【閑話】あぁ、僕はなんて幸せ者なんだ

私はレイと、そのまま一緒に寝ることにした。


どうやら聖女はこの世界では王とほぼ同一の地位らしく、夫にしたい相手を見つけた場合には余程のことがない限りその相手を好きにして良いらしいからだ。


一応レイの仕事の上司には『レイは夫に選ばれたので聖女のところにいる』とメイドに伝えてもらった。


「報連相は大切だもんねー」


「何ですかそれ?」


「えー?報告、連絡、相談のことだよ?」


「なるほど、さすが聖女様」


「いや、私の国ではみんな知ってるよ…」


何でもかんでも『流石聖女様』と言われるのはどうも居心地が悪い。



「レイ、レイは本当に私で良いの?今なら食い逃げでも見逃すよ?」


「く、食い逃げ!?し、しませんよ!僕は…この容姿なのであまり女性には好まれませんので。精々お友達どまりです」


「そう?ならいいか。これからお互い色々と知っていこうね?」


「はい…。こんな僕でよければ沢山…。」


私は転移の疲れなのか、ことでの疲れなのかは知らないが、深い眠りへと落ちていった。








☆レイ☆



優里がスヤスヤと寝息を立てている頃、レイはその美しい寝顔を見つめていた。


なんて美しい…。


その美しさの何と素晴らしいことか、まるで輝いてるのかと見まごうほどの漆黒の髪に黒曜石のように素晴らしい瞳。

唇はぽってりとしていて…あぁ、この唇で僕は…。


僕は優里様の夫となった。


この何という幸福感…。


生まれてから一度も感じなかったこの幸福感に僕はとめどなく流れる涙を止めることはできなかった。



母には醜いからと兄達のように優しく抱きしめてもらうことは叶わなかったし…。

父は僕が頑張ると褒めてくれるので、僕は頑張って城で働けるようにまでなった。



褒めてもらいたいが為した努力が、こんな形で僕を認めてくれるなんて…。


努力は報われる。本当だった。


僕はこれから先、いつ何時も優里様のためだけに生きて行くことを誓おう。


優里様の幸せが僕の幸せになるんだ。


だめだ、幸せすぎて思考があちらこちらに飛んでしまう。


あぁ、僕はなんて幸せなんだ。



そう思いながら僕はいつの間にか眠りについていた。

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