第16話 王


「お前が今回の功労者か!名はなんと申す?」

「…ケントです」

「そうか、ケントよ、第三師団と協力してよくやってくれた。宰相!」


「はっ!よって金貨一万枚を報奨金として渡すこととする」

「ありがたき幸せ」

「硬くならずとも良い、バインにジャニ兄弟、そして牢番のガメド、実に見事であった」

「…はい!」

「本当に仕官する気はないか?」

「ありません」

「そうか、残念じゃのう」

 チラッと宰相の方を見ると首を振る宰相。

「そうか、本当に残念じゃ、それではの!ケントよ」

「…は!」

(あぶねー!この王様なんとかしようと宰相に強請ってやがった!)

 城の外に出るとようやく出られたので肩から力が抜けた。

「ケント!」

「お…おう」

「よし!変わりはないわね!さっさとここから出るわよ?」

 背後から馬車がきていた。

 ルビーは走ってきたのだろう。

 馬車に乗り込むと、

「ケントがいない間に宰相が来て仕える気はないか?って聞いてくるのよ?あるわけないっつーの!」

「ハハッ、俺も言われたよ」

「そりゃそうでしょ!本人だからね?私らはおまけよお、ま、け!」


「で?報奨金は?」

「金貨一万枚だった」

「一万枚?!す、すごいわね!」

「んじゃとりあえず疲れたから宿に行こう」

 と王都の中でも高めの宿に泊まることにした。

「凄いわね!お風呂ついてるわよ?」

「こりゃええわい」

「それじゃああとでな」

「「「「「はい」」」」」

 部屋は1人部屋、2人部屋、4人部屋を借りてみんなそれなりに決まったとこに入っていく。

「こらこら、着いてこない」

「「はい」」

(ネアとノアは父親だと勘違いしてないか?)


 ようやく1人になり、今回は危なかったと思う。

(あそこで剣一本で戦ってたら負けてたかもな)

 咄嗟の判断でああしたのだ。


 金貨はもう15,000枚ほど溜まっている。

(多分日本円にしたらもう働かなくても十分なのだろうな)

 などと考えてるうちに眠くなり考えを放棄して眠りにつく。


「…ん?」

 またネアとノアが知らない間に横に寝ていた。コレが殺気ある大人だったら飛び起きているのだろうが。

“コンコン”

「ご飯行くわよ」

「…あぁ」

 ネアとノアを起こしてご飯に向かう。

 さすが高級宿だけあって料理も違うな。

 テーブル席にいっぱいの料理が並べられる。

「それじゃあ王都にカンパーイ」

「「「「「カンパーイ」」」」」

 ボン婆は一気飲みしてるし、リシェルも飲んでいるネアとノアはミルクだがプハッと可愛い音がする。シンとルビーも乾杯しながら喋っている。

 俺も飲んでみるがやはり冷えていたほうが美味いと思い氷魔法で冷やして飲む。

「…ッハ」

 で肉串なんかを食い幸せを感じていると。


「やあやあ皆さんご機嫌いかがかな?」

 黄金の甲冑を纏って登場したのはキン爺だ。

「…久しぶりですね」

「ほんと!また会えて嬉しいわ!」

「いや、ワシもまさかあのバイン盗賊団を討ち取ったのがお主だとは思わなかったぞ」

 キン爺に席を開けると座ってエールを頼んでいる。

「…まあ、そんなこともあったかな」

「あはは、そう言えるとはどこまで強くなるつもりじゃ!」

「…いや、そんなつもりはないが」

「それよりも乾杯じゃ」

「「乾杯」」

「しかし随分大所帯になったもんじゃのう」

 キン爺は見回す。

「そうよ!全部拾ってきたの」

「…拾ってきたは酷いだろ?」

「首突っ込んで、今回のだってそうでしょ?」

(好きで突っ込んでるわけじゃないんだがな)

「まぁ、ケント殿は見捨てられぬ人なのじゃろう。いい男じゃ」

「お!いいこと言うじゃないか!ケントはいい男だからねぇ」

「そうですよ!ケント様はご立派なとても凄いお方です」

(初めてリシェルの酔ってるのを見たな)

 リシェルはそのまま座ってガツガツ食べ始めた。


「…まぁ、今回は第三師団はほぼ壊滅状態からの復活だからより一層ケント殿に恩を感じている」

「…あはは、そんな事「あるぞ!」はぁ」

「あのままだと全員が倒れて第三師団が無くなっていた事じゃろう」

(まぁ、そうなるのか)

 真面目な雰囲気のキン爺。

「ま、その時は第二師団のワシ達の出番じゃけど、勝てるかどうかはわからないだろうな。聞いた話によるとそのまま行く提案もケント殿が指示したと」

「…あの場はそうするほかなかったんですよ。少数で行くには出鼻を挫かないと」

「ふむ、その判断ができるものが少ないと言うのもあるな」

「…ふぅ、キン爺?ここはお疲れの俺たちが楽しく飲むところだぞ?」

「おお!スマなんだ!頭がかたくなってしまってのぅ、あはは、で?お主のこれはどれじゃ?」

「…なんでそこまで飛躍すんだよ?」

「それは私です!ケント様の第一奴隷ですから」

「な!それを言うなら私の方がはるかに昔からケントを知ってるわよ?」

「だめ!ケントは私の」

「それもだめ」

 とガヤガヤと騒がしくなってきた。

「…どこに行く」

「いや、ちょっと野暮用が」

「キン爺?」

 このまま逃すかよ!

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