第20話やったのか、どうなんだ。

俺と紋は固まった。


「ここは15階だ。こんなとこまで登ってくるなんて、たいしたお嬢さんだ。

だが、俺達は遊んでんじゃねえんだ。

なんせ人を拉致ってんだからな。

捕まれば即豚箱行きだ。」


おっさんが銃口を紋の頭に突きつけたまま言う。


「遊びだって?豚箱行きだって?」


紋はうつむきながら言う。


「笑わせんじゃねー!!!」

「きゃあ!!!」

「紋!!」


紋はチカラずくで女を引っ張りベランダから落とそうとする。


「なにが豚箱だ!!

豚箱ならまだいいさ!!生きてるからな!

15階から落ちた事あるか!!落ちたら即死だぜ!!!

あたしはなぁ!遊びで登って来たんじゃねえんだ!!命がけで登ってきたんだ!」


俺らの騒動で住人が通報したのか、パトカーの音が聞こえてきた。


「撃つんなら撃てよ!!その代わり、この女、ここから落とす!!」

「おじさん、助けて!!」

「はるか!!」


おっさんは銃を捨て、土下座した。


「頼む!!はるかを離してくれ!!」

「紋!もうやめろ!!」


紋は鬼の形相から、少し人間に戻りつつあった。


「じゃあ、圓を返して。」

「圓て誰だ。」

「さっきから、そこにいるじゃない!」


はるかと、オッサンは俺を見る。


「智じゃ・・・ないの?」

「あんたが好きなのは藍沢智でしょ。コイツは桜沢圓。あたしの幼馴染。」


はるかは、目に涙を浮かべた。


「そうなの?あたし、智じゃない人と・・・やっちゃったの・・・?」


へ?!


「はい?」


「あんなに感じさせてくれて、体の相性、最高だったのに・・・智もすっっごく気持ちよさそうにしてて、あたし嬉しかったのに・・・」


オイオイ。

言うかな。

今それを。


「はぁ。バカな女。もうすぐ警察くっから、さっさとお縄につきな。行くよ。圓。」


俺と紋は部屋を出た。


「紋・・・」


俺が礼を言おうとすると、紋は俺に抱きついた。


「怖かったんだから。心配したんだから!

圓になにかあったら、どうしようって!

ほんとに怖かったんだから!」


紋は震えていた。

こんなに可愛い紋を見たのは初めてだ。


「ごめん。」


俺は紋を抱きしめた。


「だけどさぁ。」


急に紋の声が低くなる。


「やったの?」

「はい?」

「やったのかって聞いてんの!あたしらが心配して、あんたの事探してた時に、あんたは、あの女とやってたのかって!」

「あ・・・いや・・・」

「ちっ。信じらんないわ。」


紋は怒ってさっさと歩く。


「一回だけだって、なんか、気の迷いっていうか、ほんとゴメン!」


後姿だったけど、紋はたぶん、涙を拭っていた。





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