おかねじゃなぁーい!


私が浮気がバレてしまった時の旦那みたいな言い訳をして、いきなりどうしたんだ優里様はとレイが思っている時、騎士団の方はざわついていた。





「こ、コイツが聖女様の夫にですか?」


突然そばに近づいてきたメイドの言葉に騎士団長が驚いていた。


「はい、聖女様が本人が嫌でないならそうしたいと」


その言葉を聞いた騎士団の団員たちは皆ざわついていた。


「…本当に俺なんすか?違う奴と間違えてないっすか?」


そんな時、夫にと求められることが間違いじゃないのかと本人が言い出した。


「そ、そうだよな。間違っていたら困るしな、聖女様にちゃんと間違いじゃないのか見てもらったほうがいいよな」


騎士団長は間違いかもしれないと言い、そのメイドに聖女様の所へ皆で挨拶をしてもいいかと聞くとメイドは伝えに行ってくれた。



「なぁ、ヴェル。お前が本当に夫として求められてたらどうすんだ?」


騎士団長がそう聞く。


「俺が?求められるわけねーだろ。親父は俺のこと馬鹿にしてんのかよ」


不機嫌そうな表情をして返答するこの男は騎士団長の息子である。






「ええ?皆が挨拶したいの?私に?」


「はい、どうやら人間違いだったらいけないからと一度挨拶する場を設けたいみたいです」


「間違い…?あぁ、えっと、じゃぁ、私があそこへ行こうかな?きてもらうのも悪いしね」



間違いかもしれないと言われることに不思議がっていた私だが、そういえばあのイケメンはこの世界では不細工と思われてることを思い出し、なるほどと納得したのだった。


わざわざメイドを走らせて伝えさせてこっちに来てもらうなんて申し訳ないと思ったので、私は騎士団皆が集まっている場所にレイと一緒に歩いてゆくことにした。




「初めまして、騎士団長を務めています バルバス フェルトグと言います」


「初めまして 優里と言います」


軽く挨拶をした後にお目当てのイケメンを探す。


あ、いたいた。


後ろの方で顔を背けている男性の方へと歩いてゆく私に皆が軽く目を見開いて視線を動かす。


「こんにちわ、優里と言います。もしよかったらお話ししませんか?」


私がにっこりと笑ってそう声をかけると、その男性は私の方へと視線を向けた。


「っ…!?」


私の顔を見たイケメン男性は突然話しかけられたことにひどく動揺していて、切長の瞳が忙しなく揺れている。


口をぱくぱくさせている姿をじっと見つめていると、騎士団長がそのイケメンに行ってこいと言ってくれた。


わーい。


「では、私の部屋でお話ししましょう!」


そう言った私はイケメンの手を掴み、反対の手でレイを掴み歩き出した。



そう、これが、両手にイケメン!私の夢ここに叶えられたり!わーい



そんな馬鹿な事を考えながらご機嫌で歩いてる私を見てレイは柔らかく微笑んでいた。


もう一人の方はカチカチに固まってただただされるがままになっていた。





自室へとたどり着いた私はソファに座り、両隣に二人を座らせた。


私が今からお話をすることを知っているレイは私の隣で本を開き読み出した。



「さて、お名前はなんですか?おーい?おーーーい?」


騎士団演習場から一言も言葉を発していないこのイケメンは真っ赤な顔をしてガチガチに固まっている。



…。


返事が返ってこないことには名前がわからない、聞いてくればよかったなと思いながら私は男性を見る。



程よく褐色に焼けている肌に短髪の銀髪。髪の毛はレイよりも少し太めかな?硬そうだ。


唇は薄く、鼻は筋が通っていて高い、目は切長でよくみると瞳は淡い金色だ。



…。


うーん?息してる?ちょっと心配になってきた私は、その唇に指を近づける。



そうすると、ものすごい勢いで腕を掴まれた。


「わわ!びっくりした!」


私がそう言うと、男性はひどく驚いた顔をしていた。いや、驚いたのは私なんだけども…。


「あの、俺!あ…すんません」


そう言って尻すぼみになる言葉とともに腕から力が抜けてゆく。視線がなぜか私の後ろに向いている。



ふと後ろを見ると、顔を本に向けているレイの視線は男を射抜いていた。


「優里様の腕に跡が付いたらどうするんですか」


聞いたことないほどに冷たい声色で私はびっくりした。


「気にしないで?ね?大丈夫だから、レイもありがとうね?大丈夫だよ?ね?」



私のイケメンパラダイス計画を遂行するため、私は必死にそう言った。


動悸が不純すぎるが、仕方がない。喧嘩するイケメンは見たくない。


イケメンは幸せでいてくれ!あ、違う違う。



「ねぇ、ごめんじゃなくてさ、名前が知りたいんだけどいいかな?」



「あ、すんません。俺はヴェルって言います…」


「ヴェル、ヴェルね!やっと名前が聞けたわ!ありがとう、私のことは優里って呼んでね?」


「優里…様」


様はいらないんだけどなーと思うが、言わないことにした。



「じゃぁ、ヴェル!」


「な、なん…でしょうか?」


「私の夫になる気がありますか?」


そう言った瞬間、ヴェルは挙動不審になり、そして私に袋を渡してきた。


「俺はこれしか今は…」


中を見ると金貨と銀貨が数枚…って


「欲しいのはお金じゃなーい!」



私の言葉はヴェルには金目当てだと思われてた。

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