第7話 日記を書こっと

 対策会は解散となり、柏木は国枝と二人でタクシーに乗り、家に帰る。二人きりになった柏木は国枝に愚痴をこぼし始めるのだった。


「俺、この仕事向いてないよな?。アイツらって正直クソみたいな奴らだけど……俺より対策課に向いてるよな。……俺ってここで何ができるよ?」


 VRMMO対策課での自分のやれることの無さに凹む柏木。そんな柏木に国枝は


「またいつもみたいに日記に愚痴を書いてみればいい。そしたら何かいいことあるかもしれないぞ」


 と柏木に日記を書くよう提案する。


 国枝にしか話していないが、俺はびっくりすることや嫌なことがあると、時たま日記に書いてストレスを発散する習慣がある。


 日記を書いてるなんて恥ずかしいから人には言わずひっそりとやっていたが、何故か国枝にはバレているのだ。


 日記について聞かれた時は何で知ってるかを聞くといつものように「念の為」と言われて何故か納得してしまったのだった。


「日記なんか書いてもストレス発散になるだけだろ」


「まぁ、そうかもな。でもお前、日記書くと大体いいこと起きるって言ってなかったか?。もしかしたら今回のことも書いたいいこと起こるかもだぞ」


「そんな上手いこと行くもんかね?」


 国枝はとりあえずやってみたらと言ってくる。


 確かに俺はストレス発散で日記を書いているのだが、何故か書いたことが起こったり、問題だったものが解決されていたりと、日記を書いた後で都合のいいことが起こることがいつからか多くなったのだ。


 国枝はまた念の為と言い、何のだよと俺もツッコんでみたが、国枝の言う念の為はやって損が無いだろうと思い、俺は家に着いたら日記を書いてみることにするのであった。



 ◇



 タクシーが家に着き、俺は国枝にまた明日と別れを告げ、すぐさま部屋に置いてあるパソコンの前に座る。


「今日あったこと、今日あったこと。いっぱい書くことあるなー。でも、国枝の言うように念の為……になってるのかな、これ?」


 柏木はぶつぶつと独り言を言いながら昨日今日あったことをひたすらに殴り書きにしていくのだった。




 タイトル:うまくいかない


 俺今仕事上手くいってない。

 真壁クリーナーの社長、真壁綺麗がゲームばっかりやってるのを辞めさせる仕事。

 変な仕事だろ?。でもこれめっちゃ大事。


 真壁がゲーム辞めて働かないと東京が汚いまま。嫌だよね、東京臭いのとか。


 で、やること決まったんだけどこれが上手くいくかどうか。

 真壁がやってるエターナルナイトってゲームの緊急クエスト参加して、真壁と仲良くなって仕事させるモチベーション上げる。

 これは上手く行くかな?


 知り合いが言って真壁をプレイヤーキルしまくってエターナルナイトのやる気をそぐって話もあったけど……ゲーム初心者みたいなアバターで真壁倒せないのよね。


 あんまり上手くいかないとまたヤングジェネシスの奴らが使えない大人はいらないーとか言って暴れ出すかも。


 仕事やだけど頑張るしかない!

 何とかーなれー!……とか言っちゃって。




「ふう、書いた書いた。なんかいいことありますように!」


 柏木は国枝に言われた通り、日記を書いてみた。自分しか見ないであろうその日記をネットに保存してパソコンの電源を落とす。


「……明日には真壁働いてたりしないかな〜」


 柏木は座っていた座椅子を前後に揺らしながら、明日の作戦が上手く行くように願うのであった。





 …………





 1:ためぞう

 あれ?神きたくね?


 2:ためぞう

 二週間ぶりの神ーーー!


 3:ライムさん

 神の仕事ワロターww


 4:ためぞう

 今神ゲームしてんの?


 5:ライムさん

 エターナルナイトうちやってるー


 6:さんがりあ

 キタキタキタキターーー!


 7:ためぞう

 これ、教えたらな!


 8:さんがりあ

 ヤンジェネ狩りじゃーーー!


 9:なんくるないさー

 え、またお告げ?


 10:さんがりあ

 参戦!


 11:ライムさん

 参加しよっかなー


 12:なんくるないさー

 次何?ゲーム?………


 

 ……………………

 1000:えださん

 やるしかないよね、みんなで!

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