に染まったような赤い瞳に変わっていく。


「“はなちゃん”のうそつき。嘘つき。 嘘吐き。 嘘吐き。 嘘吐き!!!」






————ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のます————

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