白雪姫とその執事。
とく
#1 プロローグ
○北の森
四人の少年少女が、鬱蒼とした森の中を歩いていた。
各々が楽しそうに、時々立ち止まったりしつつも森の中を散策していた。
するとふと四人の内の一人、いつもエネルギー溢れる元気なハルトが他の三人に声をかけた。
「なぁ、あの噂知ってるか?」
「噂?」
その言葉に反応したのはミサ。少し気が強いところもあるが、頼りになる少女だ。
「ああ、レンくんが好きな人のこと?」
「「「はぁ!?」」」
的外れな予想を立てたのはカナ。最年少ながら他四人をまとめ上げることができるしっかり者ではあるが、意外と毒の強いちょっと変わった少女だ。
この彼女の発言により、ハルトとレンは驚愕に目を見開き、ミサはどういう反応をすればいいのかわからず微妙な顔をしていた。
「あれ?違った?」
「カナ。そいつは誰だ。」
「待ってハルト。それを知って、どうする気?」
そしてそんな好きな人がいることを暴露されたのはレン。いつも他三人に振り回される、不憫な少年だ。
「いや、近くに住んでいるやつにまんべんな〜く伝えようと思っただけ、だけど?」
そして今日も早速、いじられている。
「絶対言ったらだめだから!これだからこいつにだけは知られたくなかったんだよ...」
「ところでミサ、そんな顔してどうしたの?」
「逆にどういう顔をしろと?」
全くもってその通りである。ミサはレンに気など一切持っていないが、だからと言って反応に困るものだ。
「まぁ、それもそうだな...ってそうじゃない!そういうレンのどうでもいい、くだらない恋心の話じゃなくて、王国のお姫様の噂!」
「く、くだらない...」
「本当にどうでもいいことね」
ミサにの容赦ない一言によって追い討ちをかけられるレン。哀れ。
「王国のお姫様?それってあの、文句しか言わない、私たちを隔離して、なおかつ最近になって自分の利益にしかならないことをこっちに持ちかけてくるグリムヒルド姫?それがハルトの好きな人?」
「出たわね、カナのマシンガン毒舌トーク」
もう四人の中ではよくあることとなりつつあるカナのマシンガン毒舌トークが炸裂した。可愛い雰囲気を漂わせておいて、容赦のない言葉だ。
しかしそれも仕方がないことなのかもしれない。
グルムヒルド姫。北の森が属する王国の第一王女。しかしその性格は性悪な現女王に育てられたこともあり周りからは最悪な評価しか受けていない。
曰く、1秒ごとに気分が変わりわがまましか言わない。曰く、使用人に気に入らないことがあれば即解雇。曰く、一部の国民に対して強制労働を強いているなど。黒い噂ばかりの王女だ。
「ちげぇよ!誰があんな性格悪いの好きになるなるかよ!!」
即答するハルト。
「…しかも誰も何も言ってくれない...」
くだらない下りを未だ引きずるレン。
「じゃあ誰のこと?今の女王の娘は女王と同じく性格の悪いそのグリムヒルド姫だけでしょ?」
そしてそれを無視するカナ。
「いや、それが実は他にいるらしいんだ。その女王にもう一人の娘が。しかも幼いわけじゃなくて、確か16とかぐらいの」
「まさかあの評判の悪いお姫様に妹がいるなんて...」
カナはそのお姫様も性格が悪いのではと思考を膨らませる。
「俺もその話を聞いた時はびっくりしたよ...それにそのお姫様なんだけどさ、すっごく肌が白くてかわいいらしいんだ。確か、そこからついた呼び名が...白雪姫」
「白雪姫...」
静寂が流れる。四人ともそれぞれが一体どんな姫なんだろうかと想像を広げる。
そして突如としてカラスが鳴きながら彼らの頭上を通る。
もう日が暮れかけていた。
「あ、もう日が暮れちゃう。さぁみんな、早く帰ろう」
「それもそうだな。おいレン。何変な顔してるんだよ。さっさと帰るぞ」
「ハルトのせいなのに...」
その言葉に首をかしげるハルト。彼は全くもって覚えがなかった。
「…」
「もしかしてミサ、君は僕のことを心配してくれるのかい?」
じっと見つめてくるミサをレンは期待に満ちた眼差しで見上げた。
対するミサは…
「え、ないない。誰があんたなんかの心配するの」
バッサリと切り捨てた。哀れレン。
「ううー。そ、そこまで言わなくてもいいじゃん…」
「なんでもいいけど早く帰ろうぜ!腹減ったー」
レンの心情なぞいざ知らず、三人を置いてさっさとかけて言ったハルト。これにはカナたちも慌ててついていく。
「あ、ちょっとハルト、待ってよー!」
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