とても面白かったです。少年愛をテーマにした70年代少女漫画や小説に近い読み味がありますが、本作では少年と老人の性愛が描かれています。
私は異性愛者で、25歳から33歳くらいまでの方がストライクゾーンなので、深い部分での性的なフェティシズムには共鳴できていないのかもしれません。それでも魅了される普遍性のある作品だと思います。昔ながらの洋食屋でのデート。私もよく妄想します。神城塔一というキャラクターも、異性愛者の私から見ても魅力的に思えます。そして、彼の経歴設定や、そどみあ譚などの設定のリアリティ。そのリアリティに対しての、神城塔一という現代的なネーミングの面白さ。お恥ずかしながら、初読時には、登場した文芸誌が実在するものなのかどうか、わかりませんでした。土方巽、橘小夢、山本タカトさん、友川カズキさんなどのアングラで情念と情緒が共存したような表現者を排出している秋田県出身という設定も、もの凄くしっくりきます。そどみあ譚の装丁の描写も、里中さんの耽美趣味やアングラ文化への偏愛が感じられます。大正少女小説のような詩情と、近代純文学のような漢字表記や語彙、ケータイ小説のような軽やかさが渾然一体となった文体も独特。さらに、老紳士へのフェチをお持ちの方には、きっともっと鋭く刺さり、共鳴すると思います。
作者さんの都合もあると思いますし、無理強いをするのはおかしな話ですが、それでもいつか続きを読みたいです。この一章がどう広がり、長編になってゆくのか。気になります。
異世界転生や悪役令嬢モノといった流行ジャンルではありませんが、こういった耽美で頽廃的な筆致の文芸作品も、もっと多くの人に読まれてほしいです。