落とし子

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第1話 始まりの決意

 立ち上る煙、絶えず響く悲鳴、建物は崩れ、悲惨な状況の中その人物達はみんなを守るために戦った。


   その名は 悪魔達デーモンズ


この中二病チックな名前が広まったのは三年前の夏頃、突如としてと呼ばれる人形の化け物が空から落ちてきたことだ。落とし子は人を遥かに凌駕した身体能力を保持している。そんな落とし子を前に人類は現段階の全ての兵器を使用。しかし、それは全く効かず諦めかけていた。日本が負けるのは時間の問題だと思っていたその時落とし子に対抗できる力を持った組織が現れた。それが悪魔達デーモンズだ。


「…と言うわけで、これはテスト出るからな~。まぁ、こんなの小学生でも覚えてる。でだ、なんで寝てんだ!おい!起きろ!」

ん〜、うるさいな。先生のその言葉で目が覚める。

「え〜、これくらい俺でも覚えてますよ。寝させてください。」

「だめだ」

「なんで!?」

「だって、この補修お前しかいないじゃん。」

そう言えばそうだった。周りには誰ひとりいなく、先生と俺ー影月雷斗カゲツキライトーの二人だけだ。俺はこの春から高校生になった。のに、補修とか…

「とにかく、何時襲われてもおかしくないご時世だから、気をつけろよ。」

「………はい」

「どうした?妙に暗いな。」

違和感に気付いた先生が聞いてくる。ここで話すと楽になれるかもしれない。が、

「なんでもないです。ちょっと眠くて。」

俺は笑顔で乗り切り、補修を終わらせ家に帰る。やっぱりあそこで話しといたほうが良かったのかもしれない。中三の時、俺の友達は落とし子に殺された。しかも、殺すだけじゃない。喰いやがった。俺はあれが許せなくて悪魔達デーモンズに入ることを決めた。俺は土曜日に試験がある。そのための準備ならあの時からたくさんやった。これで落ちたらまた来年申し込む覚悟だ。一次試験のために勉強は毎日やった。二次試験の実技も特訓した。これならいけるはず。



ー土曜日

「これより!悪魔達に入るための試験を始める!!試験は二種類!一つ目!筆記試験!ここでは単純な歴史の問題!それから、身の危険について確かめる!二つ目は…」

二つ目、実技試験。俺が落ちるとしたらここだ。

「適合試験!!ここで、落とし子を受け入れられる体か調べる!」

は?適合試験?なんだ?聞いてた話と違う。てっきり実技かと…こんなん、一度落ちたらもう来年が無い。雷斗は心の中で不安が渦巻くのを感じた。適合試験とは、落とし子の力を受け入れるための身体的なテストだという。彼は自分の体がその試験に耐えられるのか、果たして自分が選ばれるのか、疑念が頭をもたげた。


筆記試験を終え、次は適合試験だ。


「次は、適合試験を行う。参加者は、こちらの部屋に移動してくれ。」試験官の声が響く。雷斗は他の受験者たちと共に、緊張した面持ちで部屋に入った。そこには、特殊な機器が並んでおり、まるで科学実験室のようだった。


「この機器は、君たちの身体が落とし子の力を受け入れられるかどうかを測定する。心配するな、痛みはない。」試験官が説明する。


雷斗は心を落ち着けようと深呼吸をした。周囲の受験者たちも同様に緊張しているのが伝わってくる。彼は自分の決意を思い出した。友達を失ったあの日のこと、彼の無念を晴らすために、絶対にこの試験を通過しなければならない。

自分の番を持っている間、鼓動は早くなり、手のひらに汗が滲む。あの日の出来事が頭の中をぐるぐる回って息が苦しくなる。


「次の受験者、影月雷斗!」試験官が名前を呼ぶ。体がビクッと跳ね、立ち上がる。雷斗は一歩前に出た。機器の前に立ち、指示に従って手をかざす。すると、機器が青い光を放ち、彼の身体をスキャンし始めた。


「…反応あり。適合率……100%!!?(なんだこの子、ボスより高い!?)」試験官が結果を告げる。周囲からざわめきが起こる。

「100?まじかよ」「やば、あいつ」「100って初めてじゃね?」「確かに」

周りの受験者の反応は様々で大半は驚いている。中には睨んでくる人、寝てる人、パチパチとゆっくり拍手する人がいた。

俺は我に返って

「あの?100ってほんとですか?」

と不安になり試験官の人に聞く。

「あぁ、この機械が壊れることは無いからな。しかし、100…悪魔達が出来て以来初の結果だ。(これは報告案件だな。)」

俺は驚いて声も出なかった。

「…取り敢えず、君は合格だ。今日はもう帰っていいぞ。」

あれだけ頑張って努力して、その結果が%だけで決まるなんて、と落ち込んでいると同じく悪魔達に入ろうとしてる橘理久タチバナリクに声をかけられた。

「雷斗!お前すごいな!100だってよ。良かったな〜。お前入りたかったんだもんな!」

相変わらず声がでかくて他の受験者の視線が痛い。

「次の受験者!橘理久!機器へ」

「あ、俺行ってくるわ。」

そう告げて、機器の前で手をかざす。

青い光を放ち理久の体を調べている。

「…反応あり。適合率…32%」

「合格ですか?」

「合格だ。帰っていいぞ。(やっぱりあの子が異常なだけか…)」

ランランで帰ってきた理久が俺に近づき、

「帰ろ。」と言ってきた。

「あぁ、うん。そうだね。って、ん゙ん!!」

「あぁ、大丈夫?」

そう言っておでこに手を置いてくれる。俺は小さい時から不安や辛いことがあると激しい頭痛がするのだ。そのたびに理久に沈めてもらっている。理久といると安心するのだ。

「…もう大丈夫。ありがと」

「…良しっ!帰るぞ!」

理久は俺のお兄ちゃんのような存在で親のいない俺からしたら大切な家族だ。これからは悪魔達の一員として、街を守ろう。



「今日の合格者は?」

「はい!三百名合格し、そのうちの一人が適合率100%を出しました。」

「そう…か。100%…なるほどな。絶対に目を離すな。」

「了解!」

報告者が外に出る。

「100とは、いいね。」

「手放しには喜べん。」

「だね、私もそう思う。」

「ホントだよ。全く、俺の部隊なんだからな?」

「とにかく、絶対に逃さないように」

「了解〜」「了解」「了解よ」「りょ〜か〜い」

(これはかなり戦いが激化しそうだ。)

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