辺境領に追いやられたので好き勝手にやるよ

@katuniro

第1話ラストニア辺境伯



俺は、1枚の紙切れをマジマジと見てた。



-   -   -   -   -



アルト・ラストニア殿


     任命書


この度、あたなはラストニア辺境領のラストニア辺境伯へと任命します。

任期は、一生涯とする。



           ラーバル王国

           ラーバル5世


-   -   -   -   -


                    

ああ、なんて素っ気無い任命書だ。

王位継承順位7位の俺が、継承資格を剥奪されたよ。

家名も剥奪だよ。

明日が15歳の誕生日なのに・・・


1週間前に仮の鑑定儀式を行なわれた。

結果は、トリプルの恩恵だった。


なのに、その日に任命書を手渡された。

トリプルの内容は、カスな恩恵で有名なものだったよ。


無魔法 

攻撃魔法で最低の魔法



錬金術 

傷薬、解毒薬の製作。

生産職でも低い地位の職業。

それは、癒しの教会の存在が大きい。

傷、病気、毒などは、教会に行って治してもらうのが普通。


銅から金を少量取り出すことも出来る。

しかし、国が管理した錬金術士しか許されてない。

もし銅から金を取り出した場合は、死刑。



鑑定

すでに各領には、鑑定士を専属で継承する一族が仕えている。

なので必要以上の鑑定士を嫌っている。

平民を鑑定することも暗黙ルールで禁じられている。

貴族が平民に力を持たせたくないのが本音だ。



そんなカスの恩恵を15歳で目覚める俺なんか、国が認めるハズもない。

王家の恥らしい。


俺には、後見人の貴族もいない。

嫌、出来なかったが正しい。

俺を生んだ母は、産後が悪かったようで死んだ。

それが原因で貴族が見放した。


母親が居ない立場は、最悪。



貴族や国民に知れる前に辺境領へ追いやった。

ラストニア辺境伯って名だけ立派だが、領地が開発が進んでない役立たずの土地だよ。


俺も文句でも言いたい。

しかし、文句でもいおうものなら殺されるのがオチだ。

素直に従うしかない。




ラーバル王国の直轄地の辺境領。

辺境領の代官も1年の任期で交代する。


誰もが嫌がる土地だ。


騎士の準男爵に領主した事があったらしい。

辺境領に来て3日目に王都へ帰った。

そして嘆願して領主を解除した逸話があるほどだ。



それには理由があった。

ラストニア周辺領の北は、モンスターが棲む森が広大で未開の土地だ。

そんなモンスターの進行を止めるのが任務だ。


戦うのでなく、モンスターが嫌う薬を城壁に塗るのが仕事らしい。

それもにおいがくさい。




そんな街へ到着。


馬車から降りた俺に駆けよる人物が・・・


「これは大変な長旅で御苦労様です。わたくしが代官のベントです。これが鍵になります」


え!代官のベントは、馬車に乗って出て行ったよ。

何台の荷馬車と騎馬を引き連れて・・・

引継ぎもなしだ。



そんな俺へ駆け寄るじいさんが深々と御辞儀をする。


「わたしが代行係りのソンと申します。閣下の御住まいに御案内をしますのでこちらへどうぞ・・・それと御連れの方々には、あの宿屋で御泊まりください。先程の方々の御住まいを清掃してから引継ぎをしたいと思っております」



「皆は、あの宿屋で休むように」


案内されるままついて行く。

俺の後ろには、執事とメイド2名がついて来ていた。

3人は、平民あがりで俺の幼い時から従事している。


そにに騎士達も平民で家族を連れて来ていた。


王都では、平民上がりの騎士は実力があっても出世の見込みがない。

それがラーバル王国でもあった。



あ、何か鐘を鳴らす音が響くのに気づく。


「あれは、なんだ」


「急いでください。風向きが変わったようです。城壁のにおいが流れるのが早いようです」


あ、何か臭いだす。

どんどん臭いが激しくなる。

もうせる。


屋敷に駆け込んでドアが閉ざされる。


「もう、ここまで来れば安心です。空気発生魔具で臭いの進入が軽減されます」


「城壁の臭いって、こんなにくさいのか」


「今日はマシな方です。3日後には、薬塗りをする日になっております。なので塗った日の臭いは凄いとしか・・・・・・」


ああ、だから誰でも嫌う領地なのか、そんな領地によくも追いやってくれたな。




食欲がなく夕食は、食べれなかった。

それに、不味いのだ。

王都育ちで贅沢もしてない俺でも、不味いと思う。

これが、ここの味なんだ。



風呂も外にあるので俺は出ない。


部屋には、俺専用の空気発生魔具があって助かったよ。

ここに勤めた代官の誰かが買ったのだろう。


使用人も慣れている。

1階の空気発生魔具で我慢が出来るらしい。



それでも微かに臭って寝ることも出来ない。

そんなモンモンと時間が経過。


あ、魔道時計が鳴った。


午前0時だ。


その瞬間に、俺は目覚めた。

3つの知識が脳の中を駆け巡った。


俺は、部屋の窓からドアや天井まで鑑定しまくった。

微かなスキがあっちこっちにあるんだ。



なので3つの能力を使ってスキ間をなくす。

鑑定でスキを特定して無魔法と錬金術を融合させながら、スキ間なくすなんて簡単だった。

俺もビックリだ。


窓のくもったガラスも透明なガラスに変えながらスキ間をなくす。


高い天井でも3つを使って直すなんて楽勝だよ。


ああ、これでぐっすりと寝れる・・・・・・





ドアが「トントン」と叩かれて眠い目をこすりながら起きた。


「誰だ」


「ポールで御座います。朝早くから申し訳ありません。緊急なお知らせです」


「何が起きた」


「森からモンスターが来ていると兵からの連絡です」


やっと気がついた。

鐘が激しく鳴り続けている。

スキを無くして防音効果が上がったようだ。


手伝ってもらいながら服を着替える。



屋敷のドアを開けたとたんに臭いが。


「強い風がこっちに吹き続けたのが原因です。こんな事は初めてです」


宿屋に泊まっていた兵たちも出てきた。


「閣下、遅れて申し訳ありません」


あ、タオルで口と鼻をふさいでいた。


俺なんか3つを使って、口周りの臭いを浄化。

なので無臭だ。



ここの兵も城壁の方へ走っている。


「来て間もないのに悪いが行くぞ」


「仰せのままに」


ここが城壁か・・・・・・その階段を駆け上がる。

15メートル高さの城壁だった。


そこから見える森が揺れている。

まだまだ距離があるが油断は出来ない。


ここは、谷の間に建てた城壁だった。

壁は1キロもあった。

凄い努力で建てたのがうかがえる。




「森からモンスターが出てきたぞ!!」


「カタパルトの準備はいいか!」


「いつでも発射出来るぞ」


横を見ると大型の弩に矢を設置する最中だった。

どう見ても撃てる距離でない。



俺は、モンスターに人差し指を向けた。


指先に淡い光が集まりだす。

距離と威力を考えて発射。


目にもとまらないスピードで出てきたモンスターに命中。

「ドンッ」と衝撃波がここまで響く。


俺の魔力量は、半端ない量だった。

それに錬金術とあいまって、高い攻撃力まで爆上げ


兵から驚きと歓声が上がった。


そんな時だ。


下から「城門開けるぞ!!」と声が・・・


「何をする気だ」


「モンスターよけの薬を塗るためです」


「ちょっと待て!俺が行くから」


「え!・・・・・・」



門の前の荷馬車は、馬が興奮状態だ。

やっぱモンスターに対しての危険を感じるらしい。


「これでは門の外に出ても馬が言うこと聞かないぞ。荷馬車から馬を外せ」


「しかし・・・モンスターが・・・」


「俺の命令を聞けないのか」


シブシブ、馬を外す兵士たち。


門も開いたので、無魔法を使って荷馬車を牽引して門を出る。


そして無魔法を放ち続ける。

モンスターも倒す。



モンスターと城壁の中間点まで来た。

荷馬車の樽を無魔法で開ける。


ああ、ドロドロの黄土色の液体だ。


鑑定をするとピピピとひらめいた。


人間が臭いと思う成分は、モンスターが嫌がる臭いでなかった。

なので無魔法で液を空中に浮かべて錬金術で成分を分離する。

これが出来るのも鑑定のおかげだ。

3つ揃ったら何でも出来そうで、めちゃ面白い。



6つあった樽にモンスターが嫌う成分を均等に注ぎ込む。

そして無魔法で樽を空中に浮かせて、谷に適当に置いたよ。

これで風向きが変わっても、樽と城壁の間には匂いも残る。

城壁の危険がなくなるだろう。


あ、残った成分をどうしよう。

そう思った瞬間に解決策が思いついた。

人間が嫌う臭い成分は、浄化してキラキラと消滅。


そして無魔法を使って風を起こす。

なんとなく出来そうな気がしたのでやってみた。


ああ、風が森に向かってる。

あんなにいたモンスターが一斉に逃げ出す。


ああ、城壁の方から勝どきが「エイエイ、オー!エイエイ、オー!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る