ちょん掛け
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
宇野由奈・・・悦司の同級生。
愛宕(白藤)みちる・・・悦司の母。丸髷署警部補。EITO東京本部出向。
愛宕寛治・・・悦司の父。丸髷署警部。
白藤峯男・・・みちるの叔父。丸髷署署長。
白藤冬子・・・白藤署長夫人。みちるの叔母。
橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。
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==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※掛け手 ちょん掛け
自分の右(左)足のつま先を相手の右(左)足のかかとに内側から掛けて手前に引き、上体を反らして相手を横か後ろにひねり倒して勝ちます。足を掛ける形が材木の荒削りに使う「手斧(ちょうな)」に似ているところが名前の由来です。
午後1時半。小学校裏の公園。
悦司は、イジメに遭っているという宇野由奈の前に手を広げ、言った。
「嫌がっているのが見えないのか?」
「ナンだ、お前は?白馬の王子気取りか。それとも、彼氏気取りか?」
中学生らしい彼は、悦司より10センチは高い。
「知ってるぞ。相撲チャンピオン。格闘技の選手は、試合以外で相手を傷つけると罪が重くなるって、知ってるか?俺は知ってるぞ。」
悦司は、所謂太っちょではない。だが、子供相撲大会で優勝したことがある。
彼は挑発に乗らない悦司に腹を立て、ポケットからナイフを取りだして、向かって行った。悦司は目をつぶった。彼がぶつかって行く寸前、どこからかブーメランが飛んで来て、ナイフを弾き跳ばして、ブーメランはどこかへ跳んで行った。
そして、彼の体が悦司にぶつかる寸前、目を開け悦司は、『ちょん掛け』をかけた。
彼は、見事に転んだ。
午後3時。丸髷署。生活安全課相談室
一人の女性が、駆け込んで来た。悦司が投げた相手の母親だ。息子を連れてやって来た。愛宕警部と橋爪警部補は、、入って来た白藤署長と交代した。
「息子が暴力を振るわれたんです。」と、罵倒夢乃がやって来た。
白藤署長は黙って、その場でスマホを広げて、動画を見せた。
動画には、罵倒夢乃の息子が、宇野由奈を庇った愛宕悦司にナイフを持って体当たりする様子が映っていた。
「フェイクじゃありませんよ。今、持ったスマホ、投げつけても、バックアップ取ってありますよ、クラウドに。少年法改正したのをご存じですか?オタクのお子さん、中学生ですよね。もう、未成年じゃない。それなりの世罰を覚悟した上で弁護士呼びなさい。」
白藤署長は、ポーカーフェイスで言った。
午後5時。愛宕家。
悦司は、家の前で、皆と別れた。
「ただいまー。」悦司が家に入ると、「お帰りー。」と風呂場で、みちるの声がした。
みちるは、柔道着を洗濯板とたらいで洗濯していた。まるで、昭和初期の光景だ。
みちるは、暫く休職していたが、悦司が3歳の時にEITOに復帰した。
あつこが警視正に昇格したのをキッカケにEITO出向を止め、警視庁に戻った為、EITOの幹部が少なくなった。それで、復帰したのだが、今度はなぎさが結婚・出産の為、アメリカに渡ることになった。
みちるは、伝子の右腕として活躍することになったのだが、時間が少しでも空くと、『主婦』モードになっていた。
「お母さん、ありがとう。」「ん?ああ、洗濯機じゃ上手く落ちないのよー。」と言って、汗と涙を拭った。
そして、悦司を抱きしめ、こう言った。「お帰り。100点満点の息子。よく産まれてくれたわ。よく育ってくれたわ。ありがとう、100点満点の息子。」
「録音の準備をしてから、言ってよ。」2人はお互いに笑った。
みちるの叔母は、垂れ落ちる涙を拭おうともせず、黙って見ていた。
―完―
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