あの頃と変わっていない

息子がイヤイヤ期全盛期だったあの頃。

一度暴れ出すと手がつけられず、ただ泣き暴れる息子を遠くから眺めていた。

30分も経った頃、そっと息子の名前を呼ぶと、涙でビチャビチャになった顔で私に走り寄ってきて、彼の行き場のない怒りは終着点を迎える。


あの頃から10年経過した今、

息子は思春期を迎え、ホルモンバランスの乱れから来るのだろう、本人でもコントロール不可能なイライラを日々撒き散らかしている。


一旦怒りのスイッチが入ると、ブツブツと呪禁を唱え続け、余りにも聞くに耐えず、私が注意をしようものなら彼の怒りはエスカレートする。


結局は放置するしかないのだ。


満足いくまで呪禁を唱えさせ、30分も経過した頃、そっと彼の好きなお菓子を置いておく。

最初は無視していた息子も、気がつくと食べ始めている。

調子の良い時には「ありがとう」のサービス付きだ。


あの頃と何も変わっていない。

気持ちを落ち着けるために、30分の時間が必要なのである。


形を変えて、イヤイヤ期は続くのである。





あの頃と変わった事といえば、

呪禁対策として私は高性能の耳栓を買った。

それもまた、息子の気に触るようだが、お互いの平和の為には必要な物なのである。




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