【第1章】結末後の二つの戦いに巻き込まれた転生者
第3話 現代文明がなかったら知識チートで無双してたよ?
魔法少女が救い終わった世界に行動を起こす人物がいる。
勇者。異世界帰りの元勇者がある目的のために動き出す。
目的。異世界の魔王城最奥で出会った「願いの力」を持つ女性を助けること。
そして目的のために一つの計画を
その計画が現在、地球の現代日本で
◇◇◇
俺は
平和主義、刹那主義、自己中心的、怠惰をこよなく愛するネットサーフィン大好き人間。
特別という言葉が俺以外に似合う人間は早々にいないだろう。それが俺だ。
俺は転生した。それだけで自分は特別だと思うのは必然の主張だった。
「くそっ。ピックアップとか言ってこのガチャ渋すぎだろ。どうなってんだよ。運営。言いつけてやる」
『うるさいですよ、マスター。確かにピックアップのキャラクターは排出されていませんが星三はしっかりと出て来ています。確率は正常です』
「くっ、何がピックだ。すり抜ける確率の間違いかよ。はあ、これで天井四連続」
『というかマスター。この生活では転生前とさほど変わらないのでは?』
「うるさいなぁ。人間、転生した程度で性格は変わりませーん」
ポチポチと美少女を手に入れることが出来るゲームをやり続ける。ソシャゲは素晴らしい。自分が欲しいものを平等に手に入れられる。なんて素晴らしい。現実と違って至高の神ゲー。
ああ、それとさっきから喋りかけているのは俺が持つタブレットに搭載された
俺は運がいい。人生なるようにしかならないのだから、運がいいと思い続けることほど大切なことはない。
例えば、皆一様にガチャをしてすぐに目的のキャラが何度も出たら、ラッキー、運が良い。もしかして今の俺、幸運かも。と、思ったことはないだろうか。俺はある。
俺、転生した当初、めちゃくちゃにつけ上がった。これは勝った。ありがとう人生勝ちました。ってね。
でも違った。
どうしてかって?
俺が転生した世界は地球。現代文明があった。
俺の持つチートは異世界でもインターネットが使えるようになるタブレット端末。 性能はチートで優秀。能力として【タブレット(人工知能AI付き)(破損しても自動修復)(完全防水)(どこでも召喚)(自動ソフトウェア更新)】である。
うん。わかる。
現代だとしょぼい。あったらいいな程度の性能である。知識チートの一切を使えない。
その知識が意味ないとなるとどこでもネットが繋がるだけのただのタブレット。
せめてチートが活躍できるところの世界がよかった。いや、よくないか。わざわざ死地(中世ヨーロッパ的ファンタジー世界)に自分から行きたくはないし、これでよかったのか?
知識チートで成り上がりがしたかった。俺はなんでも知ってるんだぜ、がしたかった。
もう出来ない。時が進み過ぎている。文明が退化したらワンチャンある? 文明破壊しようかな。等々、平和な世界のおかげなのか、そのせいでなのか、無意味なことを考えてしまう。けど、きっとこれで良かったのだと思う。平和が一番だ。
だいたい、現代の日本人は普通にバトルなんて出来ないから。俺はあたおか系主人公ではないし、覚悟ガンギマリでもないからな。
温室でぬくぬくぞ、こちとら。現代文明サイコー。
まあ、もうどっちでもいいか。現代日本にいるんだし。
さて、先ほど、この世界は地球と言ったが正確にはそうではない。似た歴史を歩んだ地球。パラレルワールドと呼ぶにふさわしい世界である。
この街「遊乃宮市」には
その時点で、ここは俺が知っている地球ではない。パラレルワールドの地球か、ほぼ同じ歴史のある異世界ということである。
ただ、もし異世界なら俺は知識チート無双をしていたはずなのでパラレルワールドということになる。
そしてこの世界が並行世界である何よりの証拠として「魔法少女」の存在がある。
――今から三十年前の話。
予言者が現れ、言葉を紡いだ。
「空は裂け闇の侵略者が降ってくる」
すると、世界を崩壊させようと企む闇の侵略者が出現し、対抗するように魔法少女も出現し始めた。
その後は世界を崩壊させようと企む闇の侵略者たちと聖戦を繰り広げ、魔法少女たちは勝利した。
戦いが終わり、世界の頂点に君臨した「魔法少女」。
魔法少女とは、言わば世界防衛軍。戦う相手がいなくなれば、解体されるのが世の常。
その持て余す力を持ち、動き足りない少女たち。
どうにかできないかと悩む大人たち。
その思いが神に伝わったのか。突如、大きな揺れが「遊乃宮市」に発生する。
地震後の人々はその大きな変化に喜びを覚える人々が続出した。
それはなぜか。
それは現代ではありえない
迷宮出現で、魔法少女たちは持つ力「魔法」を自由に扱うことができ、今のいままで不可思議な力を持たない人々も迷宮によって、ファンタジーのよくある設定たる【職業】と【スキル】を一つずつ手に入れることが出来た。
この「魔法少女へのご褒美」と呼ばれるものにより、少女たちの魔法の力は、世間で英雄の力ではあるものの畏怖、恐怖の感情を押さえることに成功し、少女たちは新たな日常へ踏み出した。
◇◇◇
迷宮は高校一年から親の許可があれば入ることが出来る。
俺、高校二年。二年生と聞いて、皆思うだろう。
なぜ、転生してファンタジー世界になっているのに冒険に行かないのだろうと。
いや、別に行きたくないわけではない。
そう、行こうと思えばいつでも行ける。近場だし。
だからか。明日でいいかなって、あとでやればいいかなって、後回し後回しにしてたら二年生の夏になってた。
現代は素晴らしすぎる。異世界転生とかナンセンス。
そんな充実している俺も、生きていればお金に困るわけで。お金を稼ぐなら好きなことで稼ぎたい。
俺は考えた。あ、そうだ。迷宮に行こうと。
◇◇◇
迷宮に入ってすぐのところ。岩で作成された台に水晶玉が鎮座している。
俺は水晶玉に手を置く。
職業【調停者】 スキル【ダンジョンマイスター】
透明なホログラムのようなものに俺のステータスが表示された。
ステータスに表示されたどちらとも、インターネット等に情報は載っていない。
そのため、わかったことが……。
俺の転生チートはほぼ役に立たない、ゴミ以下であるということが。
それってスマホでよくない? ってなる。
せめて、ステータスの解説、鑑定くらいはできてもいいと思う。転生ボーナスなんだから。
はあ。ほんとため息が出る。知らない職業とスキル。ゴミ以下の転生チート。
異世界だったらなぁ、努力したんだけどなぁ。
俺は諦めた。きっぱりと、はっきりと諦めた。そう、これは仕方ない。仕方ないことだ。現代文明が悪い。世界が悪い。俺は悪くない。
だから俺は、我が道を前と変わらず進み続けるだろう。
あ、ちなみに現代文明がなかったら知識チートで無双してたよ?
ああ、これからどうしようかな。
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