第2話

ある人、里居さといにて、咲きたる梅にうぐひすの寄りたるを見れば、よみける


梅のを 訪ねて問ひし うぐひすの 鳴く里聞き 来なば返さじ



 ◇


――こんな風に身を持ち崩して、仕え先も失い、結局は里に帰ってきてしまった。

それでも、ここには香しい梅が咲き、それに寄せられた鶯が鳴いている。


あなたも、この里に鳴く声を聞きにいらして。


もしいらっしゃるならば、帰しませんわ。


 ◇


――――

参考:逢坂も果ては行き来の関もゐず訪ねて問ひ来来なば返さじ

(栄花物語 ほか 村上天皇)(※ここでは本歌とはしない)

●交通の要衝である逢坂の関であっても、その端の往来まで行けば、関守もいない。だから、訪ねていらっしゃいな、来たら帰しませんよ


✽参考歌は、とても好きな歌の内の一首です

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る