8 光る馬
シュガーは満足する朝食を終え、手早く支度をすまし、自室からトレーニングルームに向かう。途中向かっている際に出会ったメイドは仕事の手を止め、俺が通り過ぎるまで礼をしている。
目的の部屋までたどり着き、扉を開けると見慣れた空間が出迎える。その部屋は、物理や魔法などの一定の損傷を防ぐ防御魔法が全面にかかっており、ゲーム当時、個人で持ち合わせているプレーヤーはそんなにいない。というのも、単純に屋外や開けたフィールド、自身が所属しているギルド施設を使えばいいからだ。
ただ、シュガーはトッププレーヤーかつ、ギルドは無所属であったため、屋外で研究するとなると人目に付きやすく、目立ちやすかった。その中で個人のスキル研究やレアアイテム検証などを他人に見せるといった行為は、オープンに情報を公開しているようなものだ。
「なんだか懐かしいな、じゃあ早速確認していくか。コンソールアクセス、ステータスオープン」
トレーニングルームは元から屋敷購入時に備え付けられたものではなく、後付けで立てた一棟である。かなり値が張った。
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【名前】 シュガー Lv100(MAX)
【職業】 冒険者・剣士・魔術師・商人・テイマー
【称号】 オールマイスター・最高位冒険者・剣極者・魔極者・大商人・神獣テイマー
【所属ギルド】 無
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「ここまでは最初にみたな……、次のページは」
初日に転移したタイミングで簡単なステータスは確認していた為、さらっと飛ばす。
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【部下NPC】〔統率者テナ〕・〔隻眼のアーク〕・〔幻影の闇 カゲロウ〕・〔?〕・〔?〕・〔屋敷各員(執事長セルノス他)〕・〔?〕……
【テイムモンスター】
《魔獣》:〔ケルベロス〕・〔キマイラ〕・〔リヴァイアサン〕・〔ガルーダ〕
《神獣》:〔深淵ティアマト〕・〔雷霆ミノタウロス〕・〔天空グリフォン〕・〔聖獣麒麟〕・〔死神アヌビス〕・〔無限の輪ウロボロス〕
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「ゲーム時とあまり変化は無さそうだが、他の部下NPC名が見えなくなっているのは、こっちで直接会ってないからかな」
離反や離職をしていないとはいえ、名前が不明でステータスに明記されている以上、他の者たちの状況確認を急がなければいけないことを改めて意識する。
「とりあえずペットも試しに呼んでみるか……。キミに決めた!」
誰を召喚しようかと悩み抜いた結果、インベントリから呼び出す対象を選択し召喚した。床に魔法陣が現れ、空中に異空間とつながるゲートが楕円状に揺らめき出現する。そこから姿を見せたのは、全身をバチバチと電気が走り、雷で覆ったような、神々しく光り輝く一頭の馬……。もとい、麒麟である。神獣の中でもこいつは比較的おとなしい性格で、入手した当時から忠誠心が高かった。
『聖獣麒麟』は当時、PvP大会で5連覇しその特典で入手した運営からの特別報酬である。その後は殿堂入りという形で大会の参加を禁じられ、VIP席でおとなしくしていたものだ。
(主、お久しゅうございます。召喚に預かり光栄の極み。それで我に何か御用でしょうか。)
(おう、久しぶりだな! 特に用事ということもないんだが……、他のやつらも変わらず元気にしてるか?)
