認知症

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =======

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。

 大文字綾子・・・おさむの母。介護福祉士。ケアマネジャー。

 池上葉子・・・池上病院院長。

 鈴木栄太・・・小学校校長・


 ==============================

 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 ※【認知】とは、「ある事柄をはっきりと認めること」である。

【認知症】とは、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態を言う。即ち、「認知機能低下症」のことである。



 午後6時。小学校校庭。

 大文字綾子は、コンパクトを広げて、身分証を見せた。

 介護職員達は、「ゲ、桜の代紋!!」と叫んだ。

 そのコンパクトには、警察のシンボルマークの桜と地球、そして、鳩が合わさった画が描かれており、「I.N.I」の文字が刻まれていた。

「アイ・エヌ・アイ、International Nursing care Instructor。国際介護指導員のことよ。簡単に言うと、介護警察ね。まだ、世間には『認知』されていないけど。虐待や無謀な行いをした介護施設職員は、法律によって裁かれます。2人以上の証人がいれば逮捕する権限があります。但し、司法権はありませんから、後は警察・検察の仕事。」と、横から久保田あつこ警視正が言った。

「警視正。私が証人になります。確かに、この二人は、ご婦人に暴力を振るい、連れ去ろうとしました。」と、鈴木校長は言った。

「私も証人です。では、連行します。」愛宕警部は、部下の警察官に命じて介護職員達を連行して行った。

 遡ること3時間前。午後3時。小学校のプール。

 みどりは、プールにたたずむ、老婦人をみかけた。

 今日は、プールの授業があったため、フェンスの鍵はかかっていなかった。

 警備員は常駐しているが、見咎められなかったのだろうか?

 みどりは、ベンチに腰掛け、その老婦人と話し込んだ。

 老婦人は、介護施設から逃げ出してきた。

 老婦人は、家庭で虐待された挙げ句、重度の介護度ではないにも関わらず、介護施設に入居させられた。

 徘徊の事実がないにも関わらず、行動は制限だらけだった。通院していた診療所への通院も、「提携している医療施設や薬局以外は認めない」と閉ざされてしまった。

 そして、隙を見て『脱走』した。みどりは、黙って、Linenのトーク画面を開いて、皆に聞かせていた。

 やがて、鈴木校長が現れて、みどりと一緒に老婦人の話を聞いた。

 そこへ、警備員が報せた、介護施設の職員が現れた。

「乱暴はいけませんよ。」と言う鈴木校長を無視し、「脱走したんです。この人は認知症なんです。」

 校庭に止めた介護施設のバンの前で、校長と職員の押し問答が始まった。

 1時間後。パトカーがやってきて、マイクロバスがやって来た。

「いいところへ、お巡りさん。」と、介護施設は、連れ去る理由を言い募った。

 マイクロバスから降りてきた、白衣の女性が、老婦人に尋ねた。

「あなたの息子さんの名前は?生年月日は?」

 老婦人は、すらすらと応えた。

「では、あなたの娘さんの名前は?生年月日は?」

 これにも、女性はすらすらと応えた。

「詳しい事は、かかりつけ医師にも診察して頂きますが、あなた方の言う『認知症』ではありませんね。私は、池上と申します。病院を経営しています。」

 そう言って、池上医師は名刺を出した。

 そして、隣の女性が、バッグから、コンパクトを出して、披露した。

「大文字綾子です。」

 現在。小学校校庭。

 マイクロバスから、男女が降りて来た。

「私達が間違っていました。訪問介護に切り替えます。母さん、帰ろう、『イエ』に。」

 あつこが運転するマイクロバスに、綾子とあつこと老婦人親子は乗り込んで、帰って行った。

「ミラクル9には、呆れるね。よく短時間で用意したね。愛宕警部。この悪戯は、大丈夫なのかな?」

 鈴木校長の言葉に、愛宕警部は「さあ、何のことですかね?」と、惚けた。

 ミラクル9と校長は爆笑した。

 ―完―




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