第4話 彼女に触れる時…
………。
……。
…。
俺は、ヒナルの手にしている道具の光を頼りに暗闇を歩いていた。彼女の持つスマートフォンという異世界の道具で辺りを照らしてくれているおかげで幾分か歩きやすい。
「もうすぐしたら街道に出るはずだ。もうちょっと頑張ってくれ」
「はい…」
もうすぐ街道に差し掛かろうとした時の事だった。物音がした。咄嗟にヒナルは後方に光を当てる。
「グルルっ!!」
「ひっ!!」
モンスターだ! 暗がりの中、ぼんやりと光の向こうに数体の狼のモンスターがいる。まさに、俺達を狙っていた。
「ヒナル!下がっていろ!」
「う、うん!」
俺は剣を構える。光がぼんやりと照らされている分、動きやすい。ただ相手は狼。スピードについていけるか自信がない。
「ガルルッ!」
狼は襲ってきた。ようやく、光にうっすらと照らされた狼がまず一頭視界に入る!
「こいつはレッドウルフか!」
レッドウルフは冒険者Cランクで倒せるくらいのモンスター。全身が赤く、敏捷性も高く、接近戦だと正直速さで負ける事もある。その姿はまるで血に染まっているようなモンスター。普通の狼とは違い、狂暴。一頭ならまだしも、群れで行動するで幾人もの冒険者が犠牲にもなった事で有名だ。
狼が襲ってきたと同時に俺の剣とぶつかり ガツン!!と大きな音をたてる。
「そこか!?」
また攻撃をしてきた狼に俺は当たる直前に剣を下から上へと振る!
「ギャんっ!!」
俺のふるった剣が一匹の狼の足を切り裂く!しかし、他の狼が数頭、ヒナルを襲おうとする!
「グワルルル!!」
「あぶなっ!!」
瞬時にヒナルの目の前に向かいヒナルを抱き抱えるむように抱きしめる…。狼の一頭が俺の鎧に覆われていない腹の部分を食いちぎる。傷は対して深くはないみたいだ!
「ルイスさんっ!!だ!大丈夫で…」
その時だった…。。。
頭の中で誰かの声が聞こえる…。
『勇者ルイスよ。聞こえますか?!ようやくそなたに言葉を送ることができました。あなたの奪われたスキルを数分解放できそうです』
「えっ?!どういうことだ?!」
『勇者ルイスよ…。世界を…』
「なんなんだよ!俺は勇者じゃ…」
俺の回りに光のオーラーがまとわりつ…。
「勇者なんかじゃない…」
一瞬の出来事だ。狼の群れの位置を何故か把握できる。
「全部で5頭…」
そして、力も溢れてくる。そして術式も頭の中で浮かぶ…。無意識の内に俺は…。
「ヒール」
さきほど、狼に食いちぎられた腹部をヒールで癒す…。
「ルイスさ…ん?!傷が治ってます!」
ヒナルは俺の腹部をみて驚く。本当に傷が癒えている。そして、すぐさま俺は…。
「アースバインド!!」
これもすぐさま頭の中で浮かんだ術式だ。その魔法は狼の位置が手に取って分かるように土の鎖で狼達を縛りあげる。
「ぎゃわんっ!!」
暗闇でも視界がきき、狼達の位置を把握できる。その距離近くにいる狼で6m…。1秒もかからずその狼の首を剣ではねる!
「こいつでまず一体!」
直ぐ様、動く。まるで水流の如く、静かに早く動ける。
「セイントクロス!!」
今度は頭の中で浮かんだ剣術だった。光の閃光が2頭狼を切り裂きバラバラにする。
「後、2頭… これなら… いけるっ!!」
手を前に出し、咄嗟に思い浮かべた術式をイメージする…。聖なる魔法。俺に何故か与えられた攻撃魔法…。
「セイントボール!」
光の魔力の玉が光の速さで狼に向かい囲む。そして小さい爆発を起こす…。内側から爆破したのだろう。
「残り… 後一頭!」
俺はヒナルの方に目を向ける。
「い、いやぁーっ!こっちこないでっ!!」
遅かった…。残りの狼はヒナルを目掛けて襲おうとしている…。
「ヒナルーっ!!」
俺がかけようとした、その時…。
「「えっ…」」
俺達は同時に声をあげた。今度はヒナルの体が光のオーラで包まれた。
「このイメージは… なに?」
ヒナルは言葉を発した次の瞬間!ヒナルは狼の方に両手を前に向ける。手からバチバチと光と音をたてた次の瞬間!
「ホーリーランスっ!!」
ヒナルは声を発したと同時に小さい光の槍を解き放った!僅か数秒。いや…、それ以下だ。光の速さで狼の頭部を小さい槍が貫いた…。
「えっ!? ええーっ!!」
「な、なんじゃこりゃあ!?」
二人して暗闇の中、大きな声をあげる…。
「た、助かった…んだな…」
「いや、なんなんすか?今の?!私、やばくないですか!?」
「それ、俺のセリフ…」
しかし、今ので一気に力を使い果たしたみたいに、俺は元に戻ってしまった。一時的な何かだったのだろうか…?
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