テイムモンスターと契約主は念話にて会話が可能になり、第三者から見ると無言で見つめ合ってるように見える。
(それはもう。ですが以前ほど呼び出されなくなったこともあり、不満に嘆く者も増えております。我ら契約獣一同、少しでも主様にお仕えしたい一心。主様のご期待に応えられるよう努める所存であります。そして我がこちらに来る際も羨む声が多く……、戻ったらそれはもう自慢してやろうかと……。……失礼いたしました。)
(それは悪いことをしたな、近日中にまた誰か呼び出すかもしれないから、戻った時に各員に伝えておいてくれ。……じゃあ……帰還していいぞ……。)
(承知致しました、それでは次回の召喚を心待ちにしております。)
そう返事した麒麟はゲートに帰っていった。その後、召喚獣達に主からの伝言をし、久方一番に呼び出されたことを散々自慢するのだが、それはシュガーが知らないところの話である。
「ペットも変わらず召喚できたことだし、次はスキルの確認かな」
シュガーはコンソールの手を動かし、ステータス欄を次のページへと進める。
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【パッシブスキル】
・〔深淵〕:攻撃力上昇、通常攻撃・攻撃スキルが50%でクリティカルヒットとなり、その際対象の防御力を無視。
・〔雷霆〕:防御力上昇、対象敵70Lv以下のダメージを無視する。
・〔天空〕:回避力上昇、対象敵70Lv以上の攻撃をより回避。
・〔聖獣〕:回復力上昇、10秒毎に自動的に一定量の体力回復。
・〔死神〕:対象敵のHPが3割以下の時、次の攻撃で即死。
・〔無限の輪〕(1回/24H):自身の体力が完全欠損後、フルHPでの自己蘇生と3秒間の無敵状態。
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【二刀流太刀スキル】
≪青雷刀≫
・〔雷光正転〕: 雷光のような速さで瞬時に敵の間合いを詰め、斬りかかる。
・〔雷神の守護〕: 青雷のエネルギーを纏い、一定時間自身の防御力を上昇させる。
・〔青電咆哮〕:敵対する者のフィールド周辺に継続的に雷を落としダメージを与え、一定時間敵の防御力を低下させる。
≪紫炎刀≫
・〔業火反転〕: 自身に炎の壁を張り、敵の攻撃を反射させる。
・〔炎神の守護〕: 紫炎のエネルギーを纏い、一定時間攻撃力を大幅に上昇させる。
・〔紫炎咆哮〕: 敵対する者のフィールド周辺に継続的に炎を纏わせダメージを与え、一定時間敵の攻撃力を低下させる。
【複合スキル】
・〔雷炎転生〕:雷光正転と業火反転を同時に発動、発動後、一時的に状態異常無効、自身が受けるダメージの一切を遮断。自身がダメージを与えた全ての者からHPを吸収する。
【その他武器・魔法スキル(使用不可)】
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ZEXUS online《ゼグアスオンライン》ではそれぞれの武器やテイムモンスターに固有のスキルがあり、同武器種・同獣魔でも使用する個体が違えば、使用できるスキルやパッシブスキルも違ってくる。一般的な魔獣系統では、戦闘時の召喚や騎乗移動などによる使用だが、神獣系統ではそれらに加えパッシブスキルにも影響される。
また、神獣系統は全てが名持ち《ネームドモンスター》になり、世界に2つ存在しなく、ワールドモンスターとも呼称される。 現在シュガーは”二刀流太刀系統”『青雷刀』『紫炎刀 』の二本をインベントリ内でメイン設定しており、どちらか一振りでも変わればスキルが変更される。これらの武器・獣魔の選択によるスキルの組み合わせを研究するというエンドコンテンツが、多くのユーザーを魅了したゲーム内要素の一つでもあった。当時はそれらを追及する専門の研究ギルドも存在したほどである。
「スキルの仕様も特に変更なし。アークとの模擬戦の時にも、なんとなくは確認できていたが。次にアイテム……、おぉどうした?」
シュガーはコンソールを動かす手を止め、執事長セルノスからの無線連絡に答える。
「シュガー様、お忙しいところ申し訳ありません。そろそろご昼食のお時間ですが、いかがいたしましょうか」
「もうそんな時間か、じゃあ一度ダイニングルームに戻るとするよ」
昼食は何を食べられるのかと期待しながら、シュガーは軽い足取りで移動するのであった。
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