後宮天才料理人

りな

序話

冬深国とうしんこくの皇帝、冬 聖秀とう せいしゅう

彼は冷徹非情でみなから恐れられている。

ろくに夜伽よとぎしておらず、政務ばかり。

そんな彼は、とあるあだ名が付いた。

そのあだ名が「冷徹王」だ。

表情ひとつ動かさず、周りの者から遠ざかる彼に、とある宮女きゅうじょがあらわれた。

その者の名は翠凛すいりん

聖秀の心を唯一動かす者になることを、まだ誰も知らない。



(今日もひとりか…)

皇帝の部屋にしては静かだ。

寝台には、妃もいなければ、部屋の中に世話係の宦官かんがんもいない。

(…いつまで続くのだ)

「失礼いたします」

今日も、無駄に豪華な朝餉あさげが来た。

(そなたは誰だ?)

寝室には、知っている者しか入れない。

ただの宮女だが、やけに気になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る