こころ

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 久保田あつこ・・・健太郎の母。警視正。

 橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。

 高峰圭二・・・元刑事の警備員。

 天童晃・・・元EITO準隊員。武術師範だったが、今は引退して道場を開いている。

 天童桃子・・・天童の妻。元陸自医官。出向していたEITOで天童と再会。50年越しの恋を実らせ、結婚した。現在は、天童邸を改造して診療所を開いている。


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 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午後3時。スーパー・ピテカントロプス。

 店内を走り回る、子供達。そして、ポケットに商品を入れていく。

 健太郎達ミラクル9は、店長の相談を受け、見張っていた。

 犯人の子供達は、店内の防犯カメラの死角をつき、走り回る。

 午前中や繁忙時の方が、店には隙があるように見えるが、実はそうでもない。

 店に寄っては、「お掃除タイム」にしているが、実は「けん制」の為の放送である。

 それを知った上の、堂々とした犯行だ。どのスーパーにも警備員はいるが、いつでも監視出来る訳ではない。

 健太郎達は、2人1組に分かれて監視していた。

 万引きグループが動くと、すぐに健太郎達は、取り押さえ、ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルではない。運動会等で使用するホイッスルだ。

 店長から連絡を受けた警備員達が駆けつけ、やがて警察官達がやって来た。

 警備員達が駆けつけた時、リーダー格の男の子が喚いていた。

「お前ら。警察でもないのに、逮捕した気でいるのか?」

「『私人逮捕』だね。勿論、誰にでも逮捕する権利はあるよ。逃げない様に取り押さえることだからね。君たちは、警察に引き渡す。『公人逮捕』に切り替えだ。お願いいたします。」と、高峰は、いつものように、警察官に子供達を引き渡した。

 手錠はかけないが、引っ立てられていく時のわめきは、大人と同じだ。

「高峰さん。」と店長が申し訳なさそうに言った。

 店長の広報には、老婦人と、天童晃がいた。

 店長室に老婦人を案内するように、高峰は進言した。

 駆けつけた警察官の中に橋爪警部補を見付けた高峰は、そっと耳打ちした。

「了解しました。」「こちらです。」

 午後4時。店長室。

「初犯じゃなかったんですか。」と、天童は驚いた。

 警備員の高峰圭二は、元刑事。橋爪警部補は、本来は生活安全課の刑事だ。

 そして、天童は、EITO引退後、自宅で道場を開き、妻の桃子は、EITO引退後、庭を潰して建てた診療所の院長をしている。

 天童は、健太郎達を促し、自宅に招いた。

 午後5時。天童家。茶の間。

「おやつには遅いが、まあ、いいだろう。」と言って天童は羊羹とお茶を出してくれた。

「子供達は、初犯じゃないし、方々のスーパーで被害が出ている。少年院に行くかもな。私のポーチを取ろうとした婦人は、所謂「病気」なんだ。

「平たく言うと、『正気の時』と『正気でない時』があるの。身元引受人として、家族の方が来られるだろうけどね。店長の説諭、あ、説教で済めばいいけど、初犯でないと、少なくとも『出入り禁止』ね。」

「難しいんですね、須藤先生。」と、おさむが言った。

「そうね。君の蜂に刺された時の処置は医者には出来ても、蜂に刺されたショックまでは医者には分からない。『こころ』に関係する治療は一番難しいの。まあ、ゆっくりして行きなさい。」

 そう言って、須藤院長は診療所の方に向かった。

 健太郎のスマホが鳴動した。

「かあちゃん。」「今、どこ?武勇伝は聞いたわよ。」

「天童先生のところ。」「五時半から道場の生徒さん達が来るわ。お前達も引き揚げなさい。」「はい。」

「ちぇっ!君の心の声は聞こえたよ。」と、天童が言うと、「恐れ入りました。」と、健太郎は深くお辞儀をし、皆が笑った。

 ―完―



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