第30話 ここではない…


「なにあれ?!何であんなのと戦ったのよ!」

「…いや」

「いやじゃないの!心配だから言ってるのよ!もう!」

 とルビーは泣いてしまった。

「…悪かった、ついな」

「もう、やめてよね?あんなのに勝てるケントも凄いけどみんな心配したんだから」

「わかった」

「言ったからね!もうしないって!」

「…あぁ、もうしない」

(皆んなからふぅーと安堵のため息が出るので、俺はやってしまったのだろうな)

 それから泣き止むまでルビーのそばにいてリシェルも泣いていたらしく頭を撫でてやると抱きついてきた。

 ネアとノアも抱きついてきて大変だった。


「領主はバカじゃないの?」

「そうです!射抜いてしまいたいくらいです」

「…やめとけよ?」

「やりませんよ!」

 みんなから罵詈雑言の嵐だ。

「ケントは闇魔法を使ったね?」

「…あぁ、使ったが?」

「闇魔法使いは希少じゃ、だから今後はどうしても危ない時以外は使わんほうがいい」

「なぜ?」

「さぁの?今のケントを見ていたら何となくそう思ってのぅ」

「…分かった」

(そうだな、安易に使いすぎたのかもしれないな)


 2日後、領主はキチンと五万枚の金貨を持って来た。

「俺が悪かった。キチンとこの事は王に知らせた。俺の処遇もそこで決まるだろう」

「…はぁ、別にやめろとは言ってない、俺は売られた喧嘩を買っただけだ」

「それで済ませられる立場じゃないからな。本当にすまなかったな」

「もういいと王に伝えろ。俺は別に怒ってない」

「そうか、俺は別の形でお前に会いたかったよ」

「…そうか」

(はぁ、貴族ってのはめんどくさいものなんだな)


「ケント殿は居られるか?」

「…?アシュレイ?」

「この度はすまなかったな。王からこれを」

 金貨の入った袋を渡された。

「…はぁ、ただの喧嘩だし、終わった事だ。領主は今のままでいいと思うが」

「そうか、それならばそれでいいが、これは王からの詫びだ。そしてランクはSにする」

大事おおごとなのか?」

「そりゃもう酷いもんだったよ、俺が来るまでいるかもわからなかったからな」

(俺は危険人物か何かか?)

「だがいてくれて良かった。俺と一緒に領主に会ってくれないか?」

「…はぁ、いいぞ」


 俺は領主の館にアシュレイと一緒に行く。

 応接室に通されすぐに領主が来る。

「やってくれたな辺境伯よ?」

「あぁ、どんな裁きでも受けよう」

「…なら、このまま街を統治してくれ」

「はぁ、ケント殿がこう言っている。首の皮一枚繋がったな」

「すまなかったな、俺は」

「…いや、俺も悪いからな。だから辞めるなんて言わないでくれよ?」

「…あ、あぁ。分かった。精一杯の努力を誓おう」

(良かった、これで元に戻るな)

「アシュレイもこれでいいか?」

「俺はお前に任せる」

「ならいい」

「それよりあれはどうするつもりだ?」

 と言われて思い出したがギガントワームはどうなってるんだ?

「あれは煮ても焼いても食えぬ。よって皮しか使い道がなくてな解体して皮以外は埋めているところだ」

「そ、そうか」

(あの量の肉か、それは使い道がなければどうしようもないな)

「砂漠に埋めているから別にいいだろう」

「皮は何に使うんだ?」

「あれだけの皮だ。飛空艇の素材に最適だろう」

「おお!それは良いではないか!タダでは起きんな!流石辺境伯」

「さすがに今回は懲りたからな。少しでも国のためと思えばのことだ」

(よかった。あれだけ大きなものだ。飛空艇にはもってこいだな!)


 領主とは和解し、何とか面子も立ちそうである。

(俺も反省だな)


 領主の館から帰ると全員が不安そうにしていたがアシュレイが事情を話したてくれて皆んな喜んでくれた。

「これからどうするんだ?」

「…そうだな。俺はこいつらと暮らせればどこでもいいのだがまだ旅を続けようかと思う」

「そうか、ではここから旅をするという事は国を出るのか?」

「…そうなるのかな?」

「ここから南に行くと帝国だ。今は停戦状態だが帝国は好戦的でな、なかなか簡単に和平ができないのだ」

「…そうか、まぁ旅してみてだな」

「俺は敵にならないで欲しいと思ってる」

「…ん?戦争には参加する気はないぞ?戦争は反対だからな」

「そ、そうか!なら良かった!ケント殿には勝てそうにないからな」

(俺は戦争になろうがどちらの味方をするつもりはないからな)


 それから宿でアシュレイも参加で食事をとる。ライルやキン爺もこっちに来たがっていたらしいが…まぁアシュレイでよかったな。


 キン爺なんてきたら何言われるか。


「…アシュレイは住むとしたらどこがいいと思う?」

「唐突だな?住むとしたらか…王都もいいがやはり南の方だな。辺境伯領もいいと思うぞ?」

「…だよな。でもここじゃないんなよな」

「そうか、どんな暮らしが望みなんだ?」

「スローライフ、ゆっくり時が流れてまったり生活できればいう事ないな」

「そうか、そんなところを探してるんだな」

「そうだな、みんなで暮らせればいいんだ」

「わたしゃ、旅して楽しいぞ?いろんな酒と出会えるからな?あっはっは」

「私もどこへでもついていきます」

 ボン婆もリシェルも旅をする方向かな?

「私はどこでもいいけどここは違うかな?」

「そのようだな」

 ルビーにシンもここではないんだな。

「俺たちはケント様についていくだけです」

 ミイとスィも同じ意見のようで頷いている。

「ケントと一緒」

「ノアもー」

 可愛いチビ2人はそんな事を言ってくれる。

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