透明吸血鬼

@irooni

第1話

登場人物紹介

透明吸血鬼(ジャック・ハミルトン・ドラキュ)(ノスフェラトゥ伯爵)男 30歳

松本稔博士 男34歳 ぼさぼさだが整っている髪型 メガネ ひげはない 鋭い茶色の目

木村亜里沙 女 29歳 長い髪 整った顔つき こいまつげ メガネ

加藤教授 男 36歳 白髪交じり 目の下にクマ くたびれた顔つき

乃木署長 42歳 小太り 七三分け 白髪交じり

ロナルド氏(ロナルド・ダーン) 黄色の髪 明るい顔つき 細く開けられた目

クリストファー(クリストファー・ドラキュ・ハミルトン) 油っこい整った髪型 いつでも真剣で鋭い青い目 

始(プロ)章(ローグ)

ここは、アメリカにあるビバリーヒルズ。この中にあるジョナサン氏の豪邸で、住み込みのコックとして働いているジャック・ドラキュ氏は、豪邸の中、ジョナサン氏が執事と一緒に外出しているときジョナサン氏が趣味で使っている実験室を無断で使用し、怪しげな実験をしていた。薬品の刺激臭、くるくると回っている天秤、無数のガラス瓶。その薄暗い部屋の中で、ドラキュ氏は、つぶやいていた「もうすぐだ。もうすぐで、必ず…」そこに、突如としてドアが開いた。「何をやっているのかね、ここは私の部屋だ。」そして現れたのは、この豪邸の持ち主でドラキュ氏の主人である、ジョナサン氏だった。ジョナサン氏は、ゆっくりと低い声で言った。「前々から怪しいと思っていたが、」彼は続けた。「今回の件ではっきりした。君は私に何かを隠している。もし何をやっているのかもう知られたくなかったら、コックをやめなさい。」そこまで行ったとき、ドラキュ氏は突然「ここから出ていけ!」と叫んだ。ジョナサン氏も言い返した「何を言っている?ここは私の家だ!!」そして、ジョナサン氏がドラキュ氏を部屋の外に出そうと近づいたとき、「うわ!」ジョナサン氏は空中に放り投げられ、地面にたたきつけられた。そこに現れたドラキュ氏はもはやジョナサン氏が知っている温厚な中年のコックではなかった。目を吊り上げ、銃のような不格好のものを持って、ジョナサン氏に突き付けていた。ジョナサン氏が恐怖におびえて震えながら床に倒れていると、ドラキュ氏はそのかつての主人に向け、銃のようなもののスイッチを入れ、引き金を引いた。ものすごい音と光がし、ドラキュ氏がつむっていた目を開けると、そこには何もなかった。ドラキュ氏はその異様な光景に慣れていたようで、空気中にある何かを持ち上げると、窓から、大きな湖に投げ捨てた。その後、彼は銃のようなものを自分にも向けると、引き金を引いた。

第1章 奇怪な客

真冬の2月、しかも夜に、その奇怪な客は、北海道のオホーツク地方にある雪町村に現れた。

真冬で、旅人(ほとんどいないが)がここを通る時も少しでも温かい昼に通るというのに、その男はほぼ真夜中、村で一番繫盛して、1日中営業している酒屋兼宿屋である、「ライオンの頭」亭でもお客がほぼ帰ってしまう時間帯に、宿屋をとるという物好きは、その客以外にいなかった。そろそろ寝る支度をしようとしていた「ライオンの頭」亭の亭主とその夫人である田中夫妻は、突如ドアが開いて、寒い風が入ってきたときは、夫妻も目を丸くしたが、そこに現れた客が、黒いマジシャンがかぶるようなシルクハットに、黒くて、目だけがぎょろりと出ている顔で、どの模様もないシンプルな黒コートに、黒いマントをはおり、黒いズボンをはき、黒いブーツを履いているという、全身黒ずくめで、まるで皮膚を出さない服装の謎の客が現れたときは、さらに目を丸くした。だがそこは商売。どんな客も丁寧に扱うという信念を30年守り続けてきた夫妻は、客が口を開くのを待った。「暖房付きの暖かい部屋を頼む!」客は叫んだ。「予定が狂ってしまってね、もう日本一寒い村の舗装されていない夜道を歩くのは嫌だ!」そう言った後、客はさっきとは真逆の、ものすごく低く、小さな声で、「こんな夜更けにお邪魔してすまないが、食事を持ってきてもらえるかね。」田中夫人は、「かしこまりました。では、部屋に案内します。よく温まっていますよ。こちらがカギです。荷物をお運びしましょうか?」と言い、返事も待たずに、ほとんどの客に感謝されている、荷物運びを行おうとしたのだが、その瞬間、「荷物を持つな!」またもや怒鳴り声。田中夫人は謝り、部屋の案内をしようと思ったのだが、客は、「すまない。私は大事なことになると大声を上げる癖がある。驚かしてすまないが、わきまえてくれ。後、今は眠くてたまらないので、こまごました説明と、料金の支払いは後にしてくれんかね、そう、明日の朝でどうだろう。」田中夫人は、「よろしいですよ、どうかごゆっくりお休みくださいませ。」と言い、客は、そのまま、どすどすと足音を立て、部屋がある2階へと上がっていった。しかし、亭主の田中氏は、「おい、あの客、なんだか怪しくないか?顔もろくに見せないし。名前だって教えない。おい、あの客のところに行って、名前を聞いて来い。」夫人は、「いやだよ、もし名前を聞かれたことに腹を立てて、せっかくあんまりないお金を払ってくれる客が出て行っちまったら、あんまりだよ。あなたはあの客のことなんか気にしないで、決められた仕事をすればいいよ。」と言い、寝室に入っていった。田中氏はしぶしぶお金の入った箱を隠し、眠りについたが、謎の客がもし泥棒でも働いたらと考えると、気が気でなく、まったく眠れなかった。一方、田中夫人は、夫の前では強いことを言ったものの、謎の客のことがいくらか気になっていたため、それを気にしすぎたのが原因なのか、その夜、謎の客のような真っ黒な怪物たちが、自分を追いかけてくる夢を見て幾度も飛び起きた。夫人は怖くて、たまらなかったが、彼女は常識のある女だったので、気にしながらも眠りについたのだった。

