第79話 国


 さて、水竜をまた出して解体していく人たちを見ている。手際がいいな。

「ケント!水竜の尻尾はあるか?」

「…あるぞ?でもまだ本体の解体が終わってないが?」

「あぁ、持っていてくれ、王国で引き取ることになった」

「ん?じゃあ持って帰るのか?マジックバッグ一個で足りるか?」

「解体して肉は置いていくから大丈夫のはずだ」

「そうか…なぁ、アシュレイ、俺は死の大地を生き返らせるが来る気はないか?」

「ん?それは引き抜きか?」

「ん…まぁそうなるかな?」

「死の大地は誰のものでもない。生き返らせたらお前が王になる」

「…そこまでは考えてないな」

「考えろ!それで俺を呼んでくれるなら俺は国を敵に回しても行ってやる!」

「ハハッ!王か、なんか壮大になって来たな」

「いままで王に会って来たんじゃないか?」

「…そう言えばそうだなぁ」

「それでお前がどの王のところも嫌で死の大地を選んだんだろ?」

「…」

「お前についていく奴は幸せだと思う!だからちゃんと考えろ」

「…あぁ」


 俺はスローライフがしたかっただけなんだが、そうか、新しい土地で1から築くなら王になるのか。考えてなかったな。


 死の大地が本当に蘇ればそこから始まるんだな。


 まずは腕のいい大工が必要だな。


 と色々と考えていると夕方になって水竜を収納にしまう。


 宿に帰りまた1人で考えていると、ネアノアがやって来た。

「ネアやノアはどんなお家に住みたい?」

「えーっとね、みんなが住める大きなお家!」

「わたちは、みんなと一緒がいい!」

「あはは、だよな」

 そうなんだよな。まずはそこからスタートだな。


 魔王国の南側にある広大な死の大地か…

 魔女王には一言言わなければならないな。


 次の日も水竜を出して解体している人を見ながら考える。


 俺なんかが国王になっていいのかとか、国王になったら何をしなきゃいけないとか、頭の中をぐるぐると駆け巡る。


「…はぁ」

「なんだなんだ?ため息なんかついたりして」

 隣に座るのはこの国の国王だ。

「あはは、国王は大変ですか?」

「まぁな、そりゃ大変だよ。もう俺の知らないことばかりだ」

「そりゃ国民一人一人なんか見てられないですよね」

「まぁそれは当たり前だな。俺は生まれた時から国王になるために生まれて来たんだからな」

「…そうですよね」

「だからかな、お前が羨ましい。旅人で今から何にでもなれるお前がな」


「…そうですか」

「俺も旅してみなかったな」

 王様は俺の方をみると、

「仲間を集めていろんなことがしたかった」

 と遠い目をして言う。

「お前は自由だ、好きなことをするといい!」

「…はい」

「悩んだら俺のとこに来い、悩みくらい聞いてやるよ」

「…ハハッ」

「あははは」

 海洋国家の国王とはそれからも喋った。

 どんなところを回って来てどんな仲間に出会ったとかを話すと食いつきが半端なかった。


「国王さまぁー!」

「やべっ!見つかってしまったな。それではな!ケント」

「…あぁ」

「俺の名前はルフェア2世だ、ルフェアでいい」

「分かったよルフェア!」

「おう!じゃぁまたな!」

 ルフェアは呼ばれた方に歩いていく。


 堂々としていてみんなから慕われるのと同じだけ責任を背負っているんだな。


 水竜の解体もだいぶ進んでいる。

 明日には胴体部分は終わるだろう。


「よう」

「…おう」

 アシュレイだ。

「決まったか?」

「まだだな、俺はまだ決められない」

「そうか、そりゃそうだよな」

「…あぁ、そんな簡単に決めれたらバカか傑物だ」

「お前はどっちだ?」

「俺は平凡な男だ」

「嘘だ!」

「なんだよ!平凡だろ!」

「平凡な男が竜を殺せるわけないだろ」

「殺せたんだから仕方ないだろ!」

「ハハッ!俺は傑物だと思うぜ」

「買い被りだ」

 草原に腰を下ろして街を見る。

「良い街だな」

「そおか?周りは海ばかりだぞ?」

「賑わってるだろ!」

「まぁな、それ以外はないがな」

「それだけで十分だろ」

 城下町を見下ろすとアシュレイは頷く。


 よしもう一度旅して死の大地に行ってみよう。答えはそこにあるはずだから。


「よしっ!こんなとこでウジウジ考えててもしょうがないか!」

「どうした突然?」

「動いて決める!」

「そうか、それで良いと思うぞ」

 今日の分であらかた水竜の胴体は解体が終わった。

「後は尻尾と頭だな」

 これは明日やってもらうことにして、王城から宿に帰る。

 

 宿に帰るなりルビーやボン婆に話をする。

「俺は死の大地で1から俺たちの住むところを作っていこうと思う」

「おおぅ!それって国を作るってこと?」

「そうなると言われたな。だが俺の願いはスローライフだ」

「死の大地は本当に作物も育たないぞ?どうするつもりじゃ?」

「古代魔法を使う」

「へぁ?お主古代魔法を?」

「あぁ、魔導書があったから覚えた」

「アッヒャヒャ!こりゃええわい!ライフリジェネレーションが使えるとなると膨大な魔力が必要じゃぞ?」

「そうなのか」

「水竜の魔石を貰ってこい!それで足りるかわからんが、ないよりマシじゃろ」

「分かった!みんなは賛成してくれるか?」

「当たり前だろ?」

「わかってるくせに!」

「やはりわしがもうちっと若ければな」

 ボン婆の言葉は聞かなかったことにする。

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