グリコ森永40yearsAfter
クライングフリーマン
グリコ森永事件真相と新中学生襲撃事件
======= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。
大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレ。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
松本悦司・・・東京の天童に同じく、かつて大文字伝子と闘った。EITO大阪支部武術顧問。元大阪府警巡査。
友田知子・・・南部家家政婦。芦屋グループ社員。
幸田仙太郎・・・南部興信所所員。
倉持悦司・・・南部興信所所員。
花菱綾人・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の巡査部長。
横山鞭撻・・・南部興信所所員。元大阪府警の警部補。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
=====================================
= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==
※モスキート音(蚊の羽音)とは「キーン」という17,000 Hz前後のとても高い音のこと。「若者には聞こえるけれど、大人には聞こえない音」と言われる。
午前9時。EITO大阪支部。会議室。
「美智子。何で辞めたいんや。言うてみ。」「一身上の都合です。」
美智子は、堅い表情のままで、大前に応えた。
「芸能人か。有名人か。それ、分からんぞ。総子には、言うたんか。」
「いえ、まだ・・・。」「ほな、ぎんには言うたんやな。」
「いえ、まだ・・・。」「何悩んでるんや。ここはな。警察でも自衛隊でも一般の会社でもない。恋愛や結婚やったら、みんなで祝ってやるぞ。」「おおきに、コマンダー。」
それきり、美智子は黙ってしまった。
「もし、緊急でなかったら、『こぶまん』と決着ついてからにしてくれへんか。パワハラで言うてない。お願いや。東京から、いつ救援要請が来るか分からんのが実情や。どんな事情かは、今すぐ言わんでもええ。頼む。タイミング、待ってくれ。」
大前は、美智子に頭を下げた。
「訓練、行って来ます。」と言って、美智子は会議室を出て行った。
今日の会議は、午後からということになっている。
美智子が出て行ってから、ヘレンがやって来て、言った。
「コマンダー。ウチに任せて貰えませんか。」真っ直ぐ、大前を見たヘレンに大前は、「頼む。ちょっと出掛けて来るわ。紀子。急ぎの連絡が来たら、電話かメールしてくれ。」と言って、出て行った。
「ヘレンちゃん、何か心辺りあるの?」「ううん。でも、ウチら、同じグループやったし、ぎんにも言えへんことやったら、ウチ、聞いてみる。無駄骨かも知れへんけど、ウチも、ここのスタッフやさかい。」
紀子は、ヘレンの言葉に、黙って頷いた。紀子は、総子の幼なじみで、このEITO大阪支部に入った。ヘレンは、元々はレディースの一員だったのだ。ぎんの下で動くメンバーとして、美智子とは関わっていたのだ。
午前10時。司令室。
祐子と真知子が入って来る。
ポツンと座っていた、真知子が紀子の肩を叩いた。
「久しぶりにウチが通信士や。」「どうして?」「コマンダーが電話してきてな。ヘレンが美智子を連れ戻しに行ってる間、無人やから、『ベテラン』のお前が頼りや、って。」
真知子が言った言葉を継いで、祐子が、「ウチもまだ事務員出来るで。」と、真知子の隣に座った。
いずみが後方支援に組み込まれたので、通信の仕事は、殆どヘレンが切り盛りしていた。それだけ人材不足なのだ。
マルチディスプレイに小柳警視正が映った。
「おや。懐かしいメンバーだな。ヘレン君は?あ、大前君は?」
紀子が効かせて言った。「ウチ・・・コマンダーは、何か用事で出掛けました。ヘレンちゃんは体調不良で欠席です。午後から、二美さんが来られます。今日の会議は午後1時の予定でした。
