第3話 点の向こう側
ミンちゃんの日々は、隣室のサトミさんのピアノのメロディと共に過ぎていく。音楽が彼女の創作に新しいリズムをもたらし、点を打つ行為は以前にも増して深い意味を持ち始めていた。この単純な行為が、ミンちゃんにとってただの技術を超えたものになりつつあることに、彼女自身が徐々に気づき始める。
ある静かな午後、ミンちゃんはいつものように紙の中央に点を打った。しかし、今回は何かが違った。点を打つ瞬間、彼女は自分が紙の上だけでなく、時間と空間、さらには自我の境界を超えて何かと一体化しているような感覚を覚えた。それは、点という一次元の存在を通じて、宇宙の広がりとその中の自分の位置を感じ取るような体験だった。
この新しい感覚に導かれ、ミンちゃんは点を打つ行為をさらに深く探求することを決意する。彼女は、点がただの形ではなく、自己と宇宙との対話の手段であることを実感し始める。それぞれの点が、彼女自身の存在と宇宙との関係を探るキーであることに気づく。
ミンちゃんは、点を打つたびに異なる感情や思考が湧き上がることに注目する。喜び、悲しみ、疑問、確信…。これらの感情はすべて、点という一次元の形に込められ、無限の宇宙へと拡がっていく。彼女は、自分の内面だけでなく、外の世界とも対話しているような感覚を深く味わう。
この探求の過程で、ミンちゃんはサトミさんともっと頻繁に話すようになる。サトミさんはミンちゃんの感じていることに共感し、「アートは私たちを通じて、見えない何かと対話する方法よ。あなたの点は、その対話の一部なのね」と語る。
ミンちゃんは、自分の創作活動が自己表現の方法であると同時に、より大きな何かへの接続点でもあることを理解する。点を打つことは彼女にとって、もはや単なる習慣や技術を超え、生き方そのものになっていた。
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