はわわ…イケメン




部屋に戻った私は兎に角暇だった。


暇すぎて辛かった。スマホも無ければテレビもない、その上メイド達は壁際でハァハァしてる。


…。


(このメイド皆ハァハァしてて怖いんだけど!)


暇なのでメイドと戯れてみようと思った私は、その中で一番大人しそうな…ハァハァしてない可愛いメイドを呼んだ。


そのメイドは呼ばれた事にとてもびっくりしていて、おずおずと近づいてきた。


「は、はい…なんでしょうか?」


「暇だから話し相手になってもらえないかな?」


「えっ?!ひ、ひゃいっ!わかりまちた!」


緊張しすぎたのか、カミカミなメイドのいじらしさに私はつい、ニコニコしてしまう。


「かわいいなぁ〜、聖女って言われてもそんな大層な感じじゃないから気軽に接してくれたら嬉しいな」


「かっ、かわひぃ…?」


挙動不審なメイドの手を取り、私の横へ座らせると顔を真っ赤にしてもじもじしだした。


心なしか壁際のメイド達のハァハァがひどくなった気がする。



この時、メイド達は同じ事を思っていた。


私も横に座りたい!座れたら触れるかも知れない!羨ましい!


そんな事を考えられてると知らない私は横に座ってるメイドと会話を続けていた。



「へぇ〜ここ城の中なんだ〜ミミちゃんはメイド歴長いの?」


「は、はいっ!母が城のメイドだったので私も小さな頃からお仕事させてもらっていますっ」


顔を真っ赤にし大きな瞳をうるうるさせながら話をしてくれるミミちゃんが可愛くて仕方がない私は、ミミちゃんに私の専属メイドとしてお世話してくれないかと頼んだ。


すると、二つ返事でハイと言ってくれたので私は安心した。



ミミちゃんとひとときの癒しタイムを過ごしていると、部屋の扉がノックされたのでミミちゃんに開けてもらった。



すると、部屋の中にゾロゾロと男の人たちが8人ほど入ってきた。


1番先頭にいるのはおじ様だった。


どうやら、残りの7人が一先ず旦那さん候補らしい。


が、私の好みじゃない人ばかりである。悲しい程に私と釣り合いの取れる顔の人達ばかりだ。



「どうだ?一先ずだが、見目麗しいもの達を連れてきたぞ!」


…はい?


いま、見目麗しいって言った?空耳?


「今なんと言いました?」


「ん?見目麗しいもの達を一先ずつれてきた…と言ったが?」


…んんっ??


私は大急ぎで壁際に立ってるミミちゃんを呼び寄せ耳元で気になっている事を聞いてみた。


「ねぇ、あの人達ってかっこいい?」


「ひゃ、ひゃい!聖女ちゃまの様に、み、見目麗しいでしゅ…」


顔を真っ赤にさせながらそう返事をするミミちゃんの言葉を聞いて私は思った。



(この世界!美醜逆転してる!!!)



それを確認したのち、王様に気に入ったものは居ないと告げた私は、王様に人選についてお願いしてみる事にした。


因みに、部屋から出ていく男性達の背中には哀愁が漂っていた。



「あのー、次連れてくる人達の事なんですけど…見目麗しくない人とかって呼べます?」


「ん?ワシはいいが、優里様はいいのか?」


おじ様がそう聞いてきたので、コッソリと見目麗しくない人が好みなんですと言っておいた。



おじ様はびっくりした顔をした後に、なんと…と一言言った後大喜びしていた。


なんとこの世界では魔力が強い人になればなるほどに

容姿があまり良くないらしいのだ。


魔力が強い子を増やしたいのに、見目がよろしくないことで子を作る事ができない人が多いと言う。


おじ様は少し時間がかかるかもしれないがと言い残して部屋から出ていった。



私は次の人達が来るのを楽しみに待っていたが、全然こない。


仕方なくミミちゃんとまた談笑して時間を過ごした。


そんなこんなしていると、夕ご飯の時間になった様で1人の男性が私を呼びにきた。



物凄く豪華な食事を楽しんでる最中に、挙動不審な人が居たのでそちらに目をやると、目を見張る様なイケメンが居た。


完全に皆が思う様な理想の王子様の様な外見のイケメンが、壁際で私をチラリとみて顔を俯かせ、またチラリと見て顔を俯かせると言う行動をしていたのだ。



私はすぐにミミちゃんを呼び寄せ、そのイケメンを連れて帰っても良いか聞く事にした。


ミミちゃんは私の指の先にいる男性を見て、私を見て、男性をみて、私を見て



「本当にあのかたですか??」


と、聞いてきた。


そうだよね、私が美女ならあの人は不細工になるんだもんね…


切ない気持ちになった私だが、あの人がいいと言うと渋々だがその男性に声をかけに行ってくれた。


その男性はミミちゃんの言葉を聞いた後に、大きく体を硬直させ、顔を真っ赤にしていた。


(これは…とてもいい…)


私はこの後が楽しみになった。




食事を終えて部屋に帰ると、先程のイケメンがノックの後に入ってきた。


顔は真っ赤になっていて、緊張からか顔が強張っている。


私はミミちゃん以外のメイド達に下がってもらう様に言ってから、その人をソファーの隣に座らせた。


その人は レイという名で、執事見習いだと言う。なぜあそこに居たのか聞くと、王様が急にそうしろと言ったからだそうだ。


(あぁ、きっと部屋に連れていって不評だったらどうしようと考えて、この子で反応を確かめようとしたのね)


まぁ、イケメンだから良い。



私はレイの手を持ち『緊張しないで』と、言ってみた。

レイの顔がさらに赤くなり、口元はワナワナとし、瞳は緊張からか潤んでいた。


イケメンにそんな反応されたら可愛すぎて、ついつい調子に乗ってしまった。




「ねぇ、キスしても良い?」


レイは私のその言葉を聞くと同時に目が泳ぎ出した。


「わ、わたっ、わたしにでさか?!」


動揺しすぎて噛んでいる。


「うん…だめ、かな?」


一度やってみたかった上目遣いで小首をかしげる仕草をしてみる。


何度でも言うが、私は自己肯定感は強いのだ。



「は、はひぃ…」


顔がまっかになりすぎたレイはぐるぐる目を回しながらも許可してくれたので、ちゅっと触れるだけのきすをした。


するとレイはソファーにすわりながら気絶してしまった。

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