第5話 初期フォームは氷属性


時は少し遡り三時間前。



今日の配信をする前に俺は重大な事を忘れていたのを思い出した。

とっても重要なことそれは――――――装甲に名前をつけていない!!!


これから数多くの視聴者に見られ紹介するたびに【装甲】呼びは少々可哀相じゃないか?何かふさわしい名前はないのか、と熟考する事二時間。


考えに考えた末、【装甲】改め【シロガネα】という名に決まった。

装甲の色、外観、まだ試作機と言う点を踏まえたネーミングだ。

これから本作、改良機と作って行くつもりだからシリーズ化でいそうでいいんじゃない?



「というわけで新兵器の【シロガネα】だ。」



ドローンカメラに向かって腕輪とキューブを上げる。



:腕輪?

:何か召喚でもすんのかな?

:四角いのキレイだな

:何だろな……


「百聞は一見にしかず、だ。見れば自ずとわかるだろう。」


そう言って腕輪を左手に通す。

今回はスタンダードに『氷』で行こうか。

水色のキューブを取り出し、残りのキューブを異空間に放り込む。


【シロガネα】起動用のキーワードを唱える。


変身クロス、『氷』。」



『氷』を腕輪に差し込み、腕輪を少し薙ぐ。


ゆっくりと回転が始まる。


次第に腕輪の回転は早さを増していく。


『氷』から漏れ出た冷気が左腕を覆い、次第に全身をブリザードが覆い始める。


ドローンカメラには白一色吹雪の世界が映し出されていた。


ドローンの視界が晴れると、そこには一つ、巨大な氷塊が佇んでいた。

画面の向こうまでもが一瞬の静寂に包まれた。

直後、氷塊がピキ、ピキ、と音を奏で崩壊した。



氷嵐の後に姿を現したのは、白銀の鎧のような、冷たい機械のようなモノだった。

左肩から斜めに小サイズの氷塊が散りばめられ、右肩からは背中に水色のマントを垂らしていた。


『さて、こんな感じなんだが、驚いてもらえたかな?』


:おおおお!!!

:なにそれ何何!?

:仮◯ライダー!?

:いや、見た目的にはガ◯ダムも捨てがたいぞ。

:あ!なんか声が変わってる!


『おお、気付いたようですね。そうです、少しボイチェンを弄りまして渋めのイケボに変えてます。』

『こんなに格好いいのに声が街頭インタビューでよく聞くアレの声だったら嫌でしょう?』



:同意

:それは流石にそうw

:ちょっと想像して笑っちゃったw



『ようやく初陣です。早速、気合入れていきましょう。』



十階層に踏み込んで目に入るのは階層まるまるくり抜いたかのような巨大な空間。

その奥に佇んでいるのはとてもでっかいゴリラ、の見た目をした魔物で、体長は五メートル程の巨躯。

何を隠そう、このゴリラはいつも私の兵器の実験台となってくれる心優しいモルモット魔物なのである。


そしてこのゴリラ、常に全身から炎が立ち上っているので今の私にとってはすこぶる相性がいい。


まあせいぜいアピールの役には立ってくれるだろう。




炎ゴリラがこちらに気づき威嚇を込めた雄叫びをあげ、死合開始のゴングが鳴る。

慣れた相手とはいえ油断は命取りだと知っている、が、それ以上には心が躍っていた。

【シロガネαお前】なら大丈夫だと、心が知っていた。




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

TS冒険者は白銀の装甲とともに 梅田 白州 @不定期 @shun1222

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