ロリは人形に入りますか?

光喜

第一章

ep.1 プロローグ

一日3~4話更新で完結まで行く予定です。

初日は投稿のテストがてらパパッと更新していきます。

⸺⸺⸺⸺⸺⸺⸺⸺


 進めど進めど鬱蒼とした森が続く。

 森に入った直後は緊張もあって、退屈している暇はなかった。

 だが、こーも変わり映えがないと。

 ハァ。なんでこんなコトになったんだろうな?

 別に後悔してるワケじゃないが、ボタンの掛け違いが続き、気づいたらこうなってた感じで……もう少しうまく立ち回れなかったのか。

 まぁ、結果論ならどうとでもいえるか。

 右も左も分からない深い森を、僅かな手勢だけで抜けなければならない。

 日本にいた頃であれば、胸が潰れそうになったはず。だが、今の俺にとってはピクニックみたいなもの。ダンジョンのように魔物が出るわけでもなし。むしろ、学校を離れられて清々している。

 あれが正解で、これが間違い。

 そう簡単に割り切れる問題じゃない。


「先輩、しりとりをしましょう」


 唐突にシシィがいった。俺が困惑していると、「先輩からでいいですよ」と。

 暇なのか。暇だよな。

 ふむ。それなら、

 

「ロリ」

「リンゴ」


 シシィは美弥に目配せをする。

 美弥は頬に指を当て考え込む。やがて、なにか思いついたのか、美弥の目が悪戯っぽく光る。


「ゴロ」


 ははあ、そう来たか。捻くれてるなぁ。

 俺は、美弥の意図に気付かないふりでいう。


「語呂が悪いの、語呂な。ロ、ロ、ロ……ロリ。リだぞ、シシィ」

「えぇ……同じ言葉使うの、アリですか? まぁ、いいですけどー。じゃあ、リスで。スですよ、美弥先輩」

「ん、リロ」

「理路整然の理路、か。またロだな……ロリ」


 三度ロリで返すと、シシィがうがーと怒り出す。


「もー、先輩、なんなんですか!?」

「そりゃー、言わずもがなだろ」


 シシィの上から下まで眺める。ロリだ。シシィの頭は俺の胸のあたりにある。身長は百五十センチあるかないか。だが、小柄だからロリだというワケではなく……こー言語化し辛い領域で、ロリだなーという納得がある。


「そもそもですね。わたしがロリなら、美弥先輩だって⸺」

「おう、それ以上はいけない」


 シシィの口を手で塞ぐ。

 美弥もシシィに匹敵するロリなのだが……美弥はロリ扱いされると怒るのだ。俺にしりとりで「ロ」を返したくせに、自分が「ロリ」っていわれるのは断固拒否なんだぜ。

 ここ数日で痛感したが、美弥は結構捻くれている。


「なら、なんで「ロリ」で開始したんですか」


 雉も鳴かずば撃たれまいと、シシィは呆れ顔だ。

 二度目、三度目のロリは、悪乗りした結果だが、最初のロリは違った。

 

「考えてたことがそのまま口に出たんだよ」

「ナニを考えてたらそーなるんですか」


 シシィがジト目で見て来る。

 まぁ、ワケが分からんわな。


「異世界に来てから一月くらいか。色々あったと考えてた」

「そこからどうロリに繋がると」

「まあ、聞け。つーか、結論を急ぐな。暇なんだし、語らせろよ」

「そうですね、はい。正直ネタ切れですし」

「それな。語ろうと思えばいくらでもあるんだろうが……」

「あ、それなら。おじいさんの話、気になります」

「そのうちな」

「先輩は天邪鬼ですねぇ」


 ちっげーよ。まぁ、俺が天邪鬼なのは事実かも知れないが。


「そこまでいうなら、シシィにも語ってもらうぞ。中学時代の話でいいぞ」

「んー、なんかイヤです」

「そうだろ?」


 俺もシシィも。美弥だって。最近知り合ったばかり。話題はいくらでもある。

 でもね、過去を切り売りするなら、真面目に聞いて欲しいんだよ。BGMとして聞き流されるのはちょっと。本当に、さっぱり、なにも起こらなかったとしても、俺たちがいるのは前人未到の森の中なのだ。気もそぞろになってしまうのは仕方がない。

 

「三間坂。話の続き」

「はいはい」


 美弥に促され、俺は話を再開する。

 

「先に断っておくが、後悔してるわけじゃない。お前らにゃパスがあるし、前置きする必要もないか。まあ、思考実験ってのをしてた。あの時こうしてたら、って」

「わたしと出会わなかったらどうなったか、みたいな?」


 あれを出会うと表現していいのか謎だが……シシィと出会ったことで今日がある。

 異世界に来た頃まで遡れば、シシィに出会わないルートもあるが……そこまで変えてしまっては、なんでもありになってしまう。妄想の類だろう。それに、気恥ずかしいが……シシィや美弥と出会わなかった自分に、あまり価値を見出せないのもある。

 はー、どーせ、これもパスで伝わってるんだろーな。

 でも、まー、口にするのも大事か。

 

「シシィと出会うのが大前提だ」

「そうでしょう、そうでしょう」


 シシィは嬉しそうだ。犬っぽい。ぶんぶん振られる尻尾を幻視する。


「というか、当時の俺だとシシィ以外にスキルが通じたとは思えねーし」


 俺は照れ隠しに事実を述べる。

 美弥がポンと掌を拳で打つ。

 

「三間坂のスキルはロリ特効・・・・

「……ロリ特攻ぅ。そうな。間違っちゃない。シシィがロリだから、俺はシシィを助けられた。シシィがロリだから、俺は九死に一生を得た……というか、美弥はそれでいいのか?」

「ん?」

「俺のスキルはロリ特効?」

「ん」

「なら、スキルの術中下にある美弥も、逆説的にロリってコトにならないか」

「んっ!」


 美弥がポカポカと俺を殴って来る。

 痛くはないが……鬱陶しいわー。自分から墓穴掘ったクセに。

 そうなのだ。

 異世界に来て。クラスに目覚め。スキルが使えるようになった。

 しかし、俺のスキルは特殊で……ロリにしか通じない。

 あー、厳密にいえば違う。他にも能力がある。というか、本来はそっちがメイン。

 ただ、ロリ特効というパワーワード。

 もはや、他のことが頭に入って来ない。

 へこむ。語感だけで死ねるぜ。

 

「ご主人様、落ち込まないでください」

「ん、元気出す」


 俺の名は三間坂仁。

 神明高校二年三組。

 クラスは人形使い。

 雑賀シシィ。古知美弥。

 二人の主人である。

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