第9話 疑問と確信
何故かヒールを使えた事には驚きだった。手を上に上げた?ヒナルと手を触れたから?
「お兄さん。魔法使えるんですから無能なんかじゃないですよ!」
「ああ、なんか少し自信わいたよ…。ありがとう!」
………。
……。
…。
暫く買い物をしている最中、広場に出た。ここでは屋台が並んでいて休憩の場所もある。俺は無性に飲み物を飲みたくなってしまい、ヒナルと一緒にベンチに座り休憩をする。
「綺麗ですね…」
「だろ?この街は冒険者も多いから、街の雰囲気悪くさせないように清掃もしっかりやってるんだ~」
「……」
ヒナルはまっすぐ何処かをみたまま無言になる。その間。俺は売店に売られていたミックスジュースを2つ買った。そのうち一つをヒナルに渡す…。
「これ、良かったら飲んでみなよ。」
「何のジュースですか?」
「ミックスジュースだよ」
「どうもです!」
俺はヒナルにジュースを渡そうとするが、ヒナルの手を少し触れてしまった。
「あ!ごめ…」
「い、いえ!大丈夫です!」
(ん? 今、また何か俺の体で変な違和感が…、やっぱりヒナルの体に触れたから?)
少し、沈黙が続くがヒナルは俺の方を見る…。
「私の居た所でも、こういう場所があって、ちょうどそこの真ん中のような場所に噴水があったんだー。お母さんとよく遊びに行ってた…」
ヒナルは母親との遊んだ時の事を思い出してしまったのだろう…。
「俺も小さい頃、ここではない場所で家族と暮らしていたんだ。俺もそうやって物心ついた時から広場に遊びに連れてってもらったりしてんだ。」
「お兄さんもですか?」
「あぁ… ヒナルと同じように親はもう亡くなっちゃったけどな…」
「私と同じなんですね…」
数分の沈黙が続いた時、数人の子供の声が聞こえた。
「どうしよう!とーちゃんの道具なのに…怒られる!」
「あれはやべーな。高いしとれねーよ!」
子供の話に耳を傾けると、なにやらブーメランで遊んでいて謝って高い木の枝に挟まってしまったらしい。
「木の枝に挟まったのか?」
「うん!あれ、とーちゃんのなんだ!見つかったらご飯抜きになっちゃう!助けてよ!おじさん!」
「お、おじ…!? 俺はそんな年いってねーぞ~!」
スキルの試してみたい気持ちもあり高く飛びたい!と思った…。すると無意識のうちにまた頭の中でジャンプ系の魔法がイメージされる。目を閉じ念じる。
「もしかしてスキル使えそうですか?お兄さん?」
「ああ。問題ない。これならいけそうだ…」
しばらくするとフワッとした風が辺りに纏わりつく。目を開ければ自分の周り、半径40cmほどの小さい上昇気流が出来ていた。そして、イメージと現実を定着させる為、魔法を言葉にする。
「レビテイト!!」
俺の体は重力に逆らい跳び跳ねる。跳び跳ねるというよりは宙に浮く感じだ。ブーメランが挟まっている枝の所まですぐ来れた。ブーメランを回収して降りる…。
「ありがとう!おじさん!」
「だから、おじさんじゃないぞ!!」
昨日も一時的にスキルを使えた時間を考えてる…。
(約1時間ちょっと…。ヒナルに触れて暫く解放できる?)
丁度、その頃、向こう側…、ギルドの建物がある方角が騒がしく、沢山の人たちが走り去っていく姿が確認できる。
カンカンカンカンカンカン
街にある灯台についている鐘が大きな音をたて響き渡る。
「お兄さん、なんですか?」
「ギルドの方だ… 何かあったんだろ?」
火事か? …にしても異常過ぎる…。
そう思ってすぐに、ギルドがある方向から物凄い爆発音が聞こえる。
「何あったんだ? とりあえず君たちは離れてなよ」
俺は、少し怯え気味の子供達に話しかける。子供達は、慌てて逃げ出していった。俺達も立ち止まりギルドのある向こうを見ていると見知ったギルドチームの一人が駆けてくるのが見えた。あれは、アーチャーのティムという青年だ。
「何があった!?ティム!」
「ルイスか!ここに居たら危険だ!!」
「…って、その傷はどうした?!」
ティムの腕を見るとズタズタにされている。肉までえぐられて血が大量にでている。
「オーガだ!オーガがたくさん!正門から入ってきた!!俺もオーガにやられちまった!」
「んなっ!?アレックスはどうしたんだよ!?」
「わからねぇ… もうおしまいだ!あんな数太刀打ちできねぇ!」
「ちょっと、いいか!」
俺はティムの腕に手を触れる。
「なにすんだよ!早く逃げないと…」
「ちょっと落ち着け!」
俺は頭の中でイメージする…。勿論、ヒールだ…。
「ヒール!」
ティムの腕がみるみると傷が塞がっていく…。
「ルイス… お前、やっぱりスキルが?!」
「ああ…」
腕が完全に治り、元通りに戻る。
「あ、ありがとう!!恩にきる!」
「気にするな」
「後、その… 今まで無能… なんて言ってすまん!この仮は必ず返す!」
「だから気にするなって」
………。
……。
…。
それからティムがいなくなった後、俺はギルドの方に向かう事に決めた。
「ヒナル!何処かに隠れてろ!俺はギルドの方に行く!」
「お兄さんが行くなら私も!何か… 手伝えるかも…」
「危険すぎるぞ!」
「それでも!!」
多分、言っても無駄だろう…。
「分かった。ただ危なくなったら逃げろよ?」 「分かりました…」
俺達は、ギルドのある方へと早足で向かった。大勢の人の悲鳴や怒声が聞こえる…。たくさんのオーガの群れが街を襲うなんて前代未聞の事だった。
………。
……。
…。
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