第22話
実力派美人配信者として人気のある鳳火憐は普段ソロで配信をしていたが、今日は事務所の後輩を連れて渋谷ダンジョンの中層に解説及び訓練として訪れていた。
「カレンの華麗なる配信始まるよ〜♪」
“はじまった〜”
“今日も楽しみ”
“カレンちゃ〜〜ん”
「うんうんみんな今日も元気そうだね♪
早速だけど今日は後輩ちゃんを連れてダンジョンの中層に来てま〜す」
「龍美です。よろしくお願いします」
「たつみんかたいよ〜?リラックスしよ〜?」
「いや…え…はい…がんばります」
「ここは中層だけど、オークとゴブリンしか出ないんだからたつみんの実力なら問題ないよ〜」
「はい…カレン先輩、中層に連れて来ていただきありがとうございます」
「たつみんなら問題ないから許可が出たんだよ〜?初めての中層で緊張してるんだろうけど、フォローするから安心してね♪」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ慎重に行こっか♪」
「了解です」
最初は緊張していた龍美だが、火憐の解説付きの戦いを見た上で戦闘をこなす内に、緊張もほぐれて問題なくソロで、ゴブリンの集団やオークを狩り始めるのだった。
「おぉ〜さっすがたつみん!順調だね♪」
「カレン先輩の指導のおかげです」
「いやいや♪たつみんの剣術と水魔法は綺麗だよ?しっかりと訓練しているのがわかるよ♪」
「ありがとうございます」
「うんうんやっぱりたつみんは良い子だね〜♪」
火憐と龍美がじゃれていると通路の奥に、青い雷光をともなう黒いモヤモヤが発生し、空気が重く感じるのだった。
「せせ先輩…あれはもしかして…」
「うん…イレギュラーかも…」
「急いで逃げないと…」
「でも出口はあっちなんだよね…」
“イレギュラー!?”
“ちょ…誰か救援を”
“いやすぐには行けねーだろ”
火憐達がどうするか迷っていると黒いモヤモヤから黒い体に赤い目のオーガがあらわれ咆哮をあげるのだった。
「黒いオーガ…変異種?それとも強化種?どちらにせよ討伐は難しいかな…?」
「ひぃ…せっ先輩どうすれば…?」
「逃げたいとこだけど…階層を降りるには遠い上に、ゴブリンとオークが連携してくるから厳しいし…階層を登るにはあのオーガを抜かないとだけど登り階段が近いんだよね…」
「せんぱぃ…下の階層に行くにも魔物がリポップしてると思いますよぉ…」
「そうなのよね…抜かないとだし逃げて挟み撃ちにされたら終わりよね…
覚悟を決めてあのオーガをどうにかしないとだね…」
「そんなことできるんですかぁ…?」
「しないといけないのよ…龍美ちゃん、今から私が足止めして隙を作るから、オーガを避けて上の階層に行って救援呼んでくれる?」
「せんぱぃ…それって…」
「大丈夫!龍美ちゃんが救援を連れてくるまでちゃんと足止めしておくからね!」
「でもぉ…」
「お願い…それが一番生存確率が高いのよ」
「うぅ…分かりました…すぐに救援を連れて来ますからね!無理しないでくださいね!」
「お願いね、じゃあヘイトを稼がないとね!紅蓮双刃!」
火憐は双剣に紅蓮の炎を纏わせてオーガへと切りかかり、龍美が上の階へ逃げられるようにオーガの気を引気つけるのだった。
「グォ…ガァァァ!!!」
「今だ…先輩すぐに救援を呼んできます」
龍美はオーガが火憐へと目標を定めたことを確認し、オーガのいる通路を駆け抜けて上層へと向かうのだった。
「こっちよ!!あなたの相手は私がするわ!」
「ガァァァァァ!」
「あとはどれだけ時間稼ぎが出来るかだけど…皮膚が硬くて切っても傷がつかないのよね…しかも攻撃も速さもあるなんてやっかいね…」
火憐はオーガの攻撃をなんとか避けながら攻撃をするが、オーガの体には傷すらつけられないでいた。
それどころか徐々に回避が間に合わず、火憐には傷が少しづつ増えていくのだった。
「くっ…遊ばれているわね…このままじゃ傷ひとつつけられないで終わるわね…
仕方ない…魔力が持つかわからないけど…鳳凰紅蓮斬!」
火憐は魔力を練り上げて双剣へと流し、その場で剣をふると紅蓮の炎を纏った鳥を飛ばすのだった。
黒いオーガに火憐の飛ばした火の鳥が命中し、オーガを中心に爆発が起きてオーガが見えなくなるのだった。
「これで少しでも傷がつけられていると良いんだけど…」
「グォォォォ!!!」
オーガの咆哮で煙が流されるとそこには無傷のオーガが立っているのだった。
「さすがに無傷はショックを受けるわね…」
「グァ!」
「えっ…きゃっ…」
オーガの姿がブレたと思ったら火憐の目の前にあらわれて、火憐はお腹にパンチを受けて吹っ飛ばされていた。
「がはっ…差がありすぎよ…
龍美ちゃんは逃げれたかな…」
火憐はオーガの一撃ですでに意識が朦朧とし始め龍美がちゃんと逃げられたか心配するのだった。
一方龍美はダンジョン入り口へと向かいながら探索者を探すも、元々平日の午前中の為人が少ない上に、お昼前である為ダンジョンから探索者が戻ってしまって見つけられないのであった。
「うぅ…カレンせんぱぃ…を助けてよぉ…なんで探索者がいなんですかぁ…」
龍美は泣きながらダンジョン入り口へと向かうも探索者がいなかった為、探索者組合の新宿支部へと駆け込み叫ぶのであった。
「カレン先輩を助けてください!!!」
「あなたが龍美さんですね?」
「はい…カレン先輩をすぐに助けに行ってください!!!」
「カレンさんなら大丈夫かと…オーガは討伐されました」
「ほぇ?」
龍美は言われたことが一瞬理解できなかったが、受付嬢に話を聞くと謎の探索者があらわれてオーガを討伐し、カレンに回復魔法を使用したあと姿をくらましたが、火憐は配信しながら帰還中であることを説明された。
「あぁ…カレン先輩助かったんですね。良かったぁ…」
龍美は気が抜けたのかその場で座り込み動けなくなるのだった。
「あら、たつみん大丈夫〜?」
「あっ先輩良かったですぅ」
龍美は泣きながらカレンへと抱きつくのだった。
「危なかったけど助けが来てくれて無事だよ♪それじゃあみんな心配かけてごめんね〜♪おつカレン♪」
火憐は配信を終わらせると龍美を抱きしめて頭を撫でながら、あれは何者だったのか考えるのであった。
ーーーーーーあとがきーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
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これからもお読みいただけるように頑張ります。
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