第5話 俺、必要?
「ったく。お前と話してると調子狂うわ。てか本気でこの仕事やるつもりか、尾上?」
ハッキリ言って俺はコイツを信用していない。どのような経緯でVRMMO対策課に来たかは聞いてないが、国のために働くなんてことするはずないだろ。
各地での若者による暴動を
柏木は尾上が何かを企んで国の仕事に関わっていると踏んでいる。そして一緒に行動しているというだけで罪な気がしてならないのだった。
「疑うのも分かる、分かるよ〜。でもね、お前らも犯罪者だから。仲良くしてよ〜」
席についてた四人の背後からVRMMO対策課の上司、
「あ、弥彦っち。聞いてよ、秀くんがさー」
「誰が弥彦っちだ!!。お前………てかお前ら何歳だよ?。仕事ちゃんとしてくれよ」
上司に対しても自分調子な尾上に榊原を怒りを見せる。それに対して他三人はざまぁと笑っていたが、その事にも怒る榊原。四人は口を揃えて言い返す。
「ゲームした事無い35歳にこんな仕事させんな!」
生まれた場所も育った場所もそれぞれ違う俺たちだが、一つだけ共通してることがある。それは全員35歳のおじさんだということだ。
榊原が仕事の失敗を責めるのも分からなくは無いが、そもそもゲーム向きじゃ無い俺らをVRMMO対策課に入れたのが間違いだと思っている。
VRMMO対策課の上司であり、防衛省のお偉いさんである榊原が犯罪を犯した四人に声をかけて組織したもの。防衛省の特別措置により犯罪者から国家公務員になった四人だが、何故選ばれたのかは知らないのだった。
「人選ミスだろ!」
「金にならん!」
「僕は捕まらないならそれでいいかな」
「仕事あるだけいいだろう。俺は大体できるし」
四人の意見はそれぞれ。犯罪者たちと仕事したく無い柏木。金儲けの臭いがしないと文句言う原島。捕まらないだけありがたいと言う尾上。そして仕事自体は問題無くやれてると言う国枝。
……こんな意見バラバラおじさん四人で何ができるのだろうか?
VRMMO対策課に入ってから数回仕事をしてきたが上手くいったのがたまたまで、今の失敗した現状が当たり前だと思っている。
四人の意見を聞いた榊原は「犯罪者だから辞めるなら刑務所ね」と脅してくるが……そこまでして俺ら四人が国のためになんか出来ると思っているのだろうか?
特に俺は選ばれた理由がわからない。潜入も探索もそつなくこなす国枝。金が絡むと力を発揮する原島。そして宗教団体のトップでありながら実は『精神科医』としても有名な尾上。
尾上はクソ犯罪者ではあるが、俺よりこの仕事に向いてると言っていい。
精神掌握を生業にしている尾上の役職は『ゲーム内でターゲットの説得』。
コイツの言葉で人が動くというのはお墨付き。俺なんかよりも尾上が重宝されるべきだと考えている。それなのに……
「何で俺がこのチームのリーダーなんですか?。俺ゲームも出来ないし、コイツら三人みたいに何かに特化してるとも思えないです」
柏木は榊原に心の内を明かす。しかし榊原の返答はいつも通り。
「大丈夫ですよ。あなたがいつも通りにしてくれてたら何とかなりますので!」
榊原は柏木にいつも同じことを言うのだ。その度側にいる国枝が嫌な顔をするのは気になるが、俺の『いつも通り』って何だ?
朝起きる、会社に行って仕事をする、飯食って寝る。いつも通りってのはこれだけ。
たまにギャンブルをしたり日記書いてみたりはするがいつもやってるような事では無い。
考えても分からないからそのいつも通りを教えてくれと榊原に頼んでも
「言えないんです、すいません」
の一点張り。
仕事はしろ、いつも通りに、でも重要な事は教えてくれない。
柏木秀介にとってVRMMO対策課という仕事はストレスのかかる仕事場であったのだ。
「仕事辞めたい」
VRMMO対策課に来てからこの言葉を呟くことが本当に多くなった。
元々清掃員だった俺。給料は今の方が断然貰っているが清掃員時代の方がまだマシだったと思う。
国枝と喋りながら窓吹いて給料貰える。低賃金でも趣味が少ない俺にはそれで十分だった。
今この仕事をしているのは窃盗という罪を犯してしまったことと、それを手伝わせてしまった国枝への贖罪。
「捕まるが俺だけならこんな仕事辞めて大人しく刑務所行ってますから」
柏木は榊原に本音を言うが、毎回横にいる国枝は
「勿体なくね、辞めるの。給料いいしココ。俺もお前もこの仕事天職だと思うぞ。あと俺お前と仕事するの楽しいし」
と優しい言葉を柏木に言うのだった。
怒ってない国枝を見るといつもホッとするが……本当に天職だと思っているのだろうか?
ターゲットがゲームしてるのを見て、そいつの現状や性格などを報告する。
本当にこんなことが俺の天職なのだろうか?
柏木は自分が必要とされる理由も分からないまま、今後の真壁綺麗の攻略方法について五人で話し合うのであった。
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