第2話 隣人のメロディ

隣室から聞こえるピアノの音は、日が経つにつれてミンちゃんの日常の一部となっていった。初めは、彼女はその音が自分の集中を乱すものと感じていた。しかし、やがてその音楽が彼女の創作に新たな次元をもたらしていることに気づき始める。


ミンちゃんは、紙の上に点を打つ際にピアノのメロディを意識的に聞き入れるようになる。点を打つ瞬間、音楽のリズムが彼女の心のリズムと調和し、以前にはなかったリズムと流れを紙の上にもたらした。点はもはや単なる点ではなく、音楽の一部、そしてミンちゃん自身の内面を映し出す鏡のようになっていく。


ある日、ミンちゃんは勇気を出して、ピアノの音源である隣室を訪ねる。扉を叩くと、中から温かい声が返ってきた。「どうぞ入って。」部屋の中央でピアノを弾いていたのは、年配の女性だった。彼女の名前はサトミさん。このビルに引っ越してきたばかりの新しい隣人だ。


ミンちゃんは自己紹介をし、ピアノの音楽がどれほど自分の創作活動に影響を与えているかを話す。サトミさんは嬉しそうに笑い、「音楽は私たちをつなぐ素晴らしい手段よ。君の点と私の音楽が、どんな風に調和するか聞いてみたいわ。」と言う。


翌日から、ミンちゃんはサトミさんの演奏に合わせて点を打つ練習を始める。ピアノのメロディが彼女の手を導き、以前よりも自由で表現豊かな点が紙の上に生まれるようになる。点を打つことは、単なる行為から、自分自身と外の世界とをつなぐ橋渡しのようなものに変わった。


この新たな発見はミンちゃんにとって開眼の瞬間だった。点とピアノの音楽が一緒になることで、彼女は自分の内なる世界をより深く探求することができるようになる。隣人との交流は、彼女が自分の創造性をさらに広げ、自己表現の方法を豊かにするきっかけとなった。

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