第63話 王都へ
野営の準備をしていると領主が騎士を連れてやってくる。
「どれ、庶民は何を食べるのか気になってな?」
「…領主は自分のとこで美味いもの食べたほうがいいんじゃ無いか?」
「そんなこと言うなよ。これでも庶民派なんだぞ?」
「自分で言うかね?」
「あっはっは!我はワニの獣人だから何でも食うぞ!肉がいいがな!」
「…はぁ、クオンこれ今日の肉ね」
「それ使うの?まぁいいけどさ」
「おっ!何の肉だ?」
「土竜の肉」
「な、なに!竜を食うのか?は、初めてだぞ!」
時間のある時に料理が得意なクオンやセイランがしてくれる。
そのための肉もちゃんと取ってあるのだ。
「酒は?」
「なぬ?あるのか?」
「あぁ、ボン婆?」
「えぇい!まだあるぞ!わしの秘蔵のミード酒が!」
「ミード酒か!美味いよな!」
「ふっふっ!このミード酒はブンブンビーのミード酒じゃ!」
「なぬ!それは飲まないといけないな!」
と、領主のクアラドルは肉もしこたま食って酒も飲んで眠いと言って寝に行った。
(何て勝手なやつだ)
何とも勝手な領主で馬車もこっちに乗り換え、ボン婆と一緒になって歌って踊っている。
(周りの騎士が困惑しているだろ)
だが街が近づくと、真面目なフリして入っていき他の領主と面会しているそうだ。
宿で夕食を食べていると真面目な雰囲気で隣に座る。
「辺境伯は捕まったよ」
「…そうか」
「まぁ、辺境伯家は別の領主に代わるのは間違いないがどのような刑になるかは分からぬな」
「苦しんで欲しいもんだ」
「そうか?潔く死んだ方がいいのでは?」
「俺もそう思っていたが、苦しんでる人を見るとな」
「…そうかもしれんな」
と言って立ち上がり寝ると言って自分の部屋に戻って行った。
まぁ、貴族だし横の繋がりもあっただろうからな。
次の日は朝から馬車に乗って王都に向かっている。
なかなかの滑り出しだが途中で大岩が道を塞いで通行止めになっていた。
「…俺?」
「お前以外誰がおるのじゃ」
ボン婆に言われて前に出るとブラックホールを使う。
「な、なん、お前は魔法まで出来るのか?」
「…見ての通り」
「はぁ、よく人国が国外に出るのを許したな」
「…旅人だからな」
「お前1人で国が傾く!その辺わかって力を使え!」
「…まぁ」
「はぁ、先を急ぐぞ」
納得はいかないが馬車に乗ると道を走り出す。
「私はどんなことがあってもケント様の味方ですからね!」
「あぁ、ありがとう」
リシェルはよく気がきく子だ。
(獣人国は慌ただしいな。住むなら今のところ魔王国か)
と考えながら空を見ている。
後ろからは俺の真似をしているネアノアがいるが気にしない。
「…ブラックホール」
「うわぁぁぁ」
「アヒャヒャヒャ」
…気にしない。
また野営になり、ご馳走になりにくるクアラドル。
「今日は簡単なものだぞ?」
「それでいいのだ!毎日竜の肉を食うなんて思ってない」
「ほら、お前の分」
「俺一応領主なんだけどな」
「なら領主らしく自分のとこで飯を食え」
「だって、干し肉ばっかりじゃ飽きるだろ?」
「領主でも変わらないんだな」
「そうさ、だからこっちで食った方がいいもの食える!何たって収納持ちがいるからな!」
「はぁ、まぁな」
「アヒャヒャヒャ、まぁ、飲んで飲んで」
とボン婆に言われるまま火酒を飲んで火を吹きそうになるクアラドル。
「アヒャヒャヒャ!火酒は強かったかのぉ」
「ぬああぁぁぁぁ!暑い!」
「…まぁ、そうなるな」
「ほら!」
「あ、私達にもいいんですか?」
と騎士は嬉しそうだ。
「…食えよ」
「はい!ありがとうございます!」
そりゃ領主がこんなんで干し肉ばっかり齧ってたらストレス溜まるだろ?
「ほら、自分とこで寝ろ!」
「あー…分かった」
とベロンベロンにされて寝るクアラドルは騎士に連れて行かれた。
あんなのばっかだったら平和なのにな。
昨日よりペースダウンした馬車はようやく王都が見える場所まで来た。この分だと二、三日あれば着くだろうな。
野営を繰り返して街には寄らずに駆け抜ける。
ようやく王都ガルバリンだ。
王都に入ると先ずは領主クアラドルが先に王城へ報告に行く。俺は明日の予定だ。
「良い宿ですね」
「これで銀貨30枚なら安いな」
「そ、そんなにするんですか!」
「まあな、たまには良いだろう?」
「たまにはね!贅沢を覚えたらキリがないわよ?」
「…分かってるよ」
「ならよし!」
4人部屋を5部屋借りてネアノアは1人換算だ。
「よし!王都だよ!買い物し隊!出発!」
「「「「おおー」」」」
俺らは宿でゆっくり寛いでいる。
「暇ですね?」
「…そうか?」
「僕たちも外に行きましょうか」
「そうだな!」
「…んじゃ、いくか」
「うっす!いくっすか!」
いつものメンバーで街ブラをして喫茶店に入り軽く食べるとまったりする。
武器防具も今のとこいらないし、あとは服もそうだな。魔法もいらないし、俺にとってはこの賑やかな街並みや獣人達を見るので精一杯だな。
と思ったが王都というだけあっていろんな店があるな。甘いものでも買っていくかとケーキ屋によれば、
(とりあえず全種買っていけば良いだろ)
と買い物も適当だ。
「これ美味いっすよ?」
「んじゃ、人数分買っておこう」
などとついつい買いすぎるが。食い物だけだな。
夕飯どきになるとボン婆が一番早く着いている。酒が飲みたくて仕方ないみたいだ。
「それじゃあ王都にカンパーイ」
「「「「カンパーイ」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます