第8話 伊藤 紗香---side3

昨日、めずらしく瞬から電話がかかってきた。

瞬の怪我のことは、部活が終わった後、サッカー部のマネの咲良から聞いていた。

心配だったけど、こーゆー時はそっとしといた方がいいのかもしれない、とか悩んでいたら、向こうからかかってきたので、こーゆー時だから、わたしの声が聞きたくなったりしたのかと、期待してしまった。

けれども、第一声は、全然想像していなかった言葉だった。


「風早の『お姫様抱っこ』の相手って誰?」

「何いきなり?」

「誰?」

「瞬でもそーゆー話気になるんだね」

「そんなのいいから、誰?」

「……月島さん」


そこで瞬が黙り込んでしまった。

電話の向こうの瞬は、何か話そうとする気配がない。仕方なくこっちから話をした。


「怪我、大丈夫?」

「ああ、うん」

「試合近いのに残念だったね」

「うん」

「でも、瞬ならきっとまたレギュラーになれるよ!」

「ああ……ごめん、もう切るわ」

「え……うん……」


わたし、何か悪いこと言っちゃった?


何度も自分の言ったことを思い出してみたけど、瞬を怒らせるようなことは何も言ってない。

怒ってたわけじゃないよね?

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