第2章 田中夫妻の感想

翌日、田中氏と田中夫人は、2階の客室から響き渡る大きな音で目が覚めた。昨日から客の部屋で音が響くたびにぴくりと聞き耳を立てていた田中氏は布団から眠いのも忘れて飛び起きると、2階の部屋へ駆けあがった。だが、客がカギをドアにかけていたため、鍵穴からのぞくしかなかった。だが、田中氏は部屋を一目見るなりあっと叫ぶと、田中夫人を呼びに行った。なぜそんなに田中氏が慌てたのかというと、部屋の中の様子が見違えるほど変わっていたからだった。部屋にあるすべての机は強引に元の位置からはぎとられ、部屋の真ん中に集結して、まるで一つの巨大な机のようになっていた。おまけに、洗面所や居間などの鏡という鏡は外され、すべて裏返しにされ、鏡の意味をなさなくなっていた。田中氏は一連の部屋の様子を見ると、階段を駆け下り、1階の寝室にいる田中夫人をたたき起こし、半ば寝ている状態の夫人を2回に連れて行き、田中夫人を完全に起こした後で、部屋の中の状況を説明し、田中夫人が全く信じていないとわかると、鍵穴を通して部屋をのぞかせた。その光景を見た田中夫人の目は一気に覚め、ドアをガンガンとノックして、「ご朝食をこれからお持ちしましょうか?」となるべく平静を装った声で叫んだ。しばらくして、「か、かまわんよ。」と言い、「早く持ってきてくれ」といった。田中夫人は、朝食を作り、客室に行きドアをノックしたが、客が一向にかぎを開けてくれる様子がないので、「開けますよ!」と大声で言い、田中夫人が持っている合いかぎでドアを開けた。その途端、田中夫人は目を丸くした。まさしく田中氏が言っている通り、テーブルはすべて部屋の真ん中に集められ、その上には、客が持ってきたトランクの中に入っていたガラス瓶や、小さな薬品瓶などがたくさん並べられていた。客は田中夫人を見つけると、「私の部屋のカギをおかみが持っているのは構わないが、部屋に入るときはノックをしてくれ。」といった。「しましたけど」田中夫人は言った。しかし客は、「したかもしれん。だが、この実験は命にかかわる。私は誰にも邪魔されたくない。」と言い、「朝食を置いて早く出て行ってくれないか。」と言い、女将が早々と外に出ると、がたんとドアを閉めて、鍵をこちこちとかける音がした。「ふん!何なのよ!あの態度!貴重なお金を払ってくれる客だとはいえ、失礼しちゃうわ!」女将はそう吐き捨てると、階段を下っていった。あんまり興奮したせいで、仕事を田中夫人の望むとおりにやらない田中氏に小言を言うのも忘れてしまっていた。と、その時、「ライオンの頭」亭の常連客である沢田康生氏が店に入ってきた。田中夫人はさっきとはうってかわって愛想よくなり、沢田氏と雑談を始めたのだが、その途中、2階の客室から、ガシャンガシャンといううるさい音が聞こえてきた。

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