「分かった。昨日、市内各地で、中学生、いや、新中学生を狙った強盗が頻発している。警邏を増やしても限界がある。今分かっていることは、真壁が資料に纏めたから、送付する。会議で検討してくれ。」
「了解しました。」と。真知子が応えた。
正午。二美が早めに出勤した。4人で簡単な昼食を作り、食べた。
食べながら、紀子が午前の出来事を話した。
二美は、真知子と祐子に尋ねた。「あの子、そんな子だっけ?」
「ヘレンちゃんと同じ母子家庭で、イジメにあって、ホワイトに入ったんです。総長、あ、ぎんよりヘレンちゃんの方が、一番知ってると思います。」
「そう。まあ、ヘレンちゃんが任せろって言うなら任せましょう。後で資料を検討しましょう。」と,二美が言うと、「ああ、一美ね、ただの胃もたれだったらしいわ。」
「良かった。」と、紀子が言い、後の2人も異口同音に言った。
午後1時。会議室。
二美が、資料を読んでいる。
「昨日、市内の数カ所で、中学生が強盗にあった。中学生と言っても、先日まで小学校6年生で、春休みが終ると、中学生になる生徒だ。襲われた場所は、レンタルDVD店の裏手。ボーリング場の近く。ゲームセンターあるいはモールから1キロ以内。目撃情報から、大人の男性3人組。どこかのチンピラっぽい服装だったと判明している。同じ時間帯だから、全て同一犯という訳ではない。襲われた生徒達は、ランドセルから解放され、学業からは暇な時間に入り、油断していた。ランドセルには防犯装置が入っているモノが多いが、手荷物らしきポシェットにはゲーム機、クレジットカード、お名前カード、財布、スマホ。複数人で行動しているし、すっかり油断していた。襲った奴らは、妙な銃を持っていて、襲われた生徒達が蹲り、簡単にポシェットを奪われたのを、モールからやって来た婦人が目撃している。そして、新たな有力な証言が出てきた。自転車で現場近くを目撃した小学生が『モスキート音』を聞いたというものだった。推測されるのは、その銃はモスキート音を増幅させ、生徒達は堪らずしゃがみ込み、ポシェットを奪われた、というストーリーだ。府警のサイバーセキュリティ班と科捜研の協力で、今、その銃に対応することを検討している。」
二美が読み終わると、「真知子。襲われた場所の地図は?」と総子はマイクで、司令室の真知子に尋ねた。
「付いてます。今、画面に出します。」マルチディスプレイに地図が出た。
「此花区、東淀川区、東成区、生野区、旭区、平野区、それに西区。この七カ所以外が被害に遭っているということは、次に狙われるのは、この『アンラッキー7』ね。」
「二美ネエ。それは凄すぎるネーミングやん。」と総子が言った。
「つまり、大阪市区コンプリートを狙っているのね。で、クリアしたら、次のダンジョン。」と、ジュンが言った。
「次のダンジョンは、警察にしなくちゃね。紀子。ペンライト幾つある?百均で買ったやつ。」「1ダース。12個です。」「充分よ。科捜研で開発したアプリ、後でみんなダウンロードして。」二美は何故か、どや顔をした。
「じゃ、本格的に作戦会議よ。」と、二美が言った。
午後1時。松本邸。
EITO大阪支部の武術顧問である、松本悦司。
大前と並んで、美智子とヘレンが並んでいる。
「先日、警察の先輩が亡くなりました。この、北美智子君の祖父です。」
「え?松本さん、警察のOBやったんですか?美智子のおじいちゃんも?」
「コマンダー。まずは、これを読んで下さい。」
「松本君。君は、『グリコ・森永事件』を覚えているだろうか?」
【グリコ・森永事件40年】
グリコ・森永事件とは、最後まで残った江崎社長に着せられた“黒のオーバー”の謎“と共に、警察の、いや、大阪府警の『消えない傷』になった事件である。
*グリコ・森永事件
1984(昭和59)年3月18日、江崎グリコ社長の江崎勝久社長(当時42)が3人組の男に自宅から拉致され、身代金10億円と金塊100キロを要求された。江崎社長は3日後に自力で監禁場所から脱出したが、「かい人21面相」を名乗る犯人グループは脅迫を止めず、スーパーなどに青酸入り菓子をばらまき、森永製菓、ハウス食品、丸大食品など大手食品メーカーを翌85年2月まで脅迫し続けた。威信をかけた警察の捜査は実を結ばず、2000(平成12)年2月、全ての事件の時効が成立した。
【犯行終結宣言】
「かい人21面相」を名乗る犯人グループは昭和60年8月12日、在阪新聞社(毎日、朝日、読売、サンケイ)に届いた挑戦状を最後に、動きを止めた。
〈くいもんの 会社 いびるの もお やめや このあと きょおはく するもん にせもんや〉
脅迫をやめる理由について21面相は、滋賀県警前本部長が公舎で焼身自殺したことに触れている。
〈男らしうに 死によった さかいに わしら こおでん やることに した〉
1984年に発生したハウス食品工業脅迫事件のことだった。
{他府県の警察との『縄張り意識』の為、県境で犯人を逃がしてしまった、と、当時のマスコミは騒いだが、取り逃がしたパトカーに乗っていたのは、私と、私の同僚の上司だった警察官だった。事実は、少し違う。あの車には、副総監が乗っていた。後で知ったことだが、現在の副総監の『替え玉』を長く勤めた、副総監の双子の兄弟だった。替え玉副総監は、腹にダイナマイトを括り付けられていた。犯人グループの1人は、『手出し出来るか?』と書いたスケッチブックを窓から出した。犯人は、『県境だった為、縄張りがあるから取り逃した』ということになったのは、上司がその場で、替え玉副総監が殺されるかも知れないと判断したからだ。その車には同乗者と運転手がいた。警察官だった。将来を嘱望された、副本部長に就任されたばかりのキャリアだったから誘拐の条件としては上等だ。車を見失ったんじゃない。偽警察官が誘拐したんだ。身代金の授受は、密かに行われた。本部長は、焼身自殺した。真相は定かではない。私は、依願退職し、警備会社に就職した。家族を守る為に。『狐目の男』は実在した。彼こそがリーダーだった。警備員だった私は伊丹空港で目撃したよ。彼には発見されなかった。何故捕まらなかったか?それは、彼が日本人じゃなかったからだ。もう時効を迎え、あれから40年も経った。完全に風化している。事件をどうにかしたい訳じゃない。君にだけは話しておきたかった。}
手紙には、そう記されていた。
「美智子は、松本さんに渡す前に読んでないんやな。」と、大前が言うと、美智子は、こっくりと頷いた。
「お爺ちゃんは、がんで、親類はみんな見放してた。でも、私は時々、お見舞いに行ってた。それで、こっそり渡されていたの。でも、渡された時から、ずっと気になったの。松本さんは、はさみ入れて開封したけど、封緘してるところ、ずれてるでしょう、コマンダー。一度開封して、もう一度閉じたかもと思って。」
「確かに、蒸気当てたら、そっと開けることは可能やわな。どこに『なおして』たんや?」
「私の部屋。」「ほな、お母さんとちゃうんか。」「部屋に鍵かけてへんから、誰でも入れる。葬式の前後なんか、特に。」「相続争いあるんか?」「うん。遺書無かったから、それが遺書やと思い込んでる人もいる。それと、ストーカーかなんか知らんけど、見張られている気がするの。」
2人の会話に、松本が、「遺書ではないが、重要な文書ですな。あの事件の時、大前さんは?」と大前に言った。
「産まれてなかった、と言いたいが、お菓子買えなかったのを覚えています。」
腕を組んだ大前に、ヘレンは、「コマンダー。美智子は、その手紙の為に悩んでたんやわ。ストーカーか親類かは、はっきりさせた方がええかも。」と言った。
「うん。南部さんに張り込み頼もう。さっき紀子からメールや着信があった。何か事件が起こってるかも知れん。相続、関係してたら、本庄弁護士に頼もう。美智子は、松本さんとこで待機や。ヘレン、戻るぞ。頼みます、松本師範。」
「大前さん、この手紙は、警察には届けないよ。コピーは取っておく。」と、大前が帰り際に松本は言った。
午後2時。EITO大阪支部。
大前とヘレンが帰ると、会議の真っ最中だった。
大前と総子・二美は、情報交換した。
「兄ちゃん、七つの地区に分けるわ。此花区は、祐子、悦子。東淀川区は真知子と今日子、東成区は真美・ぎん、生野区は稽古とあゆみ、旭区はみゆきと真子、平野区はジュンといずみ、西区は私と弥生。」
「ほな、俺と二美と用賀はホバーバイク隊として待機か。そのアプリって役に立ちそうか?」「探し回る訳にも行かないから、それぞれ拠点を指定して、待機。スマホのモスキートサーチャーで反応があったら、付近で新中学生を襲っている人間を見付けて。で、襲っている人間のモスキート音増幅器に向かって、スマホのモスキートキラーを鳴らして、ペンライトをかざして。」と二美が言い、マルチディスプレイの中の一美が、「襲撃事件を平定したら、警察官全員にペンライトを携帯させるわ。つまり、実戦した後なら抑止力になる。サイバーチームによると、アルフィーズを真似たサイトが一時的に現れて、知恵をつけたの。増幅器と言っても、やはりスマホのアプリよ。詰まり、『目には目を』、『デジタルにはアナログを』よ。」と言った。
「おい、そんな諺あったか?」「今、作った。受ける?」「ノーコメントで。」と、思わず大前は返した。
午後5時。此花区。DVDレンタルの熱田屋の近く。
熱田屋で、大量のコミックやDVDを借りて袋で持って来た、新中学生達。路地で立ち塞がる男達3人。1人がスマホを操作して、生徒達にモスキート音を浴びせた。そして、大きなバッグを持って、生徒達のポシェットを回収する・・・積もりが出来なくなった。
EITOエンジェル姿の祐子がスマホを操作して、ペンライトを、モスキート音担当のスマホ男に向けた。しゃがんでいた新中学生達が立ち上がった。
EITOエンジェルズ姿の悦子は、バトルスティックで強奪男達の手首を叩いた。
今度は、生徒たちではなく、強奪男達が屈み込んだ。
スマホ男は逆襲しようと、悦子に向かったが、祐子がドロップキックをした。
午後5時。東淀川区。ボーリング場ちかく。
ここでも、3人組が、新中学生を襲っていた。
EITOエンジェルズ姿の真知子と今日子は、アプリ係と反撃係を分担した。スマホ男が抵抗をしようとしたが、今日子は、股間を蹴り上げた。他の2人はフリーズした。フリーズガンを撃たれた訳でもないのに。
午後5時。東成区。ゲームセンター『おこしやす』近く。
真美と、ぎんは、やはり3人組の男を見付けた。
「なんやあ。チンピラカーいい。」EITOエンジェルズ姿のぎんが言うと、3人は振り返った。
すかさず、EITOエンジェルズ姿の真美は、ペンライトを向けた。
忽ち、新中学生たちは、立ち上がった。
ぎんは、空手で、3人の男をあっけなく倒した。
午後5時。生野区。図書館近く。
「おい、お前ら、ちょっと待てや。」と3人組の男達が立ちはだかった。
「おい、お前ら、ちょっと待てや。」と、後ろから女の声が聞こえて振り返った男達は驚いた。妙なコスプレ女が『2人』だけで邪魔をしに来たからだ。
新中学生達は、しゃがんでいる。すぐにターゲットにされたことを悟った、EITOエンジェルズ姿の稽古はペンライトを向けた。新中学生達は、何事も無かったかのように立った。
「お前、何したんや?」「お前ら、何しに来たんや。」EITOエンジェルズ姿のあゆみは、連続回し蹴りで男達の2人を倒し、残りの1人に拳銃で撃つ真似した。
男達3人は両手を上げた。
午後5時。旭区。DVDレンタルのGEROの近く。
EITOエンジェルズ姿のみゆきと真子は、すぐに見付けた。ターゲットに選んだ奴らが、ポシェットとレンタルした袋を持ったまま、しゃがんでいる。
「どないしたん?自分ら。腹痛いんか?」とみゆきが言うと、「何や、お前ら。EITOエンジェルズのコスプレなんかして。アイドルのライブでも行くんか?」
「いや、お前ら捕まえて、警察に突き出すだけや。気にせんとき。」
「何やと、くらー。」真子はスマホで身構える暇が無かった。みゆきが3人を頭突きで簡単に倒したからである。
「んー。みゆき。打ち合わせとちゃうやん。ウチにも残しといてくれなあ。」
「あ。ごめん。」
午後5時。平野区。ゲームセンター『おくれやす』前。
「変な名前。」「本店が京都らしいで。」「今度、私服で来ようかな?」
EITOエンジェルズ姿のジュンといずみの2人が話していると、ゲームセンターから新遊学生らしき生徒が出てきた。物陰から3人組が出てきた。
彼らが新中学生を襲う直前、ジュンが叫んだ。「あ!ゴキブリや!!」
新中学生達が振り向いた。その内の1人が「EITOエンジェルズ?何で・・・あ、こいつら!!」
叫んだ少年は、素早くスマホで110番をダイヤルした。
少年が説明しようとした時、ジュンは冷静に、「こちらEITOエンジェルズ。いたいけな少年達を『レイプ』しようとした大人を確保しました。逮捕に来て下さい。GPSで位置、わかりますよね?」と言った。3人組は、何も言えなくなった。
いずみは、ケラケラと笑い出した。
午後5時。西区。コミックマーケット会場近く。
会場から出てきた、新中学生を尾行する、男達3人。
路地に入ってきた3人を待っていたのは、エマージェンシーガールズの総子と弥生だった。あっという間に、総子は3人の手首を手刀で動けなくし、凄んだ。
「さあ、胴元に案内して貰おうか?」弥生は、電話を本部にかけた。
午後7時。北区。野田阪神駅近く。オフィスビルにある、半グレの『倒立商会』。
ドアがノックされたかと思うと、ドヤドヤと大阪府警ボウタイ課の刑事や警察官が入って来る。刑事の1人、佐々ヤンこと佐々が黙って、『礼状』を掲げた。
午後7時。北家。
家宅侵入しようとした2人組を、警察官達が取り押さえた。
「所長。終りました。」と、花ヤンこと花菱が電話で報告した。
連行されて行く、2人組を見た、北美智子の母、峰子が叫んだ。「ケンちゃん、りゅうちゃん!どういうこと?」
「財産分与のことでしょうね、北さん。」花ヤンが言うと、「財産?この家、借地借家やから、貸主の、中之島電気さんに返すことになってるのに。」と言い、唇を噛んだ。
逮捕された2人は「ええっ!!」と叫んだ。
横ヤンこと横山と倉持は理解した。
「こういうケースって、結構あるなあ、横ヤン。」と、花ヤンは言った。
午後8時、総子のマンション。
総子は南部に、事件の推移を話していた。
「美智子ちゃん、どうすんのや?総子。」「休暇や。親類に誤解している者もおるから、まだ動物園で働いていることにして貰ってるし、たまには飼育員に戻るのもエエやろう、って、一週間、休暇取った。本庄先生が正式な相続手続きしてくれるって。松本さんに当てた手紙は、原本を松本さんが持っててエエって、小柳警視正が言ってた。コピーはいつか『タレコミ資料』として処理するって。」
「そうか。幸田が調べた限りでは、美智子ちゃんの姉妹の連れ合いと家族がヤイヤイ言うてたらしい。近所に舞う聞こえの喧嘩をしたりして。大体、そんなもんや。血族より姻族の方が五月蠅い。それに、美智子ちゃんのお爺ちゃんの家族は、美智子ちゃんのお母さんと美智子ちゃんだけや。松本さんに見せる前に見たのは、姻族より、お母さんやろうな。でも、遺書やと思ったから見たがった。中身は、回顧録やのに。」と言って、南部は溜息をついた。
「モスキートの犯人は、サイト利用して、半グレが操ってたらしい。一美ネエの睨んだ通りやったな。」
「アプリ、よう間に合ったなあ。」と、南部が感心すると、「あれ、ホンマはEITO東京本部で作ったらしい。大阪府警で対策アプリ作ったことにすれば、模倣犯出にくいやろ?」と、総子は笑った。
「ああ、知チャン、明日から出勤するって。助かるなあ。」「ごめんな、あんた。おさんどんさせて。」「お前は2足の草鞋やからな。。どや、オムライス。上手いやろ。」
「うん、腕上げたな。」「東京の藤井さんがレシピ送ってくれたんや。料理のレシピやで。犯罪レシピとは違うで。」
「もう、犯罪レシピはコリゴリや。」
2人は、ゆっくりと味わって、オムライスを頬張った。
―完―
グリコ森永40yearsAfter クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
今年になって学んだこと新作/クライングフリーマン
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
そこに私は居ません/クライングフリーマン
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます