第一話 出逢い
(誰が部屋に入れたのだ)
もしや、皇帝付きの
「どうぞ、お召し上がりくださいませ」
鳳流が自信満々に言うので、今日の料理はうまいのだろう。だが、聖秀に感情というものがないので分からない。
(余の感情を動かせる者は天才だな…。だが、そんな者はこの世のどこにもいない)
そうかすかに思い、料理を見つめた。
恐る恐る箸を取る。感情を動かされないよう、気をつけながら。
もういつから、こうなったのだろう。
とりあえず
(…なんだ?この味は…!)
しまった。感情が動いてしまった。
おしまいだ。だが、止められない。
今日の朝餉がいつもの何倍もおいしいのが悪いのだ。
「鳳流、今日の朝餉は誰が作った?」
真顔で問う。
「お気に召されましたか?この者が作りました」
ずいぶん質素な衣だ。恐らく、
「そなた、名は?」
その宮女は表を伏せたままだ。
自分が怖いのだ。「冷徹王」の自分が。
聖秀は足を組んだ。なるべく、冷静でいられるように。
「…翠…凛と申します」
「
翠凛は、は?という顔をしている。
口元が上がっているのが自分でもよくわかる。
笑っているのだ。作り笑いではなく、真の笑顔で。
何年ぶりだろうか。このように笑うのは。
(ありがとう。翠凛)
自分の妃にすることを、このときの聖秀にはわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます