NO.3 チャンス無き者
チャンス無き者
私は葉になんかなりたくなかった
私の寿命はわずか半年しかない
けれど病んだ私は
その半年すら
ここに留まることはできないだろう
他の葉が
日に日にその緑色を増していく中で
私は日に日に黄色く変色していく
一度だけでいい
誰か私にチャンスをくれないか?
そうさ 病葉なんてなりたくなかった
私は運がなかった
病葉になるやつは いくらでもいたはずだ
それなのに
なぜ 私がなったのだろうか
私は樹になり
いつまでも大地に立ちつくしていたかった
散っていくしかない葉になんか
なりたくなかった
まして 病葉になんて…
宇宙はゆうるりとした
巨大な流れだという
そのわずかな動きにも満たない時間であったとしても
葉は茂り 煌めく時間を持っている
けれど私は
そのたった一瞬の たった一度の
チャンスすら与えられなかった
病葉……
老木
私は樹になんかなりたくなかった
何百年 この地に立ちつくしているのか
忘れてしまった
一度だけでいい
誰か私にチャンスをくれないか?
そうさ 樹になんてなりたくなかった
一夜の からからに乾いた強風でいい
私は自らの体をこすりあわせて
燃やしてしまえる
そういうチャンスはあったんだ
そうやって死んでいけたやつもいたんだ
私は樹になんてなりたくなかった
やがて散る花か葉で良かったのに
なぜ私は 彼らを振り落とす「樹」なのだろう
宇宙はゆうるりとした巨大な流れだという
私の体内にも
ゆうるりと時間が流れていく
その長い時間の中で
私は何度チャンスを逸しただろうか
私は怖い
もうチャンスは訪れず
このままここに 立ちつくし続けるのだろうか